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けものみち

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けものみち、といって現代詩の読者なら誰もが思い出す、ということはたいがいの人は全然知らない詩にこんなのがある。タイトルからしてそのものずばり。

『けものみち』鳥見迅彦

けものどもはおれの死体のにおいをかぎ
シャツの端をくわえてひきさき
あばらのあたりに
ぐさりと爪をかけるだろう
黒い鳥がおりてきて
おれの目玉をついばむだろう
虫けらたちもやってきて
おれの足のうらをかけあがるだろう

引返さなければいけない
引返さなければおれは殺される
だれもしらないこんなところで
おれは殺される

けものみちのどんづまり
木洩日はうすらわらいをうかべ
ひからびてころがっているけものの糞は
たしかにおれをあわれんでいる
けものどもは木や草のかげにかくれてこっちをみているにちがいない

(詩集「けものみち」1955)

鳥見迅彦の項目はウィキペディアにはない。そんなものよ。簡単な略歴なら他で見つかった。
「昭和期の詩人。正歿年・明治43年(1910年)2月5日~平成2年(1990年)5月25日。『歴程』同人。詩集に『けものみち』『なだれみち』など」
知らないうちに(しかもほとんど四半世紀前に)学生時代愛読(とまではいかないが、戦後詩の必読書だからちゃんと読んだ)した詩人がとっくに生誕100年も過ぎていて当然故人、というのは感慨深い。
そういえばウィキペディアの検索回数ベスト5に深浦加奈子の名があり、深浦加奈子といえば第三エロチカしか思いつかないが、2008年に亡くなっていて晩年10年間の活動は、など初めて知った。
いやそんなんじゃなくて、この歩道橋のけものみちはいくらなんでも極端じゃないの?―という話を書きたかったのだが、なんかどうでもよくなってきたのでこれでおしまいにする。

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