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Rufus Zuphall - Phallobst (Pilz,1971)

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Rufus Zuphall - Phallobst (Pilz,1971) Full Album : http://youtu.be/9WjQrid9aBQ
Recorded at Dierks-Studio, Stommeln during July and August 1971.
Pilz 20 21099-5 Germany 1971
A1. Closing Time 3:21
A2. Wenn Schon, Denn Schon 3:35
A3. Schnupfer 5:13
A4. Waste Land 5:10
B1. Makrojel 5:53
B2. Prickel Pit 3:51
B3. Partland Town 3:52
B4. I'm On My Way 5:01
[Personnel]
Gunter Krause - Elektrische Gitarre,akustische Gitarre,Steelguitar,Gesang
Thomas Kittel - Elektrische Gitarre,12 Saiten-Gitarre,Clavinet
Manfred Spangenberg - Bass
Klaus Gulden - Flote
Udo Dahmen - Alle Schlaginstrumente
Tonigenieur - Dieter Dierks

 ルーファス・ザファールは1969年に実質自主制作盤の『Weisse Der Teufel』でデビューした西ドイツのバンドで、ビート・グループから脱した西ドイツのロック・バンドの多数が本格的にデビュー作を発表するのは70年以降だから、カンやアモン・デュールなどと並んでいち早く西ドイツらしいアイデンティティを引っさげてデビューしてきたバンドに入る。作風は一言で言えばジェスロ・タルをよりフリーなサイケデリック・ロック、ジャズ・ロックに寄せたもので、2ギター、ベース、ドラムスにフルートの専任奏者を加えた5人編成。ファースト・アルバムはおそらくバンド自身による自主制作レーベルからだが、その後英米のバンドを招いたロック・フェスティヴァルなどで評判をあげ、Ohr,Pilz,Kozmischeなどのレーベルで新世代のバンドを送り出したプロデューサーのロルフ・ウルリッヒ・カイザーによってピルツ・レーベルから本作を発表した。
 カイザー傘下のレーベルの強みは新鋭の凄腕エンジニア、ディエター・ディエークスが実質的には音楽プロデューサーも兼任しており、ディエークスは後にスコーピオンズなどのプロデュースで世界的な成功を収めるが、カイザー傘下ではヒッピーご用達のようなアンダーグラウンド・シーンの異色バンドを片っ端から手がけていた。オール・レーベルではタンジェリン・ドリームやグルグル、アシュ・ラ・テンペル、ピルツはポポル・ヴーやヘルダーリン、ワレンシュタイン、コズミッシュはオールやピルツの所属バンドのメンバーによる流動的メンバーのコズミック・ジョーカーズが主要アーティストで、サウンド傾向から見るとオールとコズミッシュはエレクトリックなアシッド系、ピルツは比較的アコースティックでオーソドックスなフォーキー系と言える。

 このピルツには『Rapunzel』1972というサンプラー・アルバムがあって、ジェリー・ベーカース、W&W、ワレンシュタイン、エムテディ、ヘルダーリン、ブレーゼルマシーネ、そしてルーファス・ザファールの7組のアルバムからの代表曲が収録されていた。イタリアのBASFレーベルからのアナログ再発盤だったからオリジナルに添付されていたというブックレットはついていなかったが、ゲートフォールド・ジャケットは再現されておりオリジナルはさぞ美しかろうと思われた。サイト上で「Rapunzel Pilz」で検索するとラプンツェル(森の妖精)と名づけられたキノコ(Pilz)料理の紹介ばかりヒットするが、出てきた。これです。

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 オリジナル・アルバム未収録曲ではなくどれもアルバム収録曲からの選曲だが、

Side A : 1. Jerry Berkers - Es Wird Morgen Vorbei Sein / 2. Witthuser & Westrupp - Die Schlusselblume / 3. Wallenstein Relics Of Past
Side B : 1. Emtidi - Traume / 2. Holderlin - Requiem Fur Einen Wicht / 3. Broselmaschine - Lassie / 4. Rufus Zuphall I'm On My Way

 と素晴らしい選曲で、ピルツのアルバムはまだポポル・ヴーの『ホシアナ・マントラ』とヘルダーリン『ヘルダーリンの夢』、エムテディ『芽生えの時』、実はピルツは販売しただけで制作には関与していないらしいジョイ・アンリミティッド『シュメッターリンゲ』くらいしか持っていなかったが(ワレンシュタインの『コズミック・センチュリー』を入れそうになったが、コズミッシュからのリリースだった)、W&Wとブレーゼルマシーネは箸休めとして、実に素晴らしい曲が並んでいた。ブレーゼルマシーネも後にアルバムを入手したらなかなか良い作品だった。W&Wはフォーク・デュオなのでサウンドだけではつらい。アルバム・オープナーのジェリー・ベーカース『やがて朝が来るだろう』(拙訳)とクローサーのルーファス・ザファール『わが道を行く』(訳すとダサいが)が見事な配曲で、さぞやアルバムも良かろうとなんとか探しあてたらブレーゼルマシーネとは逆でアルバムはいまいちだった。しかし名曲が1曲あればいいではないか。ちなみに『ラプンツェル』はCD化されたらしいが限定版だったのか市場に見当たらない。オール・レーベルのサンプラー・アルバム『Mitten Ins Ohr』はCD発売されており、これに『ラプンツェル』とコズミッシュ・レーベルからの曲が増補されているが残念ながらベーカースは入っていてもザファールはオミットされている。

 ベーカースはニール・ヤング風だが下手な歌とドイツ語歌詞のぎこちない響きが良い。アルバムもそういう感じ、ただしこの曲ほどのレベルではないが。一方ルーファス・ザファールはアルバムにはこのタイプの曲はこれしかない。それどころか実はこのバンドはインスト指向のジャズ・ロック・バンドで、ヴォーカル曲はA1、A4、B3、B4と半数しかない。だがこのヴォーカルが当時のロックとしては珍しく歌い上げないタイプで、キャラヴァンのリチャード・シンクレアくらいしか思い当たらない。ポスト・パンク以降の醒めたバンドにはこのタイプはそこそこあって、A1などフェイク・ジャズ風の曲調もあってモノクローム・セットみたいだ。キャラヴァン~キャメルのリチャード・シンクレアは直接影響ではないと思うがモリッシー(ザ・スミス)の唱法を声質まで先取りしているようでもあり、『アイム・オン・マイ・ウェイ』はシンクレアかビド(モノクローム・セット)かモリッシーが歌ってもはまりそうなヴォーカル・スタイルになっている。
 ジャズ・ロックとしてはB1が緊迫感があって良いと思う。ファースト・アルバムのザファールはどちらかというとサイケデリック・ロック的で未整理な風味があり、良くも悪くも69年、という感じがした。ジャズの消化の仕方もガーシュウィンの『サマータイム』をモード風に演る、といった、ゾンビーズやドアーズあたりがとっくにもっと巧妙に演っていることを演っていた。このセカンド・アルバムはオーソドックスではあるけれど、リズム・アレンジが格段にシャープになって曲ごとにまとまりのあるサウンドになっている。70年代に入ったな、と思わせる。フルートの使い方もジェスロ・タルの影響を脱している。同時期に似た傾向のバンドにはイギリスのヴァーティゴ・レーベルのベン(Ben)があり、フルートをフィーチャーしたジャズ・ロックでこちらもなかなか渋いが、魅力的なヴォーカルを欠くのと楽曲・演奏力ではザファールの方に分がある。でもザファールにしてもそれほどのアルバムではないので、たまたま気になったら聴いてみて意外と良いと感心する程度ではある。まあそれで十分ではないか。

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(再発盤ジャケット)
 ザファールは翌72年に解散し、現行のこのアルバムのCDには解散ライヴがボーナス・トラックでアルバム1枚分追加されている。なんとバンドは21世紀になって再結成したらしく、新作も3枚出している。インディーズ発売で価格が高くちょっと手が出ないのだが、ユーロ圏の70年前後のアンダーグラウンド・シーンのバンドにはアルバム1、2枚出して消えていたのに、90年代末~21世紀になって再結成しているバンドがかなりある。みんな大学生くらいで音楽活動では食えないと堅気の仕事に就いていたのだが、たまに集まると趣味で演奏するくらいはしていたのだろう。そして年齢的にも定年を迎えて悠々自適のバンド活動を再開した、ということなのだと察する。ザファールは未聴だが、再結成バンドのほとんどが昔とほとんど変わらない音楽性で活動していて、今聴くと逆に古く聴こえなかったりする。かえって若いバンドより瑞々しかったりするのだ。

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