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Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
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アル中病棟入院記133

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・4月3日(土)晴れ
(前回から続く)
「週末だから学習プログラムもなく、ラジオ体操と掃除を済ませるとあとはまったくの自由時間で、実にのんびりしたものだ。あいつらがこの病棟に移ってきて至極平穏な空気をかき回していった一週間でもあったが、逆に言えばたった一週間の出来事だったのだ。今ではKwが車椅子のKuに菓子やらコーヒー牛乳を提供することもないし、KwがいなくなったらYmさんもSkも大してKuにとりあうようなこともないので、延々と喫煙室が占領されていたり床や灰皿が食べこぼし、飲みこぼしでいつも汚れているようなこともなくなった。あれは拘置所以下だった。たとえ差し入れや買い物(獄中でもマークシート式の注文書で買い物はできる)しても、食べこぼしや飲みこぼしは刑務官に厳重注意されるので誰もが清潔にしていたものだ」

「拘置所では本の注文もできるので(拘置所内図書室からも借り出せるのだが、貸し出しカードはほとんど娯楽小説ばかりなのだ)、とにかく美しい詩を読みたいと思い文庫本の島崎藤村詩集と三好達治詩集を注文したが、運悪く品切れだった。獄中で読んで嬉しかったのはE.M.フォスター『ハワーズ・エンド』、『シュティフター短編集』江川卓『謎解き「罪と罰」』、中村真一郎『ヘンリー・ジェイムズの世界』、変な19世紀フランスのSF小説『カシオペアのФ(psi)』あたりで、遠藤周作の『沈黙』などは学生時代以来に読み返して、初読の時もひどいと思ったが再読して受けた読後感はもっとひどかった。出所したその足で乗り換え駅で途中下車し古本屋で藤村詩集と三好達治詩集、中古CDのディラン『時代は変る』とビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』を買った。こんなことをだらだら思い出すのも平和な土曜日の昼下がりだからだ」

「朝の会の後で入院以来初めて携帯電話をナースステーションの保管庫から出してもらう。Kくんに頼みこまれて衣料用洗剤(濃縮液状タイプ)を貸すが、コインランドリーは二台ともふさがっていて待たされる。彼は明日、帰宅外泊帰りのSmくんと合流してまたカレー屋に行く予定で、Smくんの奥さんも同席するからズボンもシャツも洗っておきたいという。だってSmちゃんの奥さんはやつより10歳下で初対面だぜ。めかしこんでもKくんはKくんだと思うが、そんなことが一大事の様子なのも彼らしい」
(続く)

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