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Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
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Amon Duul-"Psychedelic Underground"

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この系統の脱構築ロックはフランク・ザッパ&ザ・マザーズ・オブ・インヴェンションのデビュー作『フリーク・アウト!』(66年8月)、ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビュー作でアンディ・ウォホールがプロデュース名義(実際はパトロンで、トム・ウィルソンがプロデュース)の『ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』(67年3月)が源泉で、67年は4月にザ・ドアーズ、8月にピンク・フロイドのデビュー作が発表され、グラミー賞年間最優秀アルバムはザ・ビートルズの『サージェント・ペパーズ~』(6月発売)、全米年間アルバム・チャートNo.1はジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンスのデビュー作『アー・ユー・エクスペリエンスド?』(7月発売)だった。同時代的影響力ではジェファーソン・エアプレインの第二作『シュールレアリスティック・ピロー』(2月発売)がサイケデリック・ロックの典型となり、ザ・モンキーズの人気もこの年がピークだったのだからジミの全米年間アルバム・チャートNo.1は凄いことだったとわかる。また、ザッパとヴェルヴェットのプロデューサーを勤めたトム・ウィルソンはハーヴァード大学法律科出身のインテリ黒人で、50年代中期にはインディーズ・レーベルのトランジションを主宰しサン・ラ、セシル・テイラー、ドナルド・バードらのデビュー作を制作し、60年代にフリーでポップス畑に移るとボブ・ディラン、サイモン&ガーファンクル、アメリカ移住後のジ・アニマルズのプロデュースでヒット実績があった。『サウンド・オブ・サイレンス』も『ライク・ア・ローリング・ストーン』も中期アニマルズの『恋の炎』『孤独の叫び』『サンフランシスコ・ナイト』もみんなトム・ウィルソンのプロデュースなのだ。
アメリカとイギリスでは市場の規模からか制作ペースが倍ほど違う。エアプレインもドアーズもジミも67年にはもう次作を発表しているし、当時まったく売れなかったヴェルヴェットも68年1月には第二作『ホワイト・ライト・ホワイト・ヒート』を発表、ピンク・フロイドの第二作『神秘』は68年6月発表で、これに69年10月発表のフランク・ザッパ第六作『ホット・ラッツ』
と、70年1月発表のキャプテン・ビーフハート&ヒズ・マジック・バンド『トラウト・マスク・レプリカ』でロックのアヴァンギャルドは出揃った。でも今回の話はそこまで進まない。

Le Stelle Di Mario Schifano-Dedicato(Italy,1967/Full Album)
https://www.youtube.com/watch?v=hj-naRn6bas&feature=youtube_gdata_player
(A)1.le Ultime Parole di Brandimante,Dall'Orlando Furioso,Ospite Peter Hartman e Fine(Da Ascoltarsi Con TV Accesa,Senza Volume)
(B)1.Molto Alto/2.Susan Song/3.E Dopo/4.Intervallo/5.Molto Iontano(A Colori)
Sergio Cerra-Batteria
Giandomenico Crescentini-Basso
Nello Marini-Organo e Pianoforte
Urbano Orlandi-Chitarra
Prodotto da : Mario Schifano e Ettore Rosboch

まずはイタリアの謎のアルバム『レ・ステーレ・ディ・マリオ・スキファノ』というのがあり(画像中)、67年に550枚限定プレスされたそうだがほとんどが非売品として無料配布されたらしい。92年にCD化されるまで実物を聴いた人がマニアにもいない超幻盤だった。
マリオ・スキファノはイタリアでは高名な画家で、アンディ・ウォホールの向こうを張ってロック・バンドに思い切り実験的なアルバムを作らせたと思われる。日本でも一柳慧(現代音楽家、オノ・ヨーコ前夫)がロック・バンドを起用した『横尾忠則、オペラを唄う』というアルバムを制作したが、当時ロックはヒップだったということだ。
スキファノのメンバーたちが具体的に参考にしたのは『フリーク・アウト!』と『ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』だっただろうとわかるサウンドで、ザッパとヴェルヴェットはアメリカでもアンダーグラウンドのヒーローだったから、この影響例は世界的に見ても早い。内容的にはヴェルヴェットの第二作『ホワイト・ライト~』を先取りしているようなところもあるのだ。
だが、似たようなことを同時にイギリスでもしていた。ビートルズ関係のアート・チームが組んだお遊びバンド、ザ・フールのアルバムも有名だが、こちらはのちにモット・ザ・フープルやクラッシュの名作をプロデュースするガイ・スティーヴンスの冗談だった。

Hapshash & the Coloured Coat-Featuring the Human Host and the Heavy Metal Kids(U.K.,1967/Full Album)
https://www.youtube.com/watch?v=EkSjgXEIGwQ&feature=youtube_gdata_player
(A)1.H-O-P-P-Why
(B)1.A Mind Blown is a Mind Shown
Michael English-Instruments,Voices
Nigel Waymouth-Instruments,Voices
Guy Stevens-Produced,Instruments
The Human Host(Pre-Spooky Tooth)
Heavy Metal Kids(Micky Finn)

イングリッシュとウェイマウスは美術学生で、アルバム・ジャケット(画像下)はなかなか良いし、のちにスプーキー・トゥースになるメンバーとT-レックス参加前のミッキー・フィンまでいるのだが、内容は『フリーク・アウト!』C面の悪意に満ちたワン・コード・ブギー『トラブル・エヴリデイ』『ヘルプ、アイム・ア・ロック』とD面全面のサウンド・コラージュ『モンスター・マグネットの帰還』をヴェルヴェット的な反復ビートとデビュー作のピンク・フロイドのサイケ風味でお手軽に再生産しただけの代物で、ハプサッシュ自身には何の革新性もなかったからヴェルヴェットの『ホワイト・ライト~』とフロイドの『神秘』はたちまちハプサッシュを歴史の闇に笑殺した。イギリス本国でもハプサッシュは冗談の産物として名を残しているだけらしい。
だがハプサッシュのアルバムを雛型にして西ドイツのヒッピー集団が68年末に制作したアルバムは、正真正銘空恐ろしい作品になった。ヒッピー集団はアルバム制作に当たってアモン・デュールと名乗ったが、アモン・デュールはバンドではなくアルバム制作プロジェクトの名称と考えるべきだろう。アルバムの企画段階ではクリス・カーレルやペーター・レオポルドら演奏技量のあるミュージシャンがいたが制作段階でカーレルやレオポルドはアモン・デュールIIに分裂し、アモン・デュールは純粋素人集団になる。ほとんどギターとパーカッションだけで全員が叫んだり呻いたりしているだけのヒッピー祭りのドキュメント・アルバムのようだが、実はアルバム六枚分に相当するセッションから巧妙に編集されたものなのが発掘音源から判明することになる。(A)1の9分半あたりからはビートルズの"I Showld Have Known Better"を歌っているのが聴きとられ、(B)2はアモン・デュールIIのデビュー作"Phallus Dei"収録曲"Dem Guten,Schonen,Wahren"のイントロのリフを使っている。さらにレコードの針飛びやプレスミス、ステレオの位相を使ったオーディオのエラーなどに見せかけた編集ギミックもある。阿鼻叫喚とか地獄絵図とか金太郎飴とか定評のあり、それも間違いではないアルバムだが、これの代わりになるアルバムもないので妙に愛着がわく。82年(?)には別ジャケット、別題(独Brain盤"Minnelied"、邦題『恋歌』)で日本盤も出ていたので、数年遅れでそこから入ったからつきあいも長い。このオリジナルMetronome盤のジャケットは素晴らしいが、Brain盤のジャケットもソフトポルノなムードで良いです。あのジャケットで新装再発されたら買い直したいくらい。中身は地獄だけど(笑)。

Amon Duul-Psychedelic Underground(West Germany,1969[rec.late 1968]/Full Album)
https://www.youtube.com/watch?v=irokCf3kH50&feature=youtube_gdata_player
(A)1.Ein Wunderhubsches Madchen Traumt Von Sandosa/2.Kaskados Minnelied/3.Mama Duul Und Ihre Sauerkraut Spielt Auf
(B)1.Im Garten Sandosa/2.Der Garten Sandosa Im Morgentau/3.Bitterlings Verwandlung
Rayner-Elektrische 12 String,Gesang
Ulrich-Elektrischer Bass,Gestrichener Bas
Helge-Konga,Ambor,Gesang
Krischke-Trommel,Piano
Eleonora Romana-Schuttelrohr,Trommel,Gesang
Angelika-Trommel,Gesang
Uschi-Maracus

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