Recorded at Gold Star Studios, Hollywood, CA & The Hit Factory, New York, NY in 1968
Released by ATCO Records , January 17, 1969 / US#3(Billboard)
Produced by Jim Hilton
(Side One)
A1. In the Time of Our Lives (Doug Ingle, Ron Bushy) - 4:46
A2. Soul Experience (Ingle, Bushy, Erik Brann, Lee Dorman) - 2:50
A3. Lonely Boy (Ingle) - 5:05
A4. Real Fright (Ingle, Bushy, Brann) - 2:40
A5. In the Crowds (Ingle, Dorman) - 2:12
(Side Two)
B1. It Must Be Love (Ingle) - 4:23
B2. Her Favorite Style (Ingle) - 3:11
B3. Filled with Fear (Ingle) - 3:23
B4. Belda-Beast (Brann) - 5:46
(1999 CD Bonus Tracks / Post Album Single)
10. I Can't Help but Deceive You Little Girl (Ingle) - 3:34
11. To Be Alone (Ingle, Robert Woods Edmondson) - 3:05
[ Iron Butterfly ]
Doug Ingle - organs, lead vocals (except on "Belda-Beast")
Erik Brann - guitars, backing vocals, lead vocal on "Belda-Beast"
Lee Dorman - bass, backing vocals
Ron Bushy - drums, percussion
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(Original ATCO "Ball" LP Liner Cover)
ジミ・ヘンドリックス(エクスペリエンス、バンド・オブ・ジプシーズ)からザ・ドアーズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドまでバタフライと同時期に活動し今なお表現の水準が風化しない存在感を誇るロック・アーティストもいますが、バタフライは今日何の影響力も持たないので、イーグルスを引き合いに出すのはそういう意味でもあります。また、イーグルスのようなバンドはバタフライのような先例を見てきたので、轍を踏まない知恵をつけた上でデビューしたとも言えるでしょう。'70年代のアメリカン・ロックにもリトル・フィートやレイナード・スキナードのような風格の大きなバンドがいましたが、本質的な才能の点で優れていたのにそれがかえって仇になり、持続力には恵まれなかった不幸がありました。バタフライのように年間チャート1位の記念碑的アルバムを持ちながらデビューから3年目で解散してしまい、しかも在籍メンバーが第一線のミュージシャンとして活動を続けたわけでもないから発展的解散とはとても言えない。そういう例は珍しいですし、なろうとしてもなれません。そして大ヒット作『In-a-Gadda-da-Vida』だけがバンドの看板として残り、他のアルバムはそれにつられたひと握り(とはいえ相当数)のリスナーが買うだろうと金魚のフンのように再発売されているのが実情でしょう。
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(Original ATCO "Ball" LP Gatefold Left/Right Inner Cover & Side One Label)
前作の大ヒットからジャケットがバタフライのアルバム中もっとも豪華で、チャート順位も前作の最高位4位を上回る(それでもロングセラーで年間チャート1位になりましたが)の最高位3位を記録した本作は、イギリスのプレ・プログレッシヴ・ロックのバンドのようなA1から始まります。つまりヘヴィ路線がまた戻ってきており、A4、B2、B3、B4もそうです。A2、A3がホワイト・ソウル路線、AB面をまたがってA5、B1がモータウン系と、プレ・プログレッシヴ・ロック的なヘヴィ路線の曲でソウル系リズム・アレンジの曲を挟む構成なのでまるでヴァーティゴのアルバムのような気がしてきます。アルバム最終曲B4はギタリストのエリック・ブランの力作でヴォーカルもブランが取り、インストルメンタル・パートのリズム・チェンジとトーンを変えた多重録音のリード・ギターのソロの掛け合いが聴きもので、'75年の再結成バタフライがブランとドラムスのロン・ビュッシーの2人で行われたのも納得のいく曲です。アルバム発表後発売された新曲シングルがボーナス・トラックの2曲で、これはAB面とも完全にプログレッシヴ路線のヘヴィ・ロックの力作になっており、バタフライの読み違いはリスナーはこの路線は「In-a-Gadda-da-Vida」で満腹しており、それ以上凝ったサウンドに向かっても食傷するばかりだったことでしょう。しかし一周回って本作(ボーナス・トラック含む)をアイアン・バタフライというバンド名を取り外して聴くと、これが無名のローカル・バンドの幻の一作だったりしたらマニアの間で(のみ)評判の高いコテコテのプレミア廃盤の座は堅いぞと思われます。それに、次作のライヴ盤を除くと(発掘アルバムを含めて)、イングル、ブラン、ドーマン、ビュッシーの黄金メンバーのバタフライのアルバムは『In-a-Gadda-da-Vida』と本作『Ball』の2作しかないのです。