思い出のたね(ミュージカル主題歌'36)[前]
珍しくイギリス産のミュージカル曲で、競作が相次いだがやはりこの人がジャズのスタンダード曲に定着させた。 [Billie Holiday-These Foolish Things]36.6.30(画像4)http://m.youtube.com/watch?v=2_20tKuKtF8器楽ではビリーとも親交の深いこの人の愛奏曲で、 [Lester Young...
View Article『模倣と反復』
このブログを始めてからそろそろ満三年になる。五月下旬だったと思う。当初は手当たり次第に投稿していたがあまり多くても、と一日一件に抑えていた。同年(2011年)八月に急性腸炎で入院し二週間のブランクができ、退院後から一日二件で一記事あたり1000文字、これはYahoo!の携帯サイトの制限文字数に基づく。更新は深夜零時の日付変更と同時、という規則で続けてきた。さっき見てきたらこれまでに2225件の記事を...
View Article思い出のたね(ミュージカル主題歌'36)[後]
後編は名盤「ザ・ヴォイス・オブ・フランク・シナトラ」から。これがファースト・アルバムになる。30歳にして大歌手の貫禄。 [Frank Sinatra-These Foolish Things]45.7.30(画像4)http://m.youtube.com/watch?v=-o_iCsXqasMこれも名盤「アット・ジ・オペラハウス」から。バック・バンドの豪華さたるや書き切れないが物凄い。 [Ella...
View Article『金輪際』1
昨日はこのタイトルで作文しようとしたら、この三年間のブログを振り返って、という前振りだけが長くなり、回顧的趣きになってしまったのだ。これは確かに以前にも書いたのだが、現在までのところ最後の精神科入院、2010年12月~2011年03月から退院して、そもそも入院の原因となった人間関係をばっさり整理し、それは遅かれ早かれそうしなければならず自分でも反動に耐える自信はあったにもかかわらずやはり無理で、ゴー...
View Article文学史知ったかぶり(5)
D.H.ロレンスは小説家としても時代を築いた人でしたが詩人・エッセイスト、そして批評家としてはそれ以上の業績を残した文人かもしれません。瑞々しい感受性は小説よりも詩やエッセイに凝縮され、また小説を強靭なものにしている批評意識は批評そのものにいっそう鋭利に発揮されます。ロレンスの批評の見過ごされ方はオスカー・ワイルドの批評の見過ごされ方に似ています。それはさておき―ロレンスの文明論の代表作が『アポカリ...
View Article偽ムーミン谷のレストラン1?
ムーミン谷にレストランができたそうだよ、とムーミンパパが新聞から顔を上げると、言いました。今朝のムーミン家の居間には、・今ここにいる人・ここにいない人―のどちらも集まっています。それほど広くもない居間に全員が収まるのは、ムーミン谷の住民は人ではなくトロールで融通が利くからです。そうだ、わが家は食事のふりならずっとしてきたが、それは家庭という雰囲気の演出のためであって実際に食事をしたことはない。そうだ...
View Article不幸せでもいいの(ロジャース&ハート/ミュージカル挿入歌'36)
これも先行ヴァージョンを抜いてビリー・ホリデイ版が決定盤になった一曲。逝去一年半前の録音。 [Billie Holiday & Ray Ellis Orch.-Glad To Be Unhappy]58.2.20(画像1)http://m.youtube.com/watch?v=eLQLvJb_rUU初ヒットはこの人で、十分に良い。 [Lee...
View Articleアル中病棟入院記178
(人名はすべて仮名です)・4月12日(月)曇りのち雨「昨晩、消灯後のデイルームで根島看護婦とわれわれ患者との間でひと悶着あって、病院側のルーズさが問題だったので冬村さんが先頭に立って患者を代表するかたちだった。ホワイトボードに酒歴発表の記載がない(月間スケジュールには記載されているが)。さらに前回の発表は予定表には記載があったのにホワイトボードには金田さんの名前しか書かれず、退院日がもう決っている仲...
View Article恋は愚かというけれど(シナトラ、ヘロン&ウルフ'51)
モダン・ジャズ以降のスタンダード曲は大体ビリー・ホリデイとフランク・シナトラで決る。この曲はシナトラ初の自作曲で、初演はこれ。 [Frank Sinatra-I'm A Fool To Want You]51.3.27(画像4)http://m.youtube.com/watch?v=hOKdDwMxfOc奇しくも同年生まれの二人だが、エレガントなシナトラに較べてビリーは苦い。 [Billie...
View Article文学史知ったかぶり(6)
アメリカ文学史については専門的な興味ぬきに面白く読めるものとして、前回あげたロレンスの、『アメリカ古典文学研究』(講談社文芸文庫)があります。またイギリス人によるアメリカ文学研究ではトニー・タナーの、『言語の都市~現代アメリカ小説』(白水社)が第二次大戦後~70年のアメリカ小説を展望した力作です。トマス・ピンチョンの短編小説から「エントロピー」を文学研究のキーワードに抽出したのは同書でした。狭い範囲...
View Articleアル中病棟入院記180
(人名はすべて仮名です)・4月13日(火)晴れ「食前前検温36.4度、脈拍66、体重(下着)57.9kg。一時は60kg台に乗ったのにまた減らしてしまった。昨晩は日記を早く切り上げ町山智浩『USAカニバケツ...
View Article頭の中の映画/レネ、フェリーニ
アラン・レネの『去年マリエンバートで』(61年・仏)とフェデリコ・フェリーニ『81/2』(63年・伊)は、ほぼ同時期にリヴァイヴァル公開で映画館に観に行きました。もう30年も前になるので、初公開から再上映までよりも、再上映以降の時間の方が長くなります。80年代初頭『マリエンバート』や『81/2』はゴダールやトリュフォーの『勝手にしやがれ』『大人は判ってくれない』(ともに59年・仏)同様に、ヨーロッパ...
View Article文学史知ったかぶり(9)
自然主義小説の発祥国フランスでは、1865年のゴンクール兄弟『ジェルミニー・ラセルトゥー』、67年のエミール・ゾラの『テレーズ・ラカン』がもっとも早い自然主義の実践例です。自然主義の発生を促したフローベールの『ボヴァリー夫人』が1857年ですから、リアリズムの確立から自然主義への変化は急激でした。ゾラの全盛期は『居酒屋』1877と『ナナ』1880から、『ジェルミナール』1885、『大地』1887に至...
View Articleアル中病棟入院記191
(人名はすべて仮名です)・4月18日(日)晴れ「昨夜は断酒会の院内例会の後で男性の入浴時間と女性の入浴時間の切り替えがあり慌ただしかったが、例会中に大人しくしていた分その後は気晴らしの雑談が親しい同士で長引き、勝浦くんの通院するクリニックの女医さんはセクシーだとか、明日も勝浦くんは清水くん夫妻とおちあってインド料理屋に行くが冬村さんも行きたい、でも今夜はもう連絡取れないけど大丈夫だろうかとか、他愛な...
View Article頭の中の映画4/レネ、フェリーニ
アラン・レネ『去年マリエンバートで』(61年・仏)で試みられたのは、いわば現実の不確定性の映像表現というはなれわざでした。観客は映像で提示されている矛盾しあう物語の、どれが映画内の「真実」なのか断定できない。この映画の脚本はレネの原案で小説家アラン・ロブ=グリエが書き下ろしたものですが、両者もこの映画の結末にまったく異なる解釈を下しているそうです。脚本についても映像表現についても監督と脚本家は合意し...
View Articleアル中病棟入院記192
(人名はすべて仮名です)・4月19日(月)晴れ「仲村画伯退院。年配の入院患者ほど治療の成果は高いというし、仲村さんは画家の仕事がなくなってから不本意な仕事に就いてそのストレスからアルコール依存症になったのだが、退院後にはご隠居さんになり好きな絵を描く、とご家族も同意してくれているそうだから、アルコール依存症に戻ることはないだろう。あなた高校生ですか?と、初対面で訊かれたのは忘れられない。佐伯さんそう...
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