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ラヴィン・スプーンフル The Lovin' Spoonful - デイドリーム Daydream (Kama Sutra, 1966)

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ラヴィン・スプーンフル The Lovin' Spoonful - デイドリーム Daydream (Kama Sutra, 1966) Full Album : http://www.youtube.com/playlist?list=PLC8931C4058B42FA8
Recorded in Recorded Aug 1965 - Dec 1965, NYC & L.A.
Released by Kama Sutra Records Kama Sutra KLP/KLPS-8051, May 1966 / US#10(Billboard)
Produced by Erik Jacobsen
(Side One)
A1. デイドリーム Daydream (John Sebastian) - 2:21 / US#2(Billboard), UK#2
A2. ゼア・シー・イズ There She Is (J.Sebastian) - 1:58
A3. イッツ・ノット・タイム・ナウ It's Not Time Now (J.Sebastian, Zal Yanovsky) - 2:49
A4. ウォーム・ベイビー Warm Baby (J.Sebastian) - 2:03
A5. デイ・ブルース Day Blues (Joe Butler, J.Sebastian) - 3:15
A6. 君はロックン・ローラー Let the Boy Rock and Roll (J.Butler, J.Sebastian) - 2:34
(Side Two)
B1. ジャグ・バンド・ミュージック Jug Band Music (J.Sebastian) - 2:53
B2. つらい僕の心Didn't Want to Have to Do It (J.Sebastian) - 2:06
B3. うれしいあの娘 You Didn't Have to Be So Nice (Steve Boone, J.Sebastian) - 2:29 / US#10(Billboard)
B4. ボールド・ヘッデッド・リナ Bald Headed Lena (Willy Perryman, Edward Sneed) - 2:25
B5. ブッチーの歌 Butchie's Tune (S.Boone, J.Sebastian) - 2:37
B6. ビッグ・ノイズ・フロム・スポンク Big Noise from Speonk (S.Boone, J.Butler, J.Sebastian, Z.Yanovsky) - 2:21
[ The Lovin' Spoonful ]
John Sebastian - vocals, electric and acoustic guitars, autoharp, harmonica
Steve Boone - bass, vocals
Joe Butler - drums, percussion, vocals
Zal Yanovsky - electric and acoustic guitars, vocals

 デビュー・アルバム『Do You Believe in Magic』(1965年11月リリース)から早くも半年後に発表されたセカンド・アルバム。全12曲中カヴァーが7曲を占めた前作から、本作ではB4を除く11曲がジョン・セバスチャンの単独作またはメンバーとの共作になっており、ソングライターとしてのセバスチャンの才能が一気に開花したアルバムになりました。もっともデビュー・アルバムのカヴァー曲の多さは当時の新人バンドの通例と言ってよく、セバスチャンのオリジナル曲は名曲佳曲が揃っていましたし(収録曲「Younger Girl」はニューヨークの後輩バンド、クリッターズがカヴァー・ヒットさせています)、カヴァー曲のセンスの良さは新人バンドのデビューではむしろ当時は歓迎されていたのです。孤高のシンガー・ソングライター、フレッド・ニールの「The Other Side of Life」はスプーンフルのヴァージョンによってロック・スタンダードになっています。セバスチャンのオリジナル曲はバンドの存在が認知された後のセカンド・アルバムのために温存されていたとも言えます。デビュー・アルバムのライナー・ジャケットに謳われていた「THE GOOD TIME MUSIC OF THE LOVIN' SPOONFUL」というキャッチ・コピーは実際に珍しいカヴァー曲を捜して演奏しているデビュー・アルバムにも当てはまりますが、オリジナル曲で「Good Time Music」の雰囲気を醸しだすスプーンフルの作風はイギリスのバンドにも影響を与え、具体的には本作はイギリスでもヒットしてビートルズの『リヴォルヴァー』1966.8収録曲「Good Day Sunshine」、キンクスの『Face To Face』1966.12収録の全英No.1ヒット「Sunny Afternoon」はポール・マッカートニー、レイ・デイヴィス自身が証言するように「Daydream」から発想してイギリスのミュージック・ホール的な雰囲気に発展させたもので、キンクスの『Face To Face』の作風はブルース/ロックン・ロール路線から転換を図ったローリング・ストーンズの『Between the Buttons』1967.1に影響を与えました。今日顧みられませんが、イギリスのバブルガム(ローティーン向け)・ポップを狙ったハーマンズ・ハーミッツのデビューなどラヴィン・スプーンフルの二番煎じを狙った企画バンド以外に考えられません。
 アメリカの黒人音楽を生で取り入れてきたイギリスのバンドにとって、アメリカの白人バンドであるラヴィン・スプーンフルが黒人音楽を洗練された形で咀嚼したスタイルは一種の啓示だったと考えられます。その流儀はイギリスのバンドには思いもつかないか、漠然と試みようとしていたものよりはるかに完成され、しかもアメリカのルーツ音楽から逸脱せずに新鮮な時代的センスにぴたりと合致するものでした。1965年~1966年はイギリスのビート・グループの指向性はプレ・ハードロックに近づいていたと言ってよく、この時期のビートルズ、ストーンズ、アニマルズ、キンクス、ヤードバーズ、そしてザ・フーなどはハードな音楽指向によってアメリカのバンドとは距離が開きつつあったと言えます。一言で言えばイギリスのロックはそれまで影響されていたアメリカ音楽の庶民的な暖かさから離れつつありました。一方スプーンフルの音楽はユーモアと機知に富んでアメリカ音楽本来の温もりを忘れない肩肘張らないもので、ハードロック的な方向性とはまったく逆の指向性を持っていました。一時的な影響にせよイギリスのバンドが一斉にスプーンフルに注目したのは(アニマルズやヤードバーズはハード路線を貫きましたが)注目すべきことで、確かに「Daydream」はイギリスのバンドからは生まれてこなかった種類の楽曲です。大なり小なりイギリスのバンドのロックがマッチョ的とまではいかずとも男性的な発想から出発していたのに対し、スプーンフルはアメリカのロック・バンドとしては初めての反マチズモ的バンドでした。これがジョン・セバスチャンの指向だったのは言うまでもありません。セバスチャンにもっとも近い気質のイギリス人ロッカーはキンクスのレイ・デイヴィスでしょうが、デイヴィスには元来ハードロック的な資質もあり、スプーンフルの音楽からの感化によって「Sunny Afternoon」や「Warterloo Sunset」「Days」のデイヴィスになったと考えられるのです。

(Original Kama Sutra "Daydream" LP Liner Cover & Side One Label)

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 以前ヤードバーズをご紹介した際にも掲載しましたが、ラヴィン・スプーンフルの活動期間に他の英米のグループ/アーティストがどんなアルバムを何年何月にリリースしていたかを一覧にしてみます。まずラヴィン・スプーンフルのバンド存続時4作は(サントラ盤2作を除く)、
◎The Lovin' Spoonful "Do You Believe in Magic" November 1965/US, "Daydream" May 1966/US, "The Hums of The Lovin' Spoonful" January 1967/US, "Everything Playing" September 1967/US.

 スプーンフルより先にデビューしていたグループ/アーティストは(●はイギリスの、◎はアメリカのバンド/アーティスト。スプーンフルの活動時期前後のアルバムのみ上げます)、
●The Beatles "Beatles For Sale" December 1964/UK, "Help !" August 1965/UK, "Rubber Soul" December 1965/UK, US. "Revolver" August 8, 1966/UK, US. "Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band" June 1, 1967/UK, US.
●The Rolling Stones "Rolling Stones, Now !" February 1965/US, "Out of Our Heads" July 1965/US, "December's Children" December 1965/US, "Aftermath" April 1966/UK, June 1966/US, "Between the Buttons" January 1967/UK, US.
●The Animals "Animals on Tour" February 1965/US, "Animal Tracks" September 1965/US, "Animalisms" June 1966/UK, "Animalization" August 1966/US, "Animalism" November 1966/US.
●The Kinks "Kinda Kinks" March 1965/UK, "The Kink Kontroversy" February 1966/UK, "Face To Face" November 1966/UK, "Something Else" June 1967/UK.
●The Yardbirds "For Your Love" July 1965/US, "Having A Rave Up" December 1965/US, "Over Under Sideways Down" August 1966/US, "Little Games" July 1967/US.
●Manfred Mann "The Five Faces of Manfred Mann" February 1965/US, "My Little Red Book Of Winners!" September 1965/US, "Mann Made" October 1965/UK, US. "Pretty Flamingo" July 1966/US, "As Is" October 1966/UK.
●The Pretty Things "Pretty Things" March 1965/UK, "Get the Picture?" December 1965/UK, "Emotions" April 1967/UK.
●Them "Angry Young Them" June 1965/UK, "Them" July 1965/US, "Them Again" January 1966/UK, April 1966/US.
●The Spencer Davis Group "Their First LP" July 1965/UK, "Second Album" January 1966/UK, "Autumn' 66" August 1966/UK.
●The Graham Bond Organisation "The Sound of 65" March 1965/UK, "There's A Bond Between Us" November 1965/UK.
◎Bob Dylan "Bringing It All Back Home" March 1965/US, "Highway 61 Revisited" August 1965/US, "Blonde on Blonde" May 1966/US, "John Wesley Harding" December 1967/US.
◎The Beach Boys "The Beach Boys Today !" March 1965/US, "Summer Days (And Summer Night)" July 1965/US, "Beach Boys' Party" December 1965/US, "Pet Sounds" May 1966/US, "Smiley Smile" September 1967/US.
◎The Byrds "Mr.Tambourine Man" June 1965/US, "Turn! Turn! Turn!" December 1965/US, "Fifth Dimension"July 18, 1966/US, "Younger Than Yesterday" February 1967/US.
◎The Paul Butterfield Blues Band "The Paul Butterfield Blues Band" October 1965/US, "Eart-West" August 1966/US.

 スプーンフルより後からデビューした'60年代の主要バンドは(これもスプーンフルの活動時期のアルバムのみ上げます)、
●The Who "My Generation" December 1965/UK, "The Who Sings My Generation" April 1966/US, "A Quick One" December 1966/UK.
◎The Blues Project "Live at the Cafe Au Go Go" March 1966/US, "Projections" November 1966/US.
◎The Young Rascals "The Young Rascals" April 1966/US, "Collections" December 1966/US.
◎Love "Love" April 1966/US, "Da Capo" January 1967/US.
◎Frank Zappa & The Mothers of Invention "Freak Out !" August 1966/US, "Absolutely Free" April 1967/US.
◎Jefferson Airplane "Takes Off" August 1966/US, "Surrealistic Pillow" February 1967/US.
◎The Doors "The Doors" January 1967/US.
◎The Velvet Underground "The Velvet Underground and Nico" March 1967/US.
◎The Grateful Dead "The Grateful Dead" March 1967/US.

 これらは'60年代英米ロックのクラシックというべき作品群ですが、スプーンフルがいかに特異な位置にいたバンドだったかを物語るものです。スプーンフルはザ・バーズ同様ビートルズが切り開いたブリティッシュ・インヴェンジョンへのアメリカ本国からの回答というべきフォーク・ロック・バンドでしたが、いわゆるフォーク・ロックからも微妙にズレた指向性を持ち、ザ・バーズと較べてもビート・グループ的なロック性は稀薄でした。日本ではロック指向の強い五つの赤い風船やRCサクセション、古井戸らがスプーンフルの影響からフォーク・ロックを演奏していましたが、スプーンフルのライヴ映像を観るとセバスチャンはキーボードはまだしもオートハープ(竪琴)を抱いて弾きながら歌っており、広い意味ですらハードロックに発展していく要素がまったくないのです。スプーンフルは続いてサントラ盤、プロジェクト作を含む全アルバムをご紹介する予定ですので、今回書ききれなかったことは次回以降で補足していきたいと思います。ともあれ、今回の『Daydream』はディラン、ザ・バーズ、ビーチ・ボーイズの諸作と並んでブリティッシュ・ロックに痛烈なしっぺ返しを食らわせたアルバムです。この何でもないようなポップな音楽性こそが、イギリスのバンドには思いもよらなかったような軽みの良さだったのです。

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