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Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
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アル中病棟入院記150

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・4月5日(月)雨
(前回より続く)
「午後にはVTR鑑賞学習プログラムがあるが、午前中は診察対象者以外は『朝の会』しかなく、コンビニにジャンプの『HUNTER×HUNTER』立ち読みに行こうとセーターを着ていると、Atさん(註)が、買い物?マンガの立ち読みに、とは言えないのではい、石鹸を、と答えると未開封の二個入りの箱から一個くれた。あ…ありがとうございます、と受け取り、他にもあるので、と言ってでてくる。うかつなことは言えない。歯ブラシ、と言えば予備の歯ブラシ、ボールペン、と言えばボールペンを出してきてくれるだろうし、おやつを、と言えばお金を渡され自分には(たとえば)大福、お釣で佐伯さん、とまで好意を示されかねない」
(註)Atさんは温厚な人柄で脳梗塞で早期退職した元警察官。脳梗塞から言語障害があり片言しか話せない。退職後の倦怠からアルコール依存症になり泥酔状態で階段から転落、アルコール依存症治療入院に。同室の筆者が毎日ノートに書き物をしている様子と、元フリーライターだったと人伝てで聞き、頼まれてAtさんの酒歴(学習卒論に当る)発表原稿を手伝い、発表を代読する。退院後年賀状を交していたが、二年目にご家族から喪中葉書が届いた。享年58歳。この入院は2010年の記録になる。

「傘なしでは歩けない本降りで横断歩道の信号待ちをしていると、コンビニから買い物袋を二つ提げたYnさんが出てきたのですれ違いにあいさつする。そうか、と合点がいく。袋の片方はAtさんに頼まれたんだ。だから、買い物に行ってきますと言っても特に頼まれなかった。たぶんぼくにおすそ分けしてくれる分まで多めにジュースや菓子パン類を頼んでくれていると思うと、発表レポートを手伝ったのを感謝されている気持は嬉しいが、いつもごちそうになってばかりいるのもおたがいに良くない。作文して生計を立てていた人間としてはギャラの発生する仕事はきちんともらいたいが、無償のお手伝いには気持だけいただければ十分なことだ」

「それに、言ってはなんだが腕のふるいどころを持て余していたライターにとっては、お話を伺ってレポートを代作するのは、思いもがけず取り組み甲斐のある作業がまわってきたという充実感があった。なによりAtさんが困っていらっしゃる時にその手助けになるようなことを適切にできたのが嬉しかった」(続く)

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