アリスがグリフォンについていき、よお、とグリフォンが声をかけた方を見ると、ウミガメモドキがさめざめと泣いていました。どうして泣いているのかしら、とアリス。
なあに勝手に泣いているだけで理由なんぞはありはしないのさ、とグリフォンは言うと、なあ、このお嬢さんがお前さんのことを知りたいんだとさ。
はじめまして、そちらへどうぞ、とウミガメモドキはアリスたちを招きました。どこからお話すればいいやら、これでも昔は、私も正真正銘のウミガメだったのです。
本当かよ、とグリフォン。
子ガメの頃は海の小学校に通っていたのです。先生はおじいさんのウミガメで、生徒たちにはスッポンとあだ名で呼ばれておりました。
でもスッポンではなかったんでしょう?とアリス、だっていくらおじいさんでも、ウミガメはウミガメなんだから。
カメ同士のあだ名はそんなもんですよ、とウミガメモドキは言いました、そのくらいのことは察してくださいよ。
そうだそうだ、とグリフォン、訊くまでもないことを訊いてどうする?
そんな具合に、私ら子ガメは海の小学校に通っていました。もしも信じてもらえるとすればの話ですが……
なんで私が疑うの?とアリス。
違いますか?とウミガメモドキ。
いいから続けろ!とグリフォン。
……とにかく一流小学校でした。なにしろ生徒たちは1学期も2学期も、毎週毎週きちんと通学していたくらいです。
当たり前じゃない、とアリス、私だって毎週毎週通学しているし、みんなもそうよ。
選択科目は?とウミガメモドキ。
もちろん受けてるわ、とアリス、フランス語に音楽。
洗濯は?とウミガメモドキ。
するわけないじゃない!とアリス。
なーんだ、とウミガメモドキは鼻で笑い、大した学校じゃないってことか。海の一流小学校では、選択科目にフランス語と音楽と洗濯は筆頭なんですよ。
そんなの必要ないんじゃない?とアリス、海の底で暮らしてるんだもの。
まあ私は選択科目までは取れなかったので、一般科目だけでした。
何があるの?とアリス。
まず結い方に巻き方から始めて、とウミガメモドキ、それから算数を一通り。足し足し算に引き引き算、掛け掛け算に割り割り算。
足し足し引き引き?掛け掛け割り割り?そんなの初耳よ、何それ。
引き出物は知ってるか?グリフォン。
ええ、お祝い返しのことでしょ。
なのに引き引き算がわからないとはどういうことだ、とグリフォン。
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新・NAGISAの国のアリス(57)
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