Amon Duul-"Disaster" &"Experimente"
アモン・デュールが変なバンド(実際にはバンドですらなかったわけだが)だったのは、二作のアルバム制作しかしなかったのに五作のアルバムがあり、そのうち二作は二枚組アルバムだから枚数にすれば七枚におよぶことで、そうなったのもレコード会社とは七年契約だったから、という信じがたい事情がある。デビュー作が『サイケデリック・アンダーグラウンド』1969というバンドにそれだけ商業的可能性があると認められたのだから、...
View Article次女との三年ぶりの通話
(10月3日金曜日、夕方6時すぎ、まだ母親が帰らない時間。なるべくなら留守番電話がいいが、娘たちのうちどちらかが出るかもしれない。それでも娘たちの母よりはいい) (留守電にはなっていなかった) もしもし、Kさんのお宅ですか。S...K...と申します。 …ああ、パパ? …うん、ママはまだ帰ってきていないよね。Ak...さん?Ay...さんかな? Ay...だよ、お姉ちゃんはまだ部活。...
View Article偽ムーミン谷のレストラン[集成版(1)-(20)]
(1) ムーミン谷にレストランができたそうだよ、とムーミンパパが新聞から顔を上げると、言いました。今朝のムーミン家の居間には、 ・今ここにいる人 ・ここにいない人 のどちらも集まっています。それほど広くもない居間に全員が収まるのは、ムーミン谷の住民は人ではなくトロールで融通が利くからです。...
View Article偽ムーミン谷のレストラン[集成版(41)-(57)]
(41a) 第五章。 追加登場人物・三人の魔女トロール&子だくさんの母トロール(ミムラ夫人)。 ミムラ夫人、ミムラやミイの母親。35人の子を持つムーミン谷一多産な夫人。本人同士も知らないスナフキンの実の母親。 三人の魔女トロール。 その一、トゥーティッキ。帽子にしましまの服を着た気のいい女性。冬眠から目覚めたムーミンに冬の暮し方を教える。...
View Article手すりの上の猫
住んでいるアパートの外廊下に、一階に集合ポストから郵便物を取るため出てみると、中庭を挟んではす向かいのメゾネットの二階窓のヴェランダの手すりに、ぽっちゃり太った猫がのんびりと座っているのが見えた。向こうもこちらに気づいた様子はあり、猫は警戒心の強い動物だが、これだけ高低差を含む物理的な距離があると何の心配もないのを理解していて、ひょいとこちらを向いたまま伸びをしたりしている。...
View Article偽ムーミン谷のレストラン(78)
フローレンは素早くうつぶせに倒れた偽ムーミンの死体にかがみこむと、頭をつかんで頸椎をごきり、と捻りました。フローレンの眼はムーミンの神経系に再びニューロン伝達が復帰するのを目視することができましたから、どうやら目的は達せられたようでした。...
View Article偽ムーミン谷のレストラン(79)
フローレンはとっさの流れで蘇生させてしまったそれの上体を片腕抱きしながら、自分が今確かめたばかりのことがどういう意味を持つか、それに対してどのように対処すべきかまたは関わるべきではないかを考えましたが、そもそもフローレンには対処のしようもなく、望むと望まざるに拘わらず彼女はこの事態に巻き込まれていることを認めざるを得ませんでした。...
View Article偽ムーミン谷のレストラン(80)完
最終回。 どうやらあなたがいちばん真実に近づいたようね、とミムラ夫人はフローレンに微笑みかけました。それも私は知っていたし、こうしてあなたとお会いするのも厳密には今が初めてではなく、もうずっと前からこの時は始まっていたし、私にとってはすべての時間は同一平面上に俯瞰できるものだけれど。でも今は……...
View Articleピーナッツ畑でつかまえて(1)
第一章。 ある暗い嵐の夜でした。 水皿の水にぼくのかおがうつっている。ぼくはのどが渇いているけど、この水をのみほせばぼくのかおは見られなくなる。ならぼくを見ているほうがいいや。そうナルシシストの小型ビーグル犬は考えると、そろそろおやすみの時刻かな、と犬小屋の屋根に億劫そうに上りました。彼は閉所恐怖症なのです。...
View Articleピーナッツ畑でつかまえて(2)
スヌーピー、やっぱりここにいたね、とチャーリー・ブラウンは犬小屋まで走ってくると、スヌーピーからすれば間の抜けたあいさつとしか受け取りようのない第一声を上げました。スヌーピーはタイプライターを芝生に出して、ウッドストックに口述筆記させている最中でした。この種目不明の雑種らしき小鳥はその実、有能な秘書なのです。...
View Articleピーナッツ畑でつかまえて(3)
チャーリーよりも早くルーシーの姿に気づいたとはいえ、スヌーピーは視力が弱く普段はコンタクトレンズを着けてました。今はたまたまレンズを着用し、またチャーリーの話から事態は予測できましたが、もしコンタクト着用でなかったら彼はルーシー以外の人影でも指差したに違いありません。もちろんビーグル犬ですから、少女と少年の区別は嗅覚で見分けることくらいできますが。...
View Articleピーナッツ畑でつかまえて(4)
スヌーピーの住む犬小屋は、外見では想像できないほどの伝説的な広大さを誇っていました。伝説的というのは、実際に小屋の内情を知るのはスヌーピー本人と唯一小屋への出入りを許された親友にして秘書のウッドストックだけであり、小屋を建てたチャーリーは自分でさまざまに手入れをほどこしたスヌーピーから小屋の現況を聞いているだけでした。...
View Articleピーナッツ畑でつかまえて(5)
スヌーピーはさまざまな色の皿を持っていますが、普段は赤い皿をごはん皿、黄色い皿を水皿として使用しています。かつてはスヌーピーには皿の種類を区別できていないと思われていたこともありましたが、これは犬が色盲と思われていたことが原因で、色覚的には人間と異なる熱感知で一般の犬でも色彩は区別しているのです。...
View Articleピーナッツ畑でつかまえて(6)
スヌーピーは知性を獲得するに従って、多くの仮装をするようになっていました。いわゆるコスプレであり、そのレパートリーは140を超えるとさえ言われています。ですが変装の多くが「世界的に有名な…」(The world famous...)という肩書きで始まるものが多いのは、この犬の虚栄と想像力の限界を表すものでした。 * ・ジョー・クール(Joe...
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