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Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
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ハムエッグ野菜ソテー添え

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単に昨日のハンバーグ野菜ソテー添えがハムエッグに変っただけという気がしないでもないが、ハンバーグがハムエッグに変っただけで、いきなり夕食から朝食へと様変りしてしまったような気がするのはなぜだろうか。ホームドラマというと朝食の光景はたいていハムエッグとトースト、そしてカフェオレといったところだが、あれはフィクションの中の様式性と言うべきものであって、現実の家庭では毎日毎日判で押したようにハムエッグを朝食にしてはいるまい。

たぶんハムエッグと野菜ソテーというのは調理も食事も簡単便利というところが朝食向きとされるのだろうが(それでもって食べかけの食パンほおばりながら登校を急ぐのがアニメのヒロインで、男子キャラがこれをやっても絵にならない)どこからこれが来たか、というとやはりアメリカ映画の朝食シーンだったりするような気がする。

しかしアメリカ映画とて必ずしも現実を踏まえているとは限らないわけで、映画に描かれている世界がすなわちアメリカ人の一般的風習とはならないだろう。映画とは絵になる光景しか描かないものだ。エルヴィス・プレスリーやボ・ディドリーがハムエッグとトーストの朝食を食べて育ったとは考えられない。作り置きの豚肉と豆のシチュー(ポーク・グレイヴィ)とピーナッツバター・サンドイッチがエルヴィスにはおふくろの味だった。エルヴィス自身がのちには映画スターになるが、エルヴィスの生い立ちは決して映画には描かれないような社会階級のものだった。

ハムエッグとトーストは、いわゆるコンチネンタル・ブレックファストと呼ばれるもので、いわばヨーロッパ人に対する後進国アメリカの憧れが世界に広めたものと言えるだろう。このハムエッグとトーストという朝食は20世紀の両大戦間に定着したものらしい。
第一次大戦にスパイとして従軍した経験を持つイギリス人作家の小説「アシェンデン(秘密諜報部員)」には主人公の婚約のエピソードがあるが、婚約者の邸宅に招かれると昨日も今日も朝食はハムエッグ、一週間目に彼は婚約を破棄した、という話だった。1930年刊行の作品だから、ハムエッグとトーストの朝食など無味乾燥なヨーロッパ人の風習と皮肉な目で見ていたイギリス人がいたことが判る。今ではどうか?さすがに毎朝では飽きるだろう。

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