パット・モランさんもごく普通のジャズ・ピアニストで、当時こういうジャズに需要があったのはまあ快適なイージー・リスニングとしてのジャズが求められていたというだけのことだが、音楽的にはラファロの凄腕ベース、アルバム自体のムードはジャケット込みという感じがする。アイディアの勝利だが、これは女性ピアニストのジャケットでなければできないし、思いつけば誰でもできるがなかなか思いつくものではなく、先例があれば真似はできない。
疑問があるとすればこの脚は本当にパット・モランさん本人なのか、というあたりだが、それは言うだけ野暮だろう。ピアニストがピアノの鍵盤に足など掛けるものかというのがそもそも虚構なのだし、モランさんには他にもアルバムがあるので実在の女性ピアニストではあるのだが、ここでは演奏の合間にピアノに足を掛けてひと休み、という架空(かもしれない)のキャラクターがこのアルバムのヒロインなのだ。この洒落っ気は女性ならではで、羨ましい。