クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - ライヴ ...live...(Brain, 1980)
Recorded Live from Berlin Concert, 1976 (but actually be a studio recording from 1977) and and Amsterdam and Paris in 1979.
Released by Brain Records / Metronome Musik GmbH Brain 0080.048, 1980
Produced, Lyrics and Composed by Klaus Schulze
(Side 1)
A1. Bellistique : https://youtu.be/5KxJZQqwQCE - 21:24
(Side 2)
B1. Sense : https://youtu.be/uwN1ut20ETM - 51:01 (31:10 on originally LP Released)
(Side 3)
C1. Heart : https://youtu.be/I-gPeocJ68I - 30:50
(Side 4)
D1. Dymagic : https://youtu.be/SEXlbY1TwCk - 29:31
[ Personnel ]
Klaus Schulze - synthesizers
Harald Grosskopf - drums (on "Sense")
Arthur Brown - vocals (on "Dymagic")
*
(Original Brain "...live..." 2LP Liner/Gatefold Inner Cover, Poster & Side 1 Label)
本作も恒例のクラウス・シュルツェ自身による英文ライナーがジャケットに掲載されています。これが全部後になって撤回する羽目になることばかり書いてありますので面白く、引用しておく意義はあるでしょう。ドイツ人のシュルツェがワールドワイドを意識して書いた英文ライナーですから、語彙、文体ともに平易ですので日本語訳は割愛します。
----------------------------------------------------------------------
These present recordings were intentionally done without the use of conventional display of 24 or 48-track mobile recording studios.
These recordings are not polished or filled up, they are genuine, with the exception of a dispensable cutting to recordlength.
Some noise and acoustic properties of the venues belong to any live-situation. Maybe some of you will recognize their voices.
This is my first and last live-album, a survey. My music and I leave to other directions. This is not a Goodbye, rather a Hello, the start of a new music of the future, which will guide me to the unknown.
Many thanks to all who came to my concerts.
See you
Klaus Schulze
----------------------------------------------------------------------
実際は本作はシュルツェ「最初で最後の」ライヴ・アルバムにもならなければ(メンバーの一員としてですが『GO Live From Paris』'76がありましたし、'83年には政変後のポーランドでのライヴ・アルバムをリリースして以来多数のライヴ作があり、またアシュ・ラ・テンペルのメンバーとしての'71年・'73年のライヴ、『...live...』以前の時期のライヴも多数発掘されました)、「ライヴ音源を収録しただけでまったく加工していない」どころかアルバム収録に当たって編集の手が加わっているばかりか、近年のリサーチではスタジオ録音をライヴ収録に見せかけた曲も含まれる可能性が濃厚であることも判明しました。しかしそんなことは内容が充実していれば構わないので、本作は音質の問題からも'80年までのシュルツェのアルバムの中ではなかなかCD化されず、初CD化は'95年になりましたが、その際にLPでも31分を超える曲でB面全面を占めていたB1「Sense」が、残されていたマスターでは51分にもなる演奏だったのが判明して全長版でCD化されました。決定版のSPV盤CD再発でも全長版があるものは全長版を採用する方針がスタジオ録音アルバムでも行われているため'95年の初CD化版CD同様全長版が使われたので、LP時代の編集版31分ヴァージョンでは同曲は一度もCD化されていないことになります。
シュルツェほど多作でキャリアも長いミュージシャンになると1作ごとの出来をあげつらっても仕方なく、どのアルバムが好きでよく聴くかということになりますが、ソロ第1作『イルリヒト』'72から第12作目の本作がやはり1作ごとにみずみずしさがあり、本作と同年のスタジオ録音アルバムで通算第13作の『ディグ・イット (Dig It)』はアルバム巻頭曲の代表曲「Death of an Analogue」がアナログ時代の死を宣言した攻撃的なタイトルと裏腹に沈鬱で無機的なムードを持った曲で、『ディグ・イット』はアナログ機材で製作された最後のアルバムになり、次のアルバム『トランスファー (Transfer)』'81からデジタル機材に全面的に移行し、次のアルバム『オーディンティティー (Audentity)』'83が2枚組大作とはいえ初めて1年のブランクを空けたアルバムになるなど、音楽性は『デューン』の作風を継いでいるためこの時期は機材面の試行錯誤に迷いを感じるとも言えます。2枚組ライヴを出すと音が変わる、とLP時代のアーティストはよく言われましたが、シュルツェの場合当然ベスト・アルバム的な選曲になるはずはなく、快調なシークエンサー・ビートのA1、ドラムスにハラルド・グロスコフを迎えたB1、ヴォーカルにアーサー・ブラウンを迎えたD1など、アーサー・ブラウンは『デューン』以上の大活躍ですし、B1は具体的に『デューン』で使われたフレーズが出てきます。C1が11分台まで消え入りそうな弱音のノン・ビートのアンビエント曲ですがこのライヴ盤全体を4楽章と見立てた場合のアダージョに当たるものでしょう。観客の反響も全曲に大きく、まるでロックのコンサートのようですがこれは実際ロックのオーディエンスがシュルツェのライヴをロックのダイナミズムにあふれたコンサートとして楽しんでいたことを現しているように思えます。その後のライヴ盤を聴いてもシュルツェのライヴはスタジオ盤より良い意味熱い演奏が聴けるものですが、本作を「最初で最後のライヴ盤」とし、次作で「アナログの死」を宣言したシュルツェはロック的なダイナミズムに懐疑的になっていたと思われ、本作はシュルツェのロック・ミュージシャン時代の総決算を意図した分シュルツェのもっとも乗り乗りの演奏を収録したものと考えられます。それにシュルツェはインテリ風でいてけっこう観客の熱狂的な反応を喜んでいた面も大きいと見えますし、アーサー・ブラウンや元々(シュルツェと同じ)ハード・ロックのドラマーだったグロスコフと気が合ったのもそういう面で、本作が気合の入ったライヴの好盤なのもそうした事情でしょう。後に発掘音源が大量発表されるまでは本作は'70年代シュルツェの熱狂的ライヴを伝えてくれる貴重なアルバムでしたし、最後ではないにしても公式発売された最初のライヴ盤というだけでも記念碑的な作品です。CD化で全長版になった結果全4曲で130分を超える大作になったのもシュルツェらしくてめでたいではありませんか。
Recorded Live from Berlin Concert, 1976 (but actually be a studio recording from 1977) and and Amsterdam and Paris in 1979.
Released by Brain Records / Metronome Musik GmbH Brain 0080.048, 1980
Produced, Lyrics and Composed by Klaus Schulze
(Side 1)
A1. Bellistique : https://youtu.be/5KxJZQqwQCE - 21:24
(Side 2)
B1. Sense : https://youtu.be/uwN1ut20ETM - 51:01 (31:10 on originally LP Released)
(Side 3)
C1. Heart : https://youtu.be/I-gPeocJ68I - 30:50
(Side 4)
D1. Dymagic : https://youtu.be/SEXlbY1TwCk - 29:31
[ Personnel ]
Klaus Schulze - synthesizers
Harald Grosskopf - drums (on "Sense")
Arthur Brown - vocals (on "Dymagic")
*
(Original Brain "...live..." 2LP Liner/Gatefold Inner Cover, Poster & Side 1 Label)
本作も恒例のクラウス・シュルツェ自身による英文ライナーがジャケットに掲載されています。これが全部後になって撤回する羽目になることばかり書いてありますので面白く、引用しておく意義はあるでしょう。ドイツ人のシュルツェがワールドワイドを意識して書いた英文ライナーですから、語彙、文体ともに平易ですので日本語訳は割愛します。
----------------------------------------------------------------------
These present recordings were intentionally done without the use of conventional display of 24 or 48-track mobile recording studios.
These recordings are not polished or filled up, they are genuine, with the exception of a dispensable cutting to recordlength.
Some noise and acoustic properties of the venues belong to any live-situation. Maybe some of you will recognize their voices.
This is my first and last live-album, a survey. My music and I leave to other directions. This is not a Goodbye, rather a Hello, the start of a new music of the future, which will guide me to the unknown.
Many thanks to all who came to my concerts.
See you
Klaus Schulze
----------------------------------------------------------------------
実際は本作はシュルツェ「最初で最後の」ライヴ・アルバムにもならなければ(メンバーの一員としてですが『GO Live From Paris』'76がありましたし、'83年には政変後のポーランドでのライヴ・アルバムをリリースして以来多数のライヴ作があり、またアシュ・ラ・テンペルのメンバーとしての'71年・'73年のライヴ、『...live...』以前の時期のライヴも多数発掘されました)、「ライヴ音源を収録しただけでまったく加工していない」どころかアルバム収録に当たって編集の手が加わっているばかりか、近年のリサーチではスタジオ録音をライヴ収録に見せかけた曲も含まれる可能性が濃厚であることも判明しました。しかしそんなことは内容が充実していれば構わないので、本作は音質の問題からも'80年までのシュルツェのアルバムの中ではなかなかCD化されず、初CD化は'95年になりましたが、その際にLPでも31分を超える曲でB面全面を占めていたB1「Sense」が、残されていたマスターでは51分にもなる演奏だったのが判明して全長版でCD化されました。決定版のSPV盤CD再発でも全長版があるものは全長版を採用する方針がスタジオ録音アルバムでも行われているため'95年の初CD化版CD同様全長版が使われたので、LP時代の編集版31分ヴァージョンでは同曲は一度もCD化されていないことになります。
シュルツェほど多作でキャリアも長いミュージシャンになると1作ごとの出来をあげつらっても仕方なく、どのアルバムが好きでよく聴くかということになりますが、ソロ第1作『イルリヒト』'72から第12作目の本作がやはり1作ごとにみずみずしさがあり、本作と同年のスタジオ録音アルバムで通算第13作の『ディグ・イット (Dig It)』はアルバム巻頭曲の代表曲「Death of an Analogue」がアナログ時代の死を宣言した攻撃的なタイトルと裏腹に沈鬱で無機的なムードを持った曲で、『ディグ・イット』はアナログ機材で製作された最後のアルバムになり、次のアルバム『トランスファー (Transfer)』'81からデジタル機材に全面的に移行し、次のアルバム『オーディンティティー (Audentity)』'83が2枚組大作とはいえ初めて1年のブランクを空けたアルバムになるなど、音楽性は『デューン』の作風を継いでいるためこの時期は機材面の試行錯誤に迷いを感じるとも言えます。2枚組ライヴを出すと音が変わる、とLP時代のアーティストはよく言われましたが、シュルツェの場合当然ベスト・アルバム的な選曲になるはずはなく、快調なシークエンサー・ビートのA1、ドラムスにハラルド・グロスコフを迎えたB1、ヴォーカルにアーサー・ブラウンを迎えたD1など、アーサー・ブラウンは『デューン』以上の大活躍ですし、B1は具体的に『デューン』で使われたフレーズが出てきます。C1が11分台まで消え入りそうな弱音のノン・ビートのアンビエント曲ですがこのライヴ盤全体を4楽章と見立てた場合のアダージョに当たるものでしょう。観客の反響も全曲に大きく、まるでロックのコンサートのようですがこれは実際ロックのオーディエンスがシュルツェのライヴをロックのダイナミズムにあふれたコンサートとして楽しんでいたことを現しているように思えます。その後のライヴ盤を聴いてもシュルツェのライヴはスタジオ盤より良い意味熱い演奏が聴けるものですが、本作を「最初で最後のライヴ盤」とし、次作で「アナログの死」を宣言したシュルツェはロック的なダイナミズムに懐疑的になっていたと思われ、本作はシュルツェのロック・ミュージシャン時代の総決算を意図した分シュルツェのもっとも乗り乗りの演奏を収録したものと考えられます。それにシュルツェはインテリ風でいてけっこう観客の熱狂的な反応を喜んでいた面も大きいと見えますし、アーサー・ブラウンや元々(シュルツェと同じ)ハード・ロックのドラマーだったグロスコフと気が合ったのもそういう面で、本作が気合の入ったライヴの好盤なのもそうした事情でしょう。後に発掘音源が大量発表されるまでは本作は'70年代シュルツェの熱狂的ライヴを伝えてくれる貴重なアルバムでしたし、最後ではないにしても公式発売された最初のライヴ盤というだけでも記念碑的な作品です。CD化で全長版になった結果全4曲で130分を超える大作になったのもシュルツェらしくてめでたいではありませんか。