夏目漱石門下生の内田百間(1889-1971)は戦時下は日本文学報国会加入を拒否し、芸術院会員加入も拒否した硬骨の文人で、鈴木清順の復帰作『ツィゴイネルワイゼン』'80の原作者でもあれば黒澤明の遺作『まあだかい』'93のモデルでもあり、筆者も通った千代田区の某私立大学の文学部創設に尽力した大学教授でもあった人ですが、この百間(間の字は正確には特殊字体で、門構えに月で「けん」と読ませる漢字です)の弟子の随筆に弟子たちを自宅に招いて土用の丑の鰻重を食べるエピソードがあり、百間師は「鰻重は要らない鰻を捨てて、汁の滲みた美味しいご飯をいただくもの」というのが流儀と弟子たちに説いてその通りにしたそうです。決起せよ万国のウナギたち!百間は旧制高校卒業後に東京帝国大学で漱石に学ぶまで岡山生まれ・岡山育ちだった人ですが、江戸っ子の漱石由来か百間ならではなのかそういう鼻持ちならない粋ぶりもあって、百間と筆者では堕ちる理由は別々でしょうが、いつか地獄で出会うことがあったら古今東西過去未来すべての食用ウナギに謝罪させたいと思います。
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