短歌と俳句(24)五人の戦後前衛俳人
戦後俳句の前衛運動が高柳重信句集「蕗子」(昭和25年8月)が起点ならば、金子兜太句集「少年」(昭和30年10月)が、戦後短歌における塚本邦雄歌集「水葬物語」(昭和26年)と岡井隆歌集「斉唱」(昭和31年)の関係に相当する。重信と兜太の句業、塚本と岡井の歌業は前回までで紹介した。重信・兜太に続く前衛俳句の有力作家には、・林田紀音夫(1924-1998)・赤尾兜子(1925-1981)・阿部完市(192...
View Article短歌と俳句(25)高浜虚子/ 斎藤茂吉
現代俳句と短歌には各々指導的俳人・歌人がいた。それが高浜虚子(1874-1959)と斎藤茂吉(1882-1952)で虚子は正岡子規の愛弟子、茂吉は伊藤左千夫経由でやはり子規の孫弟子になる。厄介なのは虚子も茂吉も子規の唱えた写生(リアリズム)を頑として主張しながら、自作ではやりたい放題だったことだ。しかも虚子と茂吉の写生観は決定的に異なり、俳人と歌人の間に溝を作った。戦後詩の代表的詩人、田村隆一が「日...
View Article短歌と俳句(26) 耕衣/六林男/敏雄
戦後俳句の前衛運動を高柳重信句集「蕗子」(昭和25年8月)を起点とし、金子兜太句集「少年」(昭和30年10月)によって定着したとしても、戦前~戦時中からすでに前衛俳句を予期する作風を確立していた俳人たちがいる。それが遅れてきた新興俳句作家である永田耕衣(1900-1997)であり、早熟すぎた鈴木六林男(1919-2004)と三橋敏雄(1920-2001)だった。耕衣は西脇順三郎を崇拝する天性の前衛俳...
View Article通院日記12月8日(月)曇り
つまらなくもないが楽しくもない通院の日。アベさんの怪我で引き継ぎも遅れるから、年内と年始の一か月くらい訪問看護が途絶えるかもしれないが大丈夫か訊かれる。今の調子なら大丈夫でしょう、と答える。一抹の不安もなくはない。緊急入院した三回のうち二回は12月だった。だがこういう場合予期不安はかえって調子を崩す原因になるだろう。鬱々と考えているより他人に打ち明けた方がまし、という場合もあれば、思っていても口にす...
View Article西條八十作詞『東京行進曲』
西條八十作詞の『東京行進曲』は昭和四年(1929年)六月に佐藤千夜子の歌で発売され、蓄音機販売台数が20万台と推計されていた当時に25万枚という空前のヒットとなった。これは元々、雑誌「キング」連載中の菊池寛の長編小説を日活が映画化(溝口健二監督)するに当り、中山晋平の作曲とともに映画主題歌として依頼されたものだった。八十の意図は当時の風潮に対して風刺的なもので、四からなる原詞はこのようなものだった。...
View Articleオールタイムベストアルバム500(1~20位)
アメリカのロック雑誌で屈指の権威を誇る「ローリング・ストーン」誌は現在は日本版も読者を獲得しているが、70年代に日本版が発刊された時は情報格差と日本の読者のあまりにも異なる嗜好からごく短期で廃刊になった。では今は日米でロックに関する嗜好がほぼ一致したかというと、アメリカで人気の高いものは日本でも受け入れられるが、日本で強く支持されるものがアメリカでも同様に愛好されているとは限らず、特殊なジャンルに特...
View Articleアル中病棟の思い出29
・3月19日(金)晴れ「昨夜は床に入ってしばらく眠れなかった。あの男は凶悪なロシア人ボクサーどころじゃない。ほぼ確実に裏稼業の人間で、シャブ中でホームレスだ。この病院はアディクション専門精神病院でもあるが、身寄りのない精神患者の保護施設にもなっている。たとえばSくんは入院二年を宣告されているから、半年後に生保の家賃扶助を打ち切られたらこの病院に住民票を移すことになる。あのシャブ中の場合は今は一般精神...
View Articleオールタイムベストアルバム500(21~40位)
この企画はたしか90年代初頭にもやっていた記憶がある。だがその時は年代区切りで70年代は「ジギー・スターダスト」、80年アメリカ発売の「ロンドン・コーリング」を通り、80年代は「パープル・レイン」という調子で、こんなに偏ったものではなかった。ビートルズとディランを減してもストーンズは「ナウ!」「アフターマス」「ベガーズ・バンケット」「スティッキーフィンガーズ」から二作選ぶべきだろう。スプリングスティ...
View Articleオールタイムベストアルバム500(41~60位)
さて、ローリング・ストーン誌のオールタイムベストアルバム500は、順を追うごとになんでもあり状態を増してきた。ベスト・アルバムやコンプリート・ボックスという禁じ手ありでは事実上アルバム単位の評価を逸脱するも同然だが、アメリカ本国ではシングル盤アーティストとアルバム・アーティストが画然と分かれる、という事情もあり、編集盤がそのアーティストの代表作になることもしばしばある。そうした事情も考慮しながら41...
View Articleオールタイムベストアルバム500(61~80位)
ローリング・ストーン誌のオールタイムベストアルバム500も前回までで60作を数えたが、もうついていけないと思う人も多いのではないだろうか。このベストアルバム選出を見ると、20位までにロックの大御所や歴史的アルバムが集中してしまい、逆に21位~60位まではアリバイ的というか、クリティカルな立場からは「これも入れとかなきゃまずいか」とでもいうようなロックのルーツミュージックとしての黒人音楽への配慮が目立...
View Articleオールタイムベストアルバム500(81~100位)
ついに今回でローリング・ストーン誌のオールタイムベストアルバム500もベスト100までが揃う。区切りのいい数だからこれまでの80作を補完するような20作を期待されるが、実際の結果は、その期待に応えてくれるだろうか。では81位~100位をご紹介する。 81.グレイスランド 82.アクシス:ボールド・アズ・ラヴ 83.貴方だけを愛して(アレサ・フランクリン) 84.レディ・ソウル(同)...
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