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クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - タイムウィンド Timewind (Brain, 1975)

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クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - タイムウィンド Timewind (Brain, 1975) Full Album : https://youtu.be/qBn0Jnf7_3M
Recorded at Berliner Weltklang Studio, March /June 1975, Berlin
Released by Brain Records / Metronome Records GmbH, brain 1075, August 1975
Produced and All tracks composed by Klaus Schulze.
Cover by Urs Amman
(Side 1)
A1. Bayreuth Return - 30:32
(Side 2)
B1. Wahnfried 1883 - 28:38
[ Personnel ]
Klaus Schulze - ARP 2600, ARP Odyssey, EMS Synthi-A, Elka String Synthesizer, Farfisa Professional Duo Organ and Piano, Synthanorma Sequencer

(Original Brain "Timewind" LP Liner/Gatefold Inner Cover & Side 1 Label)

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 本作はシュルツェ自身が「もっとも完成度の高いアルバム」と自負し、フランスでは大ヒット・アルバムとなって「シャルル・クロス・ディスク大賞」を受賞した、といいます。シャルル・クロスは確か堀口大學の『月下の一群』に訳詩が載っていた昔々の詩人だったと思いますが(猫の尻尾に火花が散ったとか、そういう詩だった記憶があります)、ヒットというだけでなく芸術的評価も伴った賞でしょう。シェルツェのアルバムはこれまでもLP片面1曲25分あまりのものが大半で、'60年代のポピュラー音楽のLPの大半が片面15分前後、6曲までという作りだったのに較べるとただでさえ長尺でしたが、ついに本作ではA面は30分を超え、B面も28分半を超える大作となりました。ビーチ・ボーイズの'60年代の名盤の数々がA面B面合わせて28分に満たないものも多いと思うと頭を抱えてしまいますが、音楽にはどちらもあっていいのでシェルツェの場合は1曲25分~30分かけてアルバム片面、さらに25分~30分かけてアルバムのもう片面を聴いてひとつの作品ということです。シェルツェの音楽は英語圏のロックとは一見まるで異なる音楽観によるもののように見えますが、意外とイギリスのプログレッシヴ・ロックとは親近性があり、音楽が20分~30分かけて盛り上がっていく構築性があり、いわば時間感覚では水平的に進行していくためにどうしても長い時間を必要とする性格があります。これは最小単位の倍数で任意に切れる垂直的な発想の音楽ではないので、そこに音楽の流行り廃りへの弱みがあるのですが、シュルツェの場合はいわゆるロックの楽器編成を採らず、またあまりに徹底して壮大なミニマリズムという矛盾した発想と構築性の両立を目指したため、聴き手の求める聴き方について多様な応用力があります。現代の最新楽器によって演奏されるため作曲された古典的交響曲的鑑賞もできますし、もっとプリミティヴな創作方法によるラーガ的な実用的瞑想用音楽にも使える。非常に作者の個性を反映させた表現主義的作品とも、まったく非個性的なムード音楽としても機能できるようになっている。音色だけを楽しむ音楽作品にも聴くことができます。
 シュルツェの前2作『ブラックダンス』『ピクチャー・ミュージック』は初期2作『イルリヒト』『サイボーグ』のドローン手法から一転してパーカッシヴなリズム・チューンとアンビエンス曲の2種に大別され、塊状のサウンド作りだった初期2作から使用楽器をすっきりと分離させた整理されたサウンドに変化しましたが、本作『タイムウィンド』はDマイナーのトライアドによるドローン手法という初期2作に戻ったようでいて、音色は分離が良く音数はぐっと減って前2作の成果を生かしたサウンドのアルバムになっています。もっとも大きな特徴は本作が初めてシュルツェのアルバムではシークエンサーを導入したことにあり、フレーズの反復用に使用するというよりもシークエンサーによる細分化されたパターンの反復をリズム楽器として使用していることで、その特徴は「バイエルンに帰る」と題されたA面曲に顕著ですが、リヒャルト・ワーグナーに捧げられた本作はシークエンサーにストリングス・シンセサイザーをインプロヴァイズして展開していくA面と、定倍数に限らず赴くままにリズムレスとも言えるコード・チェンジをくり返すストリングス・シンセサイザーをベーシック・トラックにファルファッサ・オルガンを主に使用してインプロヴァイズされたB面「ヴァーンフリート1883」と、ともにワーグナーにちなんだ曲名(バイエルンはワーグナーの故郷で葬送曲を暗示し、ヴァーンフリート荘とはワーグナーの別荘の名称です)がつけられたAB面の両曲は、エンディング近くになって著しくアンサンブル楽器の数が増加し爆発音に向かって進みます。次作『ムーンドーン (Moondawn)』'76、続く映画のサウンドトラック・アルバムながらシュルツェ自身もレギュラー・アルバムとして数える『ボディ・ラヴ (Body Love)』'76では専任ドラマーにヴァレンシュタインのドラマー、ハラルド・グロスコフを迎えてシークエンサーによるリズムと生演奏のドラムスを重ねたダイナミックなサウンドに進み、シュルツェ自らロック・ミュージック宣言をするアルバムになります。『タイムウィンド』なしにシークエンサーの初導入の試みと本作独自の達成は見られなかったのですが、ロック色の点では『ブラックダンス』『ピクチャー・ミュージック』から『ムーンドーン』『ボディ・ラヴ』と本作を抜きにもシュルツェのサウンドの発展過程はたどれるので、本作はシュルツェの真髄とも言える一方、前後作からはやや方向の異なる、一連のアルバムとは併走してシュルツェが温めていたコンセプトによる作品のようにも思えます。

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