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短歌と俳句(25)高浜虚子/ 斎藤茂吉

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現代俳句と短歌には各々指導的俳人・歌人がいた。それが高浜虚子(1874-1959)と斎藤茂吉(1882-1952)で虚子は正岡子規の愛弟子、茂吉は伊藤左千夫経由でやはり子規の孫弟子になる。厄介なのは虚子も茂吉も子規の唱えた写生(リアリズム)を頑として主張しながら、自作ではやりたい放題だったことだ。しかも虚子と茂吉の写生観は決定的に異なり、俳人と歌人の間に溝を作った。戦後詩の代表的詩人、田村隆一が「日本の大詩人は虚子と茂吉」と発言して論議を呼んだのは昭和50年頃だった。

※虚子15句

遠山に日の当りたる枯野かな

桐一葉日当りながら落ちにけり

春風や闘志いだきて丘に立つ

天の川のもとに天智天皇と臣虚子と

初空や大悪人虚子の頭上に

手をこぼれて土に達するまでの種

どかと解く夏帯に句を書けとこそ

この庭の遅日の石のいつまでも

流れ行く大根の葉の早さかな

石ころも露けきものゝ一つかな

川を見るバナナの皮は手より落ち

鴨の中の一つの鴨を見てゐたり

山国の蝶を荒しと思わずや

彼一語我一語秋深みかも

去年今年貫く棒の如きもの

※茂吉15首

赤茄子の腐れてゐたるところより幾程もなき歩みなりけり

ゴオガンの自画像みればみちのくに山蚕殺ししその日おもほゆ

めん鷄ら砂あび居たれひつそりと剃刀研人は過ぎ行きにけり

たたかひは上海に起り居たりけり鳳仙花紅く散りゐたりけり

しんしんと雪ふるなかにたたずめる馬の眼はまたたきにけり

草づたふ朝の蛍よみじかかるわれのいのちを死なしむなゆめ

晩夏のひかりしみとほる見附したむきむきに電車停電し居り

電信隊浄水池女子大学刑務所射撃場塹壕赤羽の鉄橋隅田川品川湾

あやしみて人はおもふな年老いしショオペンハウエル笛ふきしかど

ガレージへトラックひとつ入らむとす少しためらひ入りて行きたり

「陣歿したる大学生等の書簡」が落命の順に配列せられけり

むらさきの葡萄のたねはとほき世のアナクレオンの咽を塞ぎき

あかがねの色になりたるはげあたまかくの如くに生きのこりけり

最上川逆白波のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも

わが生はかくのごとけむおのがため納豆買ひて帰るゆふぐれ

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