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Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
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アル中病棟入院記166

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(人名はすべて仮名です)
・4月8日(木)晴れ
(前回から続く)
「言い出しっぺながら飽きてきたのでこの話題ももういいか、元はと言えば勝浦くんが不安や不満、犯人がどうのだの言い始めたのを逸らすためのおふざけで、それはどうやら功を奏したし、と思っていたら、金田さんがああ良かった、いつもの佐伯さんに戻って、と言うので、そういえばしばらく黙りこんで冗談口など叩かなかったのに思い至った。女の人たちには勝浦くんの愚痴はいつものことだが、佐伯さんこの頃どうして機嫌悪いんでしょうね、とむしろそちらの方に恐々としていたのだ」

「別に無理して愛想を良くするわけではなく、思いつきの冗談でいつもの佐伯さん、と安心してもらえたならそれはそれで良かった。なにか原因があって不機嫌になっていたのではなく、精神科への入院もこれで三回目だし、アルコール科入院は初めてとはいえ離婚のための別居、未決囚監まで数えれば拘置経験はさらに増える。どれもが質はだいぶ違うが一定期間を過ぎれば強い倦怠に見舞われる。拘置性障害という症状もあるくらい拘置はそれ自体が強いストレスだから、黙ってそれに耐えているのを不機嫌と見られても仕方ないし、勝浦くんのように不平不満を訴えてストレスを晴らす性格でもない」

「さて、夕食後はAAメッセンジャーズ講演会があるのでにわかにセッティングに大わらわ。週に二回も晩にAA講演会があるとは、女性AAなら主婦層だから昼間なのだが夕食後ではほとんどの人がうんざり、張り切っているのは自分たちもAA会員の坂部と木島さんくらいだ。二人とも何度もアルコール科の入退院を繰り返している。坂部などはこういうことが好きなのか、自分が主宰する支部まで持っている。木島さんが会員なのは先日偶然隣に座り、AA特有の名乗りと呼応、××支部のマコです。マコ!と乗り乗りで叫んでいたので初めて気づいた」

「要するにAAに行っていようが行っていまいが、という例がこの二人であり、なんら悪びれた様子もない。むしろそちらの方がAAメッセンジャーの談話よりもアルコール依存症とはなにかを語っているとも思える。今夜は坂部はもちろん木島さんの近くにも座らないよう用事し、今回の来院は七人のメッセンジャーだったので始まる前から疲労した空気が漂う。一応二時間が定時とはいえ、七人となれば聞く前から疲れる」
(続く)

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