Charles Mingus - A Modern Jazz Symposium of Music and Poetry (Bethlehem, 1957)
Recorded October 1957
Released by Bethlehem Records BCP 6026, 1957
All titles by Charles Mingus, except where noted.
(Side 1)
A1. Scenes in the City (Music: Mingus; Narrative: Elder, Hughes) : https://youtu.be/MQYiEd6uhE8 - 11:55
A2. Nouroog : https://youtu.be/zmZgMIrRYV4 - 4:52
(Side 2)
B1. New York Sketchbook : https://youtu.be/urp2Dj6fLTs - 8:55
B2. Duke's Choice : https://youtu.be/jG75NdWdHO8 - 6:27
B3. Slippers - 3:29 *no links
(CD Bonus Tracks)
tk.1. Woody'n You (Dizzy Gillespie) : https://youtu.be/fxj1gFJhVfQ - 8:44
tk.2. Billie's Bounce (Charlie Parker) : https://youtu.be/7Gh7hZK1hcM - 9:22
[ Personnel ]
Charles Mingus - bass
Jimmy Knepper - trombone
Curtis Porter (Shafi Hadi) - tenor and alto saxophone
Bill Hardman - trumpet (on "Nouroog")
Clarence Shaw - trumpet (except on "Nouroog")
Dannie Richmond - drums
Horace Parlan - piano (on "Nouroog", "Duke's Choice", "Slippers"; left hand during final solo on "New York Sketchbook")
Bob Hammer - piano (on remaining tracks)
Mel Stewart - voice (narration on "Scenes in the City")
*
Charles Mingus - Jazz Portraits: Mingus in Wonderland (United Artists, 1959)
Recorded at the Nonagon Art Gallery in New York City on January 16, 1959
Released by United Artists Records UAL 4036, 1959
All compositions by Charles Mingus except as indicated
(Side 1)
A1. Nostalgia in Times Square : https://youtu.be/LL2P6CCEm4A - 12:18
A2. I Can't Get Started (Vernon Duke, Ira Gershwin) - 10:08 *no links
(Side 2)
B1. No Private Income Blues - 12:51 *no links
B2. Alice's Wonderland : https://youtu.be/8kedVSUA_jQ - 8:54
[ Personnel ]
Charles Mingus - bass
John Handy - alto saxophone
Booker Ervin - tenor saxophone (tracks A1, B1 & 2)
Richard Wyands - piano
Dannie Richmond - drums
今回は『East Coasting』(1957年8月16日録音)に続いて制作された2枚のアルバムをご紹介する。どちらも収録曲全曲のリンクが引けないためだが、抄出ながら掲載しておく。『A Modern Jazz Symposium~』は黒人詩人ラングストン・ヒューズにコンセプト協力を求めた意欲作だがミンガスの音楽としては過渡的な出来、『Jazz Portraits~』はジョン・カサヴェテスのインディーズ映画『Shadows (日本公開題『アメリカの影』)』1958のための映画音楽用レパートリーをアルバム用に再演した美術館でのライヴ収録で、フロント・ラインがクラレンス・ショウとシャフィ・ハディからブルース色が濃いジョン・ハンディとブッカー・アーヴィンのコンビに替わった快作となった。本当はせめて別々に『Jazz Portraits~』だけで1回割きたいのだが、全4曲中2曲しかご紹介できないのでは仕方ない。ハンディとアーヴィンには、また言及する機会があるだろう。
この2作、かたや「音楽と詩についてのモダン・ジャズ協議会」、かたや「ジャズの肖像、または不思議の国のミンガス」と何となく面白くなさそうなアルバム・タイトルがついており、さらに録音年代順でも発表年代順でも前に『The Clown』(57年2月)、『Tijuana Moods』(57年7月)、後に『Blues & Roots』(59年2月)、『Mingus Ah Um』(59年5月)と巨峰がそびえているためにやはり何となく影が薄い。メンバー面でも過渡期的な作品で『A Modern Jazz Symposium~』はこのメンバーのコンセプトでの最後の作品らしい煮詰まった観があり、『Jazz Portraits』は新メンバーでの公式な初録音でまだ資質の様子見段階にも見える。
(Original Bethlehem "A Modern Jazz Symposium of Music and Poetry" LP Liner Notes)
ミンガスのような一時代を築いた超大物の場合そういう不運なアルバムがあるのも仕方ないので、並みのアーティストなら一世一代の傑作、もし不遇アーティストが無名インディーズに残した唯一作だったりしたら幻の名盤扱いされてマニア必聴の秘宝アイテムになっていたようなレヴェルは軽くクリアしている。ミンガスが同時代の大物ジャズマンでも際立って密度の高い、驚異的に充実したアルバムを量産していたのは、実際はミンガスが本拠地にしていたジャズ過密地帯ニューヨークではほとんどのジャズクラブから閉め出されていたからだった。アルバムのジャーナリズム評価は高く、売り上げも良かった。毎回新作オリジナル曲を練りに練ったアレンジで収め、レコード購買層には最高の人気を誇るジャズマンだったのにジャズクラブからは嫌われていたのは、飲食店で演奏されては店の売り上げの落ちる音楽と早くから警戒されていたからだった。
ミンガスは演奏中の飲食禁止、会話禁止を理想としていた。つまりコンサート・ミュージシャンとしての待遇を望んだ。その要求を実現してみせたのはアトランティックの看板アーティストだったMJQ(モダン・ジャズ・カルテット)で、MJQはドレス・コード(観客の正装)すら望んで実現させた。ミンガスは同じアトランティックのアーティストでもレニー・トリスターノと近く、観客の静聴を望んだばかりにほとんどクラブ出演の機会を失った。トリスターノと異なるのは、トリスターノがレコード制作にすら背を向けていったのに、ミンガスはライヴができないかわりにがんがんアルバムを作ったことで、そうなると傑作と傑作の合間に試作段階の小佳作も当然生まれてくる。今回併せて1回に取り上げた2作はリンクが全曲揃わなかったのもあるが『Tijuana Moods』『East Coasting』のメンバーのバンドの最後の余力が『A Modern Jazz Symposium』であり、『Blues & Roots』『Mingus Ah Um』を作ることになるメンバーの初顔合わせが『Jazz Portraits』になるという谷間のミンガスが聴けるからで、前後の傑作と較べてミンガスの統率力はやや緩んでいる、というか、意図的にメンバーを解放している。その点でこの2作は共通する。
(Original United Artists "Jazz Portraits: Mingus in Wonderland" Liner Notes)
ブランフォード・マルサリスがデビュー作で取り上げて再評価されたポエム・リーディング入りの「Scenes in the City」で始まる『A Modern Jazz Symposium』だが、この曲は『Tijuana Moods』セッションでは「A Colloquial Dream」として10分58秒とナレーション含め完成型に近い原型が出来ていたが(現行CDに収録)、『Tijuana Moods』には過剰として外されたのだろう。他の曲はもっとシンプルな構成で、「Nouroog」「Duke's Choice」「Slippers」の3曲は「Open Letter to Duke」として組曲構想があったものを解体したらしい。同題の曲が『Mingus Ah Um』で発表されるが、それも組曲の部分演奏らしい。初期の『Jazz Composers Workshop』や『The Jazz Experiments』で組曲演奏されたパートが『Pithecanthropus Erectus』以降はすっきりと整理されたのが思い出される。ミンガスがデュークといえばエリントンのことだが、セッション・アウトテイクで現行CDにボーナス収録された「Woody'n You」「Billie's Bounce」はそれぞれディジー・ガレスピー、チャーリー・パーカーの代表曲で、アルバム本編もそうだがカーティス・ポーターがソロイストでは主役、またこのアルバムで参加し、次の『Jazz Portraits』では抜けて『Blues & Roots』で再参加するホレス・パーランがマル・ウォルドロン以来ミンガスの音楽性を左右するほどのピアノを弾く。『East Coasting』のビル・エヴァンスでもできなかった。
だから『A Modern Jazz Symposium』は、エリントン、ガレスピー、パーカーら黒人ジャズの革新的伝統への賛美がテーマで、ボーナス曲から聴いた方がわかりやすいかもしれない。この呼吸を生かしたのがフロントに新鋭アルトのジョン・ハンディ、新鋭テナーのブッカー・アーヴィンを迎えた『Jazz Portraits』で、2サックス・クインテット編成は『Pithecanthropus Erectus』以来だが、オリジナル3曲、スタンダード1曲の配分まで同じで、アーヴィンが休んでハンディのアルトのワンホーン・カルテットになるのが1曲あるのも同じ作りになっている。ただし『Pithecanthropus~』のジャッキー・マクリーンのフィーチャー曲はテーマ吹奏を重視したものだったが、今回は大スタンダードの「I Can't Get Started」だから縦横無尽のアドリブ大会になる。ハンディとアーヴィンはどちらもR&Bバンド出身者で、ミンガスはマクリーンやポーター、後のエリック・ドルフィーのようなビ・バップを強力にデフォルメしたようなスタイルか、ハンディやアーヴィン、のちのジョージ・アダムスのようなR&Bルーツのサックスを好むようで、アルバム1曲目の軽快な「Nostalgia in Times Square」などポーターならまだしも(『Shadows』サントラではアルトはポーター、ピアノはパーランらしい)マクリーンやドルフィーではこうはならない(この2人もサウンドは似ていないが)。「Nostalgia~」はリズムはマーチだがコード進行はシンプル極まりないブルースで、ここまで凝らないミンガスの曲はかえって珍しいのだが、マクリーンやドルフィーなら鋭角的・幾何学的に切り込むところをR&B出身のハンディとアーヴィンはうねうねとすべりこむ。『Blues & Roots』や『Mingus Ah Um』ではミンガスはもっと計算したアレンジで密度を高めているので、『Jazz Portraits』にはこのメンバー、このアルバムだけの風通しの良さがある。『A Modern Jazz Symposium』もCDではボーナス曲のおかげでずっと風通しの良いアルバムになった。ライヴができなかったからアルバムでやった、おかげで後世にも残ったのは皮肉でもあるのだが。
Recorded October 1957
Released by Bethlehem Records BCP 6026, 1957
All titles by Charles Mingus, except where noted.
(Side 1)
A1. Scenes in the City (Music: Mingus; Narrative: Elder, Hughes) : https://youtu.be/MQYiEd6uhE8 - 11:55
A2. Nouroog : https://youtu.be/zmZgMIrRYV4 - 4:52
(Side 2)
B1. New York Sketchbook : https://youtu.be/urp2Dj6fLTs - 8:55
B2. Duke's Choice : https://youtu.be/jG75NdWdHO8 - 6:27
B3. Slippers - 3:29 *no links
(CD Bonus Tracks)
tk.1. Woody'n You (Dizzy Gillespie) : https://youtu.be/fxj1gFJhVfQ - 8:44
tk.2. Billie's Bounce (Charlie Parker) : https://youtu.be/7Gh7hZK1hcM - 9:22
[ Personnel ]
Charles Mingus - bass
Jimmy Knepper - trombone
Curtis Porter (Shafi Hadi) - tenor and alto saxophone
Bill Hardman - trumpet (on "Nouroog")
Clarence Shaw - trumpet (except on "Nouroog")
Dannie Richmond - drums
Horace Parlan - piano (on "Nouroog", "Duke's Choice", "Slippers"; left hand during final solo on "New York Sketchbook")
Bob Hammer - piano (on remaining tracks)
Mel Stewart - voice (narration on "Scenes in the City")
*
Charles Mingus - Jazz Portraits: Mingus in Wonderland (United Artists, 1959)
Recorded at the Nonagon Art Gallery in New York City on January 16, 1959
Released by United Artists Records UAL 4036, 1959
All compositions by Charles Mingus except as indicated
(Side 1)
A1. Nostalgia in Times Square : https://youtu.be/LL2P6CCEm4A - 12:18
A2. I Can't Get Started (Vernon Duke, Ira Gershwin) - 10:08 *no links
(Side 2)
B1. No Private Income Blues - 12:51 *no links
B2. Alice's Wonderland : https://youtu.be/8kedVSUA_jQ - 8:54
[ Personnel ]
Charles Mingus - bass
John Handy - alto saxophone
Booker Ervin - tenor saxophone (tracks A1, B1 & 2)
Richard Wyands - piano
Dannie Richmond - drums
今回は『East Coasting』(1957年8月16日録音)に続いて制作された2枚のアルバムをご紹介する。どちらも収録曲全曲のリンクが引けないためだが、抄出ながら掲載しておく。『A Modern Jazz Symposium~』は黒人詩人ラングストン・ヒューズにコンセプト協力を求めた意欲作だがミンガスの音楽としては過渡的な出来、『Jazz Portraits~』はジョン・カサヴェテスのインディーズ映画『Shadows (日本公開題『アメリカの影』)』1958のための映画音楽用レパートリーをアルバム用に再演した美術館でのライヴ収録で、フロント・ラインがクラレンス・ショウとシャフィ・ハディからブルース色が濃いジョン・ハンディとブッカー・アーヴィンのコンビに替わった快作となった。本当はせめて別々に『Jazz Portraits~』だけで1回割きたいのだが、全4曲中2曲しかご紹介できないのでは仕方ない。ハンディとアーヴィンには、また言及する機会があるだろう。
この2作、かたや「音楽と詩についてのモダン・ジャズ協議会」、かたや「ジャズの肖像、または不思議の国のミンガス」と何となく面白くなさそうなアルバム・タイトルがついており、さらに録音年代順でも発表年代順でも前に『The Clown』(57年2月)、『Tijuana Moods』(57年7月)、後に『Blues & Roots』(59年2月)、『Mingus Ah Um』(59年5月)と巨峰がそびえているためにやはり何となく影が薄い。メンバー面でも過渡期的な作品で『A Modern Jazz Symposium~』はこのメンバーのコンセプトでの最後の作品らしい煮詰まった観があり、『Jazz Portraits』は新メンバーでの公式な初録音でまだ資質の様子見段階にも見える。
(Original Bethlehem "A Modern Jazz Symposium of Music and Poetry" LP Liner Notes)
ミンガスのような一時代を築いた超大物の場合そういう不運なアルバムがあるのも仕方ないので、並みのアーティストなら一世一代の傑作、もし不遇アーティストが無名インディーズに残した唯一作だったりしたら幻の名盤扱いされてマニア必聴の秘宝アイテムになっていたようなレヴェルは軽くクリアしている。ミンガスが同時代の大物ジャズマンでも際立って密度の高い、驚異的に充実したアルバムを量産していたのは、実際はミンガスが本拠地にしていたジャズ過密地帯ニューヨークではほとんどのジャズクラブから閉め出されていたからだった。アルバムのジャーナリズム評価は高く、売り上げも良かった。毎回新作オリジナル曲を練りに練ったアレンジで収め、レコード購買層には最高の人気を誇るジャズマンだったのにジャズクラブからは嫌われていたのは、飲食店で演奏されては店の売り上げの落ちる音楽と早くから警戒されていたからだった。
ミンガスは演奏中の飲食禁止、会話禁止を理想としていた。つまりコンサート・ミュージシャンとしての待遇を望んだ。その要求を実現してみせたのはアトランティックの看板アーティストだったMJQ(モダン・ジャズ・カルテット)で、MJQはドレス・コード(観客の正装)すら望んで実現させた。ミンガスは同じアトランティックのアーティストでもレニー・トリスターノと近く、観客の静聴を望んだばかりにほとんどクラブ出演の機会を失った。トリスターノと異なるのは、トリスターノがレコード制作にすら背を向けていったのに、ミンガスはライヴができないかわりにがんがんアルバムを作ったことで、そうなると傑作と傑作の合間に試作段階の小佳作も当然生まれてくる。今回併せて1回に取り上げた2作はリンクが全曲揃わなかったのもあるが『Tijuana Moods』『East Coasting』のメンバーのバンドの最後の余力が『A Modern Jazz Symposium』であり、『Blues & Roots』『Mingus Ah Um』を作ることになるメンバーの初顔合わせが『Jazz Portraits』になるという谷間のミンガスが聴けるからで、前後の傑作と較べてミンガスの統率力はやや緩んでいる、というか、意図的にメンバーを解放している。その点でこの2作は共通する。
(Original United Artists "Jazz Portraits: Mingus in Wonderland" Liner Notes)
ブランフォード・マルサリスがデビュー作で取り上げて再評価されたポエム・リーディング入りの「Scenes in the City」で始まる『A Modern Jazz Symposium』だが、この曲は『Tijuana Moods』セッションでは「A Colloquial Dream」として10分58秒とナレーション含め完成型に近い原型が出来ていたが(現行CDに収録)、『Tijuana Moods』には過剰として外されたのだろう。他の曲はもっとシンプルな構成で、「Nouroog」「Duke's Choice」「Slippers」の3曲は「Open Letter to Duke」として組曲構想があったものを解体したらしい。同題の曲が『Mingus Ah Um』で発表されるが、それも組曲の部分演奏らしい。初期の『Jazz Composers Workshop』や『The Jazz Experiments』で組曲演奏されたパートが『Pithecanthropus Erectus』以降はすっきりと整理されたのが思い出される。ミンガスがデュークといえばエリントンのことだが、セッション・アウトテイクで現行CDにボーナス収録された「Woody'n You」「Billie's Bounce」はそれぞれディジー・ガレスピー、チャーリー・パーカーの代表曲で、アルバム本編もそうだがカーティス・ポーターがソロイストでは主役、またこのアルバムで参加し、次の『Jazz Portraits』では抜けて『Blues & Roots』で再参加するホレス・パーランがマル・ウォルドロン以来ミンガスの音楽性を左右するほどのピアノを弾く。『East Coasting』のビル・エヴァンスでもできなかった。
だから『A Modern Jazz Symposium』は、エリントン、ガレスピー、パーカーら黒人ジャズの革新的伝統への賛美がテーマで、ボーナス曲から聴いた方がわかりやすいかもしれない。この呼吸を生かしたのがフロントに新鋭アルトのジョン・ハンディ、新鋭テナーのブッカー・アーヴィンを迎えた『Jazz Portraits』で、2サックス・クインテット編成は『Pithecanthropus Erectus』以来だが、オリジナル3曲、スタンダード1曲の配分まで同じで、アーヴィンが休んでハンディのアルトのワンホーン・カルテットになるのが1曲あるのも同じ作りになっている。ただし『Pithecanthropus~』のジャッキー・マクリーンのフィーチャー曲はテーマ吹奏を重視したものだったが、今回は大スタンダードの「I Can't Get Started」だから縦横無尽のアドリブ大会になる。ハンディとアーヴィンはどちらもR&Bバンド出身者で、ミンガスはマクリーンやポーター、後のエリック・ドルフィーのようなビ・バップを強力にデフォルメしたようなスタイルか、ハンディやアーヴィン、のちのジョージ・アダムスのようなR&Bルーツのサックスを好むようで、アルバム1曲目の軽快な「Nostalgia in Times Square」などポーターならまだしも(『Shadows』サントラではアルトはポーター、ピアノはパーランらしい)マクリーンやドルフィーではこうはならない(この2人もサウンドは似ていないが)。「Nostalgia~」はリズムはマーチだがコード進行はシンプル極まりないブルースで、ここまで凝らないミンガスの曲はかえって珍しいのだが、マクリーンやドルフィーなら鋭角的・幾何学的に切り込むところをR&B出身のハンディとアーヴィンはうねうねとすべりこむ。『Blues & Roots』や『Mingus Ah Um』ではミンガスはもっと計算したアレンジで密度を高めているので、『Jazz Portraits』にはこのメンバー、このアルバムだけの風通しの良さがある。『A Modern Jazz Symposium』もCDではボーナス曲のおかげでずっと風通しの良いアルバムになった。ライヴができなかったからアルバムでやった、おかげで後世にも残ったのは皮肉でもあるのだが。