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アニメ『花物語』一挙放映ネタバレ編4

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肉体に呪いを取り込んだ沼地蝋花に敗北を喫したヒロイン神原駿河は、帰り道で偶然、先輩の阿良々木暦と出会います。暦(男子)は、この「物語」シリーズを通した狂言回し役で、彼が関わってきたこれまでのヒロインが体験してきた怪異談が「物語」シリーズであり駿河の憧れの先輩・戦場ヶ原ひたぎ(女子)のエピソードが『化物語』です。
戦場ヶ原ひたぎとはまず現実にはなさそうな姓名ですが、お気づきのようにこの作品は登場人物の命名が非常にベタです。なにしろ神原の読みは「かんばる」なのです。駿河は流れの速い川、すなわち清流です。

駿河の亡き母は「遠江」で旧姓は「臥煙(がえん)」、駿河は亡き母の煙に巻くような言葉に今でも捉われているわけで、それは「毒にも薬にもなれなければただの水」と、ずばり駿河と沼地の対決を水でシンボル化したものです。蝋花は蝋に封じ固められた花、やはり囚われのイメージです。
貝木泥舟(霊感詐欺師)、忍野扇(男女不明の高校生)、暦の妹で情報通の火燐・月火姉妹など、阿良々木暦は当然月日・カレンダー的視点人物となるでしょう。

こうした作中人物名の象徴化は、鴎外や漱石らによって小説の近代化が行われてからは、意図的な寓話的作品(またはパロディ、童話)にしか使われなくなりました。例外には三島由紀夫、大江健三郎、村上春樹ら、人工的寓意性を基本的な発想にした作家の系譜があります。
ですがライト・ノベルの作家たちは日本の主流文学ではなくマンガ、アニメ、映画によって発想を培っており、それらでは人物名はキャラクターを示す符号として寓意的なものがむしろ奨励されます。主流文学の読者には前記のような人物名はあざとくて読んでいられない。しかしアニメなら人名は単に音の響きで、漢字表記は二次的なもので済むわけです。

ライト・ノベルの定義はアニメ化、コミカライズに向いたものとも言えますが、出版形態としてもキャラクターのヴィジュアルを最初から表紙・口絵・イラストで提供する。これは江戸時代の娯楽小説では当然の手法であり、読者の識字力の低さや通読上の想像力を補うためでした。また、ヴィジュアルを伴わない観念性・抽象性を江戸時代の絵入り小説やライト・ノベル読者は歓迎しない、ということでもあるでしょう。
今回は余談的解説になりました。次回でいよいよ話はクライマックスに向って進みます。(続く)

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