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Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
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私のフリーライター歴(その1)

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 何を隠そう昔日の恥でしかありませんが、筆者は青年誌中心に20代~30代にフリーライターをしていました。きっかけは大学時代半ばで生活に瀕してたまたまバイトに入ったのが青年誌編集専門プロダクションで、これが初日から穴埋め原稿を書かされるような虎の穴で、雑誌編集の仕事など出来て当たり前で習うより馴れろというような職場でしたから入ったバイトのほとんどが数日で鳴をあげて辞めていく。しかし筆者にはたまたま適性があったので仕事自体は苦もなく、それまで勤めたどんなバイトより面白かった(自分の関わった雑誌数種類が毎月出る!)かわりに学業両立どころではなくなり、大学4年で卒業単位も足りなければ学費も続かなくなった。結局翌年度は授業料未納で大学は除籍になり、そのまま編集部に就職するしかなくなりました。スタッフ8人で月刊誌4冊をかけもちで作るというバブル時代ならではの猛烈な編集部で、正社員になるやすぐさま1誌の編集長を担当させられ他の3誌のヘルプもする、しかも無記名穴埋め原稿を毎月合計月刊誌1誌分は書かされるという具合でしたが、20代前半とはいえ(20代前半ならでは?)ど素人から一気に無茶な仕事を半分は自分から買って出ていたのは次々と書き飛ばしたものがまったく無条件で雑誌発売されるのが面白かったからです。

 正社員になって1年、突然編集長自体が大手出版社に併合されることになり、スタッフのほとんどはそのまま移動しましたが筆者には編集者としての大手出版社への移籍は気が乗らず、同僚たちの勧めもあってその機に独立してフリーになりました。同僚たちとしては筆者まで移動すると編集専業になってしまって融通が利かなくなるので、これまで一緒にやってきた筆者がフリーの外部スタッフになって原稿依頼する方が自分たちにもやりやすかったという事情がありました。

 フリーライターには雑誌の原稿料は月号の翌月(仕事から3か月後)に支払われるので、最初の3か月は一銭も収入がなくつらかった。また、元同僚以外の初めての編集者(会社形態、フリー編集者問わず)との仕事を引き受けるようにもなりましたが、最初の1年半でギャラのピンハネ、不払いで200万円くらいタダ働きを騙されました。雑誌編集の世界では編集を丸受けして作るとスタッフにはギャラを払わず編集費を丸ごとネコババしてトンズラする、トンズラしないまでもいつまで経っても請求しても支払わない、という出版ゴロがごろごろいるのです。そういう見極めがつくまで授業料として200万円あまりをピンハネ、もしくはまったく未払いという痛い目にあいました。

 ここまで書いたことはもう30年あまり昔のことなので今では何の郷愁も感傷もありませんが、出版の仕事に憧れや志を持っている若い方には、出版の世界には教養も浅薄ならば品性もなければ流行りものにばかりに飛びつく軽薄な俗物がほとんどでもあれば、所詮流行りものかつ水商売な割に人気もありますから多少の取り柄があればこき使えて安く上がる若手が使い潰し前提で次々と入ってくるので、フリーライターや編集者の定年は経営職にでもなっていない限り40代前半と言ってよい。その頃には30代の若手の方が管理職に昇格していて、ヴェテランはかえって煙たがられる存在になっている。ほとんどのフリー契約スタッフや編集者はそのくらいの年齢で出版の現場では第一線では通用しないロートルあつかいされるので、もっと手堅い職業に転職してしまいます。雑誌出版の世界はそういう具合に世代交代をくり返すので、一生の仕事にするつもりでいても商業出版として関わりが成りたっていられるのはせいぜい20~30年しか続かない。

 また本来の人間の価値は仕事ではなく心の美しさ誠実さ、魂の高貴さといったものであるはずなのに、出版の仕事はつづければつづくほど他人を使い捨ての労働力にみなしていくようなものです。自分が青年の頃、同年代の同僚はともかく中年のヴェテラン出版人はみんな汚く見えた。自分も中年に近づくにつれ、同年代の同僚たちもみなかつて青年の頃そう見えていた汚い出版人になってしまっているのが身に染みてきた。出版、マスコミ、ジャーナリズムに将来を託そうとしている学生~青年のかたには、十中八九の場合は人生の過ちになるのをご忠告申し上げたい。筆者は脱落という形で過ちの組に入った一人です。

(画像はお借りしたもので、本文とは関係ありません)

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