ラオール・ウォルシュの監督作品紹介と感想文は今回でひと区切り、1953年度の『限りなき追跡』(コロンビア、3D作品、本国11月公開)、『決斗!一対三』(ユニヴァーサル、1月公開)、『海賊船シー・デビル号の冒険』(英米合作、RKO、英4月・米5月公開)の3作をお送りします。この年のウォルシュ作品は4作で、日本未公開・映像ソフト未発売の『A Lion Is in the Streets』(ワーナー、9月公開)があり、『限りなき追跡』と『決斗!一対三』の間に入ります。この順序は作品製作順で、実際の公開では『決斗!一対三』(ユニヴァーサル、1月公開)、『海賊船シー・デビル号の冒険』(英米合作、RKO、英4月・米5月公開)、『A Lion Is in the Streets』(ワーナー、9月公開)、『限りなき追跡』(コロンビア、3D作品、本国11月公開)の順になるわけです。『限りなき追跡』が遅れたのは試行時代の3D作品のため配給網の手配に手間取ったのではないかと思われ(ヒッチコック唯一の3D作品『ダイヤルMを廻せ!』が1954年です)、また未見ですがジェームズ・キャグニー、バーバラ・ヘイル主演作『A Lion Is in the Streets』は『オール・ザ・キングスメン』'49との類似が指摘される純真な成り上がり者の腐敗と破滅を描いた作品だそうで、渋い内容から公開時期に慎重が期されたのでしょう。同作を未見なのはつくづく残念ですが、取り上げた'53年の3作はいずれもロック・ハドソン(1925-1985)主演作であり、3作とも異なる映画社の作品ですからハドソン側のプロダクションで企画製作の体制を立ててコロンビア、ユニヴァーサル、RKOに売り込んだものと思われ、いずれもウォルシュ監督作品なのはハドソンを擁するプロダクションと懇意でまとめて3作の監督を請け負ったのでしょう。ハドソンはウォルシュの監督作品では『特攻戦闘機中隊』'48の助演で出演歴がありますが、主演ではこれら'53年の3作きりになります。大ヴェテランがまだまだ新人のハドソンにいかに磨きをかけていったか集中的に観るのも楽しいことなので、今回に限っては公開順ではなく製作順に観てみました。
●11月22日(水)
『限りなき追跡』Gun Fury (コロンビア'53)*82min, Technicolor/3D; 日本公開1954年(昭和29年)2月
[ 解説 ] 「ネバダ決死隊」のアーヴィング・ウォレスとロイ・ハギンスが脚色、「海賊黒ひげ」のラウール・ウォルシュが監督する1953年西部劇、製作はリュイス・J・ラクミル。原作はキャスリン・グレインジャー、ジョージ・グレインジャー、ロバート・グレインジャー合作の小説で、テクニカラー色彩の撮影をレスター・ホワイト、音楽はミッシャ・バカライニコフの担当。主演は「怒りの河」のロック・ハドソン、「七つの海の狼」のドナ・リード、フィル・ケイリー、「楽園に帰る」のロバータ・ヘインズで、以下「乱暴者」のリー・マーヴィン、レオ・ゴードン、ネヴィル・ブランドら。
[ あらすじ ] ベン・ウォレン(ロック・ハドソン)は南北戦争に参加していたが、戦いも終わり、彼の許婚ジェニファー(ドナ・リード)がはるばるテキサスからくるとの報に途中まで出迎えた。しかし彼女ののった駅馬車はスレイトン(フィル・ケイリー)一味に襲われてベンは重傷をおい、ジェニファーは彼らに拉致された。逃亡するうちスレイトンは清純なジェニファーにつよく惹かれ、真人間にかえりたいと思うようになった。一方傷のいえたベンはスレイトンを追い旅に出た。ある時スレイトンはジェニファーのことで弟ジェス(レオ・ゴードン)と衝突し、これをうらみにもったジェスはベンを訪ねてスレイトン復讐の手助けを申し出た。町の人や保安官はスレイトンを恐れてベンに協力を拒んだが、元スレイトンの情婦だったエステラ(ロバータ・ヘインズ)と、スレイトンに妹を殺されたインディアンのジョハシュ(パット・ホーガン)が応援を申し出た。スレイトンはメキシコへ逃げようとしたが酷暑のため次第に疲労し、漸くバラットの町についた。それを聞いたベンは早速のりこもうとしたがエステラが偵察を志願し、スレイトンに近づいてナイフで刺そうとして逆におさえられた。彼女の口からジェスがベンの仲間であるとききスレイトン一味は動揺した。ジェスはピストルの名手なのだ。ジェニファーは両方を和解させようとひそかにベンを訪れたが一方ベンと和解して堅気になろうとするスレイトンもベンを訪れた。彼はそこでジェニファーを見て急に気が変わり、ジェスを射ち、ベンをも狙ったが、ジョハシュの短剣にたおれた。ジェニファーとベンは新生活をめざしてカリフォルニアに向かって出発した。
●11月23日(木)
『決斗!一対三』The Lawless Breed (ユニヴァーサル'53)*83min, Technicolor; 日本公開1959年(昭和34年)4月
[ 解説 ] テキサスに実在した賭博師であり、無法者として知られたウェス・ハーディンの半生記の映画化。彼の書いた自叙伝にもとづいて、ドラマが組みたてられている。ハーディンの自伝から製作者のウィリアム・アランドがオリジナル・ストーリーを書き下ろし、それをバーナード・ゴードンがシナリオに脚色している。監督は「裸者と死者」のラウール・ウォルシュ。撮影は「世界を駈ける恋」のアーヴィング・グラスバーグ、音楽はジョセフ・ガーシェンソン。出演するのは「翼に賭ける命」のロック・ハドソン、「平原の待伏せ」のジュリア・アダムス、「若き獅子たち」のリー・ヴァン・クリーフ、ジョン・マッキンタイア、ジュー・オブライアン、メアリー・キャッスル、ウィリアム・プレン、グレン・ストレンジ、マイケル・アンサラ、デニス・ウィーバー、ボビー・ホイ等。製作ウィリアム・アランド。テクニカラー・スタンダードサイズ。1952年作品。
[ あらすじ ] 1894年3月20日、テキサス州ハンツヴィルの州刑務所から体躯堂々の中年男が出所した。我が家へ帰るため駅へ向かった彼は途中、町の新聞社へ寄り部厚い原稿を編集長に渡した。この男こそ16年前、テキサスを荒し稀代の悪漢として捕えられたジョン・ウェスリー・ハーディング(ロック・ハドソン)だった。編集長に手渡された原稿は彼の半生を物語っていた。ーウェス・ハーディンは1853年、テキサス州ボナムに住む巡回説教師ジョン・G・ハーディン(ジョン・マッキンタイア)の3男として生まれた。兄たちは南北戦争に参加し、長兄は戦死、次兄のジョーは不具となっていた。一家には戦争孤児ジェーン(メアリー・キャッスル)がいたが、ウェスは彼女と相愛の仲だった。しかし生来、気性の激しいウェスは、当時北軍軍政下に圧迫されているテキサスの現状に屈辱を感じ、父に隠れて賭博と拳銃の練習にスリルを求める青年となっていた。が、ある日、拳銃の曲射ちが父に発見され革の鞭で打たれた。反逆の血に燃えたウェスは金を儲けたら迎えにくるとジェーンに言い残して家を飛び出した。町の酒場に現われたウェスは名うての賭博師ガス(マイケル・アンサラ)と争い先に拳銃を抜いたガスを抜き打ちに射殺した。このためガスの兄弟3人に狙われ、町のはずれで牧場を営む叔父のジョン・クレメンツ(ジョン・マッキンタイア、二役)の家に逃れた。クレメンツはウェスの父と違い太っ腹の男で、彼を北軍の捜索隊から守るためアビリーンへ向かう牛の群を追って行く仲間に加えた。一方、この噂を聞いて例の3人兄弟はアビリーンにウェスを待ち伏せたが、対決の結果はウェスの勝利となった。その後のウェスは賭博で金を儲け、ジェーンを迎えにボナムに引き返したが、神と法に忠実な父に結婚を許されず、逆に自首をすすめられた。父は有力な弁護士を雇い正しい裁判を受けさせようとした。だが彼を、ボナムの酒場の女ロージー(ジュリア・アダムス)が助けた。彼女の馬車でウェスは脱出できたが、ロージーから、ジェーンが警官隊に射殺されたと聞いた。2人はカンサス市へ向かい行方をくらました。その間、テキサスで瀕瀕と強盗殺人が行なわれたが、すべてウェスに罪を着せられ、逆にテキサス警備隊が出動した。アラバマ州に逃れたウェスとロージーは賭博で得た金で牧場を買い平和な結婚生活を営むことができた。がある日、馬市場に出かけたウェスは警備隊に捕り、これまでの殺人がすべて正当防衛だったにも拘らず、25年の禁固刑を言い渡された。――ウェスは16年ぶりで我が家に戻った。喜びにふるえるロージー、留守の間に生れたジョン(レース・ジェントリー)も逞しく成長していた。ところが息子のジョンが拳銃をもて遊ぶのを見たウェスは思わず殴りとばした。ジョンは家を飛び出した。それは昔の自分と同じだった。ジョンは酒場へ来たが忽ち因縁をつけてきたチンピラやくざと喧嘩し、駈けつけたウェスはやくざ者の拳銃に打たれ傷ついた。父の仇を討とうというジョン。しかしウェスはこれを止めた。無謀な生き方は止めよ――ウェスに初めての平和が来た。
●11月24日(金)
『海賊船シー・デビル号の冒険』Sea Devils (RKO'53)*87min, Technicolor; 日本未公開(テレビ放映・映像ソフト発売)
[ 解説 ] ラオール・ウォルシュ監督がロック・ハドソン主演で描く海洋冒険活劇。イギリス領の島、ガーンジー島で漁師をしながら漁師をしながら密輸業を営むギリアットは、謎の美女、ドローセットのフランスへの密航を請け負うことになりやがて彼女に惹かれていく。彼女は英国のスパイだったが、正体を知らないギリアットはフランス側のスパイと勘違いし……。
【スタッフ&キャスト】監督: ラオール・ウォルシュ 原作: ヴィクトル・ユーゴー 製作: デヴィッド・E・ローズ 原案・脚本: ボーデン・チェイス 出演: ロック・ハドソン/イヴォンヌ・デ・カーロ/マクスウェル・リード/デニス・オディア
●11月22日(水)
『限りなき追跡』Gun Fury (コロンビア'53)*82min, Technicolor/3D; 日本公開1954年(昭和29年)2月
[ 解説 ] 「ネバダ決死隊」のアーヴィング・ウォレスとロイ・ハギンスが脚色、「海賊黒ひげ」のラウール・ウォルシュが監督する1953年西部劇、製作はリュイス・J・ラクミル。原作はキャスリン・グレインジャー、ジョージ・グレインジャー、ロバート・グレインジャー合作の小説で、テクニカラー色彩の撮影をレスター・ホワイト、音楽はミッシャ・バカライニコフの担当。主演は「怒りの河」のロック・ハドソン、「七つの海の狼」のドナ・リード、フィル・ケイリー、「楽園に帰る」のロバータ・ヘインズで、以下「乱暴者」のリー・マーヴィン、レオ・ゴードン、ネヴィル・ブランドら。
[ あらすじ ] ベン・ウォレン(ロック・ハドソン)は南北戦争に参加していたが、戦いも終わり、彼の許婚ジェニファー(ドナ・リード)がはるばるテキサスからくるとの報に途中まで出迎えた。しかし彼女ののった駅馬車はスレイトン(フィル・ケイリー)一味に襲われてベンは重傷をおい、ジェニファーは彼らに拉致された。逃亡するうちスレイトンは清純なジェニファーにつよく惹かれ、真人間にかえりたいと思うようになった。一方傷のいえたベンはスレイトンを追い旅に出た。ある時スレイトンはジェニファーのことで弟ジェス(レオ・ゴードン)と衝突し、これをうらみにもったジェスはベンを訪ねてスレイトン復讐の手助けを申し出た。町の人や保安官はスレイトンを恐れてベンに協力を拒んだが、元スレイトンの情婦だったエステラ(ロバータ・ヘインズ)と、スレイトンに妹を殺されたインディアンのジョハシュ(パット・ホーガン)が応援を申し出た。スレイトンはメキシコへ逃げようとしたが酷暑のため次第に疲労し、漸くバラットの町についた。それを聞いたベンは早速のりこもうとしたがエステラが偵察を志願し、スレイトンに近づいてナイフで刺そうとして逆におさえられた。彼女の口からジェスがベンの仲間であるとききスレイトン一味は動揺した。ジェスはピストルの名手なのだ。ジェニファーは両方を和解させようとひそかにベンを訪れたが一方ベンと和解して堅気になろうとするスレイトンもベンを訪れた。彼はそこでジェニファーを見て急に気が変わり、ジェスを射ち、ベンをも狙ったが、ジョハシュの短剣にたおれた。ジェニファーとベンは新生活をめざしてカリフォルニアに向かって出発した。
●11月23日(木)
『決斗!一対三』The Lawless Breed (ユニヴァーサル'53)*83min, Technicolor; 日本公開1959年(昭和34年)4月
[ 解説 ] テキサスに実在した賭博師であり、無法者として知られたウェス・ハーディンの半生記の映画化。彼の書いた自叙伝にもとづいて、ドラマが組みたてられている。ハーディンの自伝から製作者のウィリアム・アランドがオリジナル・ストーリーを書き下ろし、それをバーナード・ゴードンがシナリオに脚色している。監督は「裸者と死者」のラウール・ウォルシュ。撮影は「世界を駈ける恋」のアーヴィング・グラスバーグ、音楽はジョセフ・ガーシェンソン。出演するのは「翼に賭ける命」のロック・ハドソン、「平原の待伏せ」のジュリア・アダムス、「若き獅子たち」のリー・ヴァン・クリーフ、ジョン・マッキンタイア、ジュー・オブライアン、メアリー・キャッスル、ウィリアム・プレン、グレン・ストレンジ、マイケル・アンサラ、デニス・ウィーバー、ボビー・ホイ等。製作ウィリアム・アランド。テクニカラー・スタンダードサイズ。1952年作品。
[ あらすじ ] 1894年3月20日、テキサス州ハンツヴィルの州刑務所から体躯堂々の中年男が出所した。我が家へ帰るため駅へ向かった彼は途中、町の新聞社へ寄り部厚い原稿を編集長に渡した。この男こそ16年前、テキサスを荒し稀代の悪漢として捕えられたジョン・ウェスリー・ハーディング(ロック・ハドソン)だった。編集長に手渡された原稿は彼の半生を物語っていた。ーウェス・ハーディンは1853年、テキサス州ボナムに住む巡回説教師ジョン・G・ハーディン(ジョン・マッキンタイア)の3男として生まれた。兄たちは南北戦争に参加し、長兄は戦死、次兄のジョーは不具となっていた。一家には戦争孤児ジェーン(メアリー・キャッスル)がいたが、ウェスは彼女と相愛の仲だった。しかし生来、気性の激しいウェスは、当時北軍軍政下に圧迫されているテキサスの現状に屈辱を感じ、父に隠れて賭博と拳銃の練習にスリルを求める青年となっていた。が、ある日、拳銃の曲射ちが父に発見され革の鞭で打たれた。反逆の血に燃えたウェスは金を儲けたら迎えにくるとジェーンに言い残して家を飛び出した。町の酒場に現われたウェスは名うての賭博師ガス(マイケル・アンサラ)と争い先に拳銃を抜いたガスを抜き打ちに射殺した。このためガスの兄弟3人に狙われ、町のはずれで牧場を営む叔父のジョン・クレメンツ(ジョン・マッキンタイア、二役)の家に逃れた。クレメンツはウェスの父と違い太っ腹の男で、彼を北軍の捜索隊から守るためアビリーンへ向かう牛の群を追って行く仲間に加えた。一方、この噂を聞いて例の3人兄弟はアビリーンにウェスを待ち伏せたが、対決の結果はウェスの勝利となった。その後のウェスは賭博で金を儲け、ジェーンを迎えにボナムに引き返したが、神と法に忠実な父に結婚を許されず、逆に自首をすすめられた。父は有力な弁護士を雇い正しい裁判を受けさせようとした。だが彼を、ボナムの酒場の女ロージー(ジュリア・アダムス)が助けた。彼女の馬車でウェスは脱出できたが、ロージーから、ジェーンが警官隊に射殺されたと聞いた。2人はカンサス市へ向かい行方をくらました。その間、テキサスで瀕瀕と強盗殺人が行なわれたが、すべてウェスに罪を着せられ、逆にテキサス警備隊が出動した。アラバマ州に逃れたウェスとロージーは賭博で得た金で牧場を買い平和な結婚生活を営むことができた。がある日、馬市場に出かけたウェスは警備隊に捕り、これまでの殺人がすべて正当防衛だったにも拘らず、25年の禁固刑を言い渡された。――ウェスは16年ぶりで我が家に戻った。喜びにふるえるロージー、留守の間に生れたジョン(レース・ジェントリー)も逞しく成長していた。ところが息子のジョンが拳銃をもて遊ぶのを見たウェスは思わず殴りとばした。ジョンは家を飛び出した。それは昔の自分と同じだった。ジョンは酒場へ来たが忽ち因縁をつけてきたチンピラやくざと喧嘩し、駈けつけたウェスはやくざ者の拳銃に打たれ傷ついた。父の仇を討とうというジョン。しかしウェスはこれを止めた。無謀な生き方は止めよ――ウェスに初めての平和が来た。
●11月24日(金)
『海賊船シー・デビル号の冒険』Sea Devils (RKO'53)*87min, Technicolor; 日本未公開(テレビ放映・映像ソフト発売)
[ 解説 ] ラオール・ウォルシュ監督がロック・ハドソン主演で描く海洋冒険活劇。イギリス領の島、ガーンジー島で漁師をしながら漁師をしながら密輸業を営むギリアットは、謎の美女、ドローセットのフランスへの密航を請け負うことになりやがて彼女に惹かれていく。彼女は英国のスパイだったが、正体を知らないギリアットはフランス側のスパイと勘違いし……。
【スタッフ&キャスト】監督: ラオール・ウォルシュ 原作: ヴィクトル・ユーゴー 製作: デヴィッド・E・ローズ 原案・脚本: ボーデン・チェイス 出演: ロック・ハドソン/イヴォンヌ・デ・カーロ/マクスウェル・リード/デニス・オディア