ネムリネズミはまたうとうとしていましたが、しっぽを帽子屋につねられてびっくりして起き出すと、しぶしぶ話を続けます。
「お」ではじまるものなら……たとえばお屋敷とか、お月さまとか、思い出とか、おもらしとか。かきまわせればいいのです。わかりますよね、「おもらし」をかきまわすといったいどうなるか。
まあ汚い、とアリス。
かきまわすものならもっとあるぞ、と3月ウサギ、「お」で始まればいいんだろ?
「ま」でもいいですよ、とネムリネズミ。なんなら「お」と「ま」をつなげても。
いくらなんでもそれはないわ!
ないなら口を出さない!と帽子屋に一喝され、アリスはとびあがりました。いくらなんでも失礼よ、帽子屋さん!
そうだ、こいつはおかしいのさ、と3月ウサギが言いました、理由は知らないが、おかしいことはとにかくわかる。
なるほどねえ、とアリス。
こいつだっておかしいぞ、と帽子屋が3月ウサギをあごで指して、理由は私にだってわからない。だが、秋はいいが春になるとたちまちおかしくなるのはなぜだ?
どうしてなの?とアリス。
ウサギの主食は石けんだし、とネムリネズミ、帽子屋も変だし、お世辞を言うにも無理な話さ。なるほど、とアリス。
どうやら彼らはアリスを忘れて、こきおろしあい(殺しあいよりはマシですが)に熱中し始めたようでした。アリスは呼びかけてみましたが、反応もない冷たさです。すっかりつまらなくなって席を立ち、呼び止めてくれないか期待しながら歩き出しましたが、その気配はまるでなし。アリスが最後にちら、と振り向くと、今にもネムリネズミがティーカップに浸されようとしているところでした。
アリスが行ってしまうと3月ウサギと帽子屋はちゃぶ台をさっさと片づけ、そこにクラブの2と5と7がやってきました。それからハートのキングとクイーン、そしてジャックが現れて、さらに他のカードとアリスが姿を現しました。アリスは物見遊山気分でついてきて、もう帽子屋たちの姿もちゃぶ台もないので、さっきまでのお茶会の場所とは気がつきません。
ざこカードたちはラッパと小太鼓を伴奏に、声を合わせて、
♪キングがお目見え
クイーンがお目見え
みんなで踊ろうこの森で
みんなで踊ろうガボットを
そして一列の円陣になってぐるぐると踊っていましたが、やがて2と5と7が列の中からぺたんと倒れてしまいました。もちろん踊りの輪もそれで止まりました。
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新・NAGISAの国のアリス(54)
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