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『セカンド・コーラス』Second Chorus (Paramount'40)*85min, B/W : アメリカ公開1940年12月3日、日本未公開
監督 : ヘンリー・C・ポッター/共演 : ポーレット・ゴダード、アーティ・ショウ
◎ダニーとハンクの二人の学生トランぺッターが美しい女性をめぐって繰り広げる恋の争奪戦を描いた極上ミュージカル。ジャズメンのアーティ・ショウが実名で登場し、フレッド・アステアと火花を散らす!
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[ 解説 ] フレッド・アステア主演の日本未公開ミュージカル。ポーレット・ゴダードとの息の合ったステップが見もの。
[ あらすじ ] ビッグバンドの美貌マネージャーを巡って恋の争奪戦を繰り広げる2人のトランペッターの姿を描く。
[ あらすじ ] ダニー・オニール(フレッド・アステア、トランペット演奏はボビー・ハケットの吹き替え)とハンク・テイラー(バージェス・メレディス、トランペット演奏はビリー・バタフィールドの吹き替え)は、大学のバンドである "オニールズ・ペレニアルズ"の仲間で、対抗するトランペット奏者です。二人とも7年連続で留年することで大学のアマチュア・バンド生活を延ばしています。ある公演で、エレン・ミラー(ポレット・ゴダード)がダニーとハンクの目を惹きます。エレンは勤めでいるローン取り立て業者からダニーたちに通知を出しますが、話の早いダニーとハンクはすぐにエレンのマネージャーとして引き抜きます。しかしペレニアルズは仕事が入らず、バンドの仕事を取るため奔走するエレンに、アーティ・ショウは、自分のアーティ・ショウ楽団のマネージャーにマネージャーに任命しました。エレンはダニーとハンクにショウのバンドのオーディションを受けさせようとしていますが、嫉妬深い確執からダニーたちは解雇されてしまいます。エレンはショウに、金持ちの道楽ミュージシャン、J・レスター・チズム(チャールズ・バターワース)からコンサートのスポンサーを取りつける首尾をつけます。ハンクはエレンの嫉妬深い夫、または彼女の兄弟であるふりをして、万事は調子良く運んでいるように見えます。 ダニーとハンクがチズムのバンドに戻ってきて、ショウにダニーの曲をアーティ・ショウのバンドに入れることに同意してもらいます。ダニーたちは、コンサートから何とかチザムとチズムが演奏したがっているマンドリン演奏を外そうとします。解決策はチズムを昏睡させるために睡眠薬を盛ることですが、ハンクも睡眠薬で眠ってしまいます。エレンのために、ダニーはアーティ・ショウのために選曲を手配して、ついにプロとしての実力を見せます。アーティ・ショウは「スペシャルな出来になったね」と賞賛します。アーティ・ショウはバトンをダニーに渡し、ダニーは自分の作曲を踊って成功させます。(英語版ウィキペディアより)
――本作については数あるアステア映画にはこういう凡作もある、と教えてくれる以上の価値はせいぜいアーティ・ショウ楽団の演奏シーンによって一応ジャズ映画としての資料的価値はある、という程度なので、アステア本人が「Worst Movie Ever I Made」と発言しているのですからあれこれ言うだけ野暮というものです。アステアが出演していなければ後世一顧だにされない映画に終わったと思いますが、逆に言えばアステア出演作という一点だけで本作はいまだに映像ソフト発売もされていれば稀には上映されたりテレビ放映されたりする機会もあるので、アステアにとっても観客にとっても本作は映画作品としての価値はほとんどありませんが、フィルモグラフィー上'40年度もアステア映画はブランクなく製作・公開されたということだけに本作の存在意義はあります。長いキャリアを誇った映画俳優の作品歴ではこういうものもある、ということです。
●3月14日(木)
『踊る結婚式』You'll Never Get Rich (Columbia'41)*88min, B/W : アメリカ公開1941年9月25日、日本公開昭和23年2月10日
監督 : シドニー・ランフィールド/共演 : リタ・ヘイワース、ロバート・ベンチリー
◎アステアとリタ・ヘイワースが初共演したミュージカル・コメディ。有名振付師カーティスは、女好きの劇団オーナーの浮気騒動に巻き込まてしまう。嫌気がさして逃げるように入隊するカーティスだったが……。
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[ 解説 ]「晴れて今宵は」と同じくフレッド・アステアとリタ・ヘイワースが主演するミュージカルで「晴れて今宵は」に先立つ1941年の作品である。脚本も同じくマイケル・フェッシャーがアーネスト・パガノの協力を得て書き下ろしたもので、監督には「バーレスクの王様」のシドニー・ランフィールドが当たった。音楽は「夜と昼」のコール・ポーターが作詞作曲し、ダンスはブロードウェイに名を馳せるロバート・アルトンが振り付けた。助演者は「青空に踊る」のロバート・ベンチリーをはじめ、ジョン・ハバート、オサ・マッセン、「海を渡る唄」のフリータ・イネスコートらである。なお撮影はフィリップ・タニュラが監督している。
[ あらすじ ] ニューヨークのミュージカル・コメディーの舞台監督マーティン・コートランド(ロバート・ベンチリー)は自らカサノヴァをもって任じている。美しいコーラス・ガールのシーラ・ウインスロップ(リタ・ヘイワース)に心をひかれたマーティンは無理をしてダイヤモンド入りの腕輪を彼女に贈ったが、シーラは言葉巧みに断り、腕輪はマーティンのポケットに逆もどりする。それを妻(フリーダ・イネスコート)に見咎められて、腕輪はダンス監督ロバート・カーチス(フレッド・アステア)に頼まれて買っておいたので、ロバートはシーラに首ったけなのだと弁解する。ロバートもマーティンに頼まれて、シーラにひどく愛想よく振る舞ってその場を取り繕った。翌日の新聞のゴシップ欄に、コートランド夫人の説明つきで、シーラとロバートの写真が出たので、ロバートはシーラに弁解しに行くが、彼女は腹を立ててしまう。しかし彼女の許婚トム・バートン(ジョン・ハバード)にはシーラもことが丸く納まるように言い訳をする。しかしトムはピストルを持ってロバートを追い掛けるので、召集令が来たのを幸いと軍隊に逃げ込んだ。シーラはトム・バートンが大尉として入隊したので、面会に行くとそこの営倉にロバートが入っていた。軍曹を殴ったためなのだが、彼女は彼に何か心ひかれるのだった。一方ロバートを失ったコートランドの一座は不入り続きとなったので、マーティンが兵営を訪れ、隊長を説きふせ、ロバートはシーラを主役として主演させ、フィナーレの結婚式のシーンには本職の治安判事を舞台に立たせ、自分とシーラの結婚式を本ものになぞらえる。ショウは成功したがロバートは営倉に戻らなければならなかった。しかしシーラは彼の気持ちを了解し、彼と結婚することを決心した。
――解説の通り本作はアメリカ公開1942年11月19日、日本公開は戦後の昭和22年5月27日の次々作『晴れて今宵は』(Columbia'42)より日本公開はあとになりました。『晴れて今宵は』の原題が"You Were Never Lovelier"と皮肉混じりの洒落たタイトルのように、本作の原題は"You'll Never Get Rich"と洒落を通りこしてアメリカ社会では極端な侮辱になるもので、大スターのアステアやヘイワース、大人気作家のベンチリーだからこそ洒落になるという際どいタイトルです。本作のアイディアは上司の浮気に部下が隠れ蓑役をやらされるという『アパートの鍵貸します』'60の先取りのようなもので、同作の監督ビリー・ワイルダーはルビッチの弟子ですが、ルビッチやワイルダーはアステア映画を手がけていませんし撮らせる企画もなかったでしょう。軽みや粋の本質でアステアはルビッチの映画にもワイルダーの映画にも向いていないので、ルビッチもワイルダーも洒落や粋の流儀がある人ですがこの師弟にも違いがあります。本作は舞台監督の浮気のごまかしに利用されて迷惑をこうむったアステアが徴兵されこれ幸いと軍隊に逃げこみますが、そこでもヘイワースの婚約者(トム・バートン)が部隊の仕官にいてアステアはわざと営倉送りになり、戦時色らしいアステアの兵隊役といっても素行不良兵として営倉でぐうたら暮らしをするだけ、というとぼけた作りです。慰問のショーにやってきた一座に軍務としてダンサー出演することになったアステアは、ショーのあと挙式して新婚旅行に旅立つというヘイワースにショーの中の結婚式で営倉仲間に呼んでこさせた本物の治安判事を立会人に結婚し(邦題『踊る結婚式』の通り)、出し抜かれたヘイワースと婚約者は露見してしまったベンチリーのセクハラ・パワハラ暴露とアステアの機知と執念に降参してめでたくアステアとヘイワースは結ばれるのですが、このでたらめで調子のいいコメディが観ていて不自然に感じない、説得力のあるものになっているのは素面になって思い出せば驚くべきことで、本作は特に傑作でも名作でもありませんが映画の中のでたらめが虚構なりにちゃんとリアリティをそなえて見せてくれる、あなどれない作品です。またアステアがヘイワースほどの女優と演技で張りあえる存在感を身につけたのを証明する作品でもあります。
●3月15日(金)
『スイング・ホテル』Holiday Inn (Paramount'42)*100min, B/W : アメリカ公開1942年8月4日、日本公開昭和22年6月18日
監督 : マーク・サンドリッチ/共演 : ビング・クロスビー、マージョリー・レイノルズ
◎ひとりの女性をめぐって駆け引きを繰り返す歌手のテッドとダンサーのジム。彼らの一年をミュージカルで綴った名作。劇中でビング・クロスビーが歌った「ホワイト・クリスマス」も大ヒットした作品。
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[ 解説 ]「我が道を往く」のビング・クロスビーと「カッスル夫妻」の フレッド・アステアが主演する歌と踊りにつづられた音楽映画。音楽は「世紀の楽園」のアーヴィング・バーリン作詞作曲し、映画も彼の原案に基づき、劇作家エルマー・ライスが書き上げ、「トップ・ハット」のマーク・サンドリッチが監督製作したものである。ダンス振付はダニー・デーア、撮影はデイヴィッド・エーベルの担任。助演ではマージョリー・レイノルズ、ヴァージニア・デールの二新人と、「三銃士(1935)」のウオルター・エイベルが活躍する。
[ あらすじ ] 歌の巧いジム・ハーディ(ビング・クロスビー)とダンスの上手なテッド・ハノオヴァ(フレッド・アステア)は 、ライラ・ディクスン(ヴァージニア・デイル)と三人組で、ニューヨークのナイトクラブに出演していた。ジムはライラが承知したので、カネチカット州のミドヴィルという村に農場を買い、芸人の足を洗って結婚生活に入る準備をした。ところがクリスマスも前夜いよいよ最後の晩にライラは寝返り、テッドと婚約してしまう。ジムはさびしく田舎に一年を送ったが、一年目のクリスマス前夜にテッドとエージェントのダニー(ウォルター・エイベル)を訪ねてブロードウェイに現れた。その夜ダニーの紹介でジムは花屋の売り子をしているリンダ・メイスン(マージョリー・レイノルズ)という芸人志望の娘に会った。ジムはミドヴイルの家を改造して、祭日だけフロア・ショウを見せて開場するという企画で、ホリデイ・インを始めるから、テッドに出演を頼みに来たのだった。テッドは変人扱いにして相手にしなかったが、翌日リンダが来て歌い踊る契約をした。ジムとリンダは互いに心をひかれつつ、大みそかの夜ホリデイ・インは開業した。ところがその夜ライラはテッドを捨てて駈け落ちしたので、彼は泥酔してインへ訪ねて来てリンダと踊った。かくてまたもやリンダをめぐって二人は恋のさや当てを演じたが、ジムが策略をろうしすぎたので、リンダはテッドと共にハリウッドへ行き、映画スタアとなった。間もなく婚約が新聞に発表された。ジムは発奮してハリウッドへ乗込むと、もともとジムを愛しているリンダは、ジムの腕に抱かれた。
――本作中の経過時間はちょうど2年間で、冒頭でともに引退して田舎暮らしを約束していたデイルに土壇場のクリスマス公演で相棒のアステアと組んで芸人を続けると背かれたクロスビーが次のクリスマスまで田舎の一人暮らしをする一年が祝日ごとに描かれ、クリスマスにクロスビーはアステアに会いにニュー・ヨークに出てきて田舎の自宅をホテルに改装開業し祝日だけ呼び物にショーをやるんだ、と計画を話してエージェントのウォルター・エイベルから成功するもんかと失笑を買います。エイベルが立ち寄った花屋の店員の娘のマージョリー・レイノルズが芸人志願でエイベルに使ってくれませんかと頼み、エイベルがだったらちょうどいいとクロスビーのもとへ送りこみのがきっかけで、祝日ごとにホテルで行うショーの相手役にレイノルズを雇うことにしたクロスビーとレイノルズに祝日ごとのショーを重ねるうちロマンスが芽生えた頃に、浮気症のデイルに捨てられたアステアがやってきて、クロスビーはアステアにレイノルズを会わせまいとしますが何だかんだでレイノルズはクロスビーに反感を抱いてアステアに引き抜かれる羽目になります。もちろん結末ではレイノルズは真実の愛に気づいてクロスビーのもとへ戻り、男選びに失敗したデイルもアステアのもとに戻ってきてふた組4人が歌い踊ってハッピーエンドになりますが、祝日ごとのショーで場面を刻んでいく構成は作詞・作曲家のバーリンの原案からあったのでしょう。これが非常に上手くいっています。またショー・チューンがそれぞれのシークエンスのモチーフになっているので音楽映画としても無理がない。本作の原題でクロスビーの開業するホテルの名称である"Holiday Inn"が田舎の観光ホテル・チェーンの登録商標になったのは1952年だそうですから、観光ホテル産業の発展にまで本作の影響力はおよんだわけで、また本作のイースター場面のショー・チューン「イースター・パレード」はアステアがジュディ・ガーランドを相手役にしたヒット作『イースター・パレード』'48の主題曲に転用されます。「ホワイト・クリスマス」はアカデミー賞最優秀主題曲賞に輝き、カラー作品のリメイク版『ホワイト・クリスマス』の方を先にテレビで観た人も多いでしょう。クロスビーが歌う「ホワイト・クリスマス」は通算9回シングル発売を重ね、2017にも本作はブロードウェイの舞台劇「ホリデー・イン」として上演されています。クロスビー家の黒人家政婦マミー役のルイス・ビーヴァース、田舎のタクシー(冬は犬ぞりなのが面白い)運転手役の好々爺のアーヴィング・ベーコンと脇役人物も本作のハートウォーミングな人情劇ぶりを引き立て、カラー版リメイクによってリメイク版『ホワイト・クリスマス』に知名度で劣ることになったのが惜しまれます。もっとも本作でもっとも稼いだのは作曲家バーリンだろうと思うと、バーリンの大才と貢献には敬意を表しつつちょっと小憎らしい気もしてきます。