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クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - ゴーズ・クラシック Goes Classic (ZYX, 1994)

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クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - ゴーズ・クラシック Goes Classic (ZYX, 1994)
Recorded at Hambuhren, KS Moldau Musik Studios, 1991 to March 1993
Released by ZYX Music ‎ZYX 20297-2, June 26, 1994
Produced, Arranged and Performed by Klaus Schulze
Programmed by Werner Eggert
(Tracklist)
1. Friedrich Smetana: Die Moldau : https://youtu.be/i34PyDJibHM - 12:00
2. Franz Schubert: Rosamunde : https://youtu.be/RzhHtLYOMEU - 7:53
3. Carl Maria von Weber: Der Freisch?tz (Ouverture) - 10:22
4. Klaus Schulze: Quintet for Lute : https://youtu.be/Yn_zVzPr_Nk - 10:53
5. Johannes Brahms: Hungarian Dance No. 2 - 9:01 *no links
6. Edvard Grieg: Dances From Norway No. 1,2,3 - 10:33 *no links
7. Ludwig van Beethoven: Violin Concerto Op. 61, 1 Movement - 17:18 *no links
[ Personnel ]
Klaus Schulze - electronics
Werner Eggert - computer editing

(Original ZYX Music "Goes Classic" CD Liner Cover & Inner Sheet)

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 1994年にはクラウス・シュルツェは4作のアルバムを発表していますが、5月発売の映画のサウンドトラック・アルバム『ドーデの水車小屋(Le Moulin de Daudet)』の翌月発売されたのが本作『ゴーズ・クラシック』で、9月には『トーテンタグ(Totentag)』が続き、12月のライヴ盤『ワーグナー・ディザスター・ライヴ(Das Wagner Desaster Live)』がこの年のシュルツェのアルバム発表を締めくくります。単独アルバムとしてはこれらはシュルツェの第27作~第30作に当たり、'93年の10枚組未発表音源ボックス・セット『Silver Edition』を1枚ごとに単独アルバムと見なせば第37作~第40作ということになり、さらにシュルツェはやはり未発表音源ボックス・セットを'95年に『Historic Edition』(10枚組)、'97年に『Jubilee Edition』(25枚組)とリリースし、2000年には上記3セットを増補改訂して50枚組『The Ultimate Edition』にまとめ直しており、さらに純粋な新録音の未発表音源ボックス・セット『Contemporary Works I』(10枚組)を2000年に、『Contemporary Works II』(5枚組)を2002年に発表しましたので、体調不良で新作発表が途絶えた2002年~2004年にも『Contemporary Works』からの単品発売が続き、2018年の最新作『Silhouettes』は通算46作、上記のボックス・セットの収録枚数を単独アルバムに数えれば第106作(70歳記念の2017年の前作『Eternal: The 70th Birthday Edition』が通算45作、ボックス・セットを数えて第105作でした)という大変なことになっています。シュルツェはロック系のミュージシャンであり、クラシックやフォークロア、ジャズなど演奏性、編曲による音楽とは異なる創造性を要求されますから、プロ・デビューから48年、ソロ・アーティスト活動46年を続けてこの作品数は驚異的で、'70年代のシュルツェのロマン主義者の末裔的イメージからすればここまで持続的な資質があったとは本人すら予想がつかなかったのではないでしょうか。
 さて、本作はついにシュルツェがドイツと北欧の古典作曲家のクラシック曲をテクノ・アレンジで演奏する、「クラシックちゃんちゃかちゃん」的な開き直ったコンセプトのアルバムです。全7曲中前半4曲の試聴リンクしか引けなかったのは残念ですが、アルバム全体が前半4曲の調子で始終すると思っていただいてけっこうで、世界最初のシンセサイザー・アルバムの大ヒット作『スウィッチト・オン・バッハ(Switched-On Bach)』を思い起こさせ、バッハの曲をシンセサイザーで演奏した'68年10月発売のこのアルバムはアメリカのアルバム・チャート最高位10位(クラシック部門1位)を記録し100万枚以上を売り上げ、クラシック界でも高い評価を受け、グラミー賞3部門を受賞した世界初の(開発初期の)ムーグ・シンセサイザー・アルバムでした。このアルバムを作ったウォルター・カルロス(1939-)は第2作『The Well-Tempered Synthesizer』'69も成功させ、性同一障害に幼児期から悩んでいたカルロスは'68年からホルモン療法を受けていましたが、ロングセラーを続けるアルバムの収益によって'72年には当時ようやく実現化した性転換手術を受け女性になり、女性アーティストのウェンディ・カルロスになります。シュルツェの本作は単音楽器だった初期ムーグ・シンセサイザーからはさすがにポリフォニック・シンセサイザーとシークエンサー、サンプリング・シンセサイザーを駆使した'94年当時最新機材によるものですが、シンセサイザー音色によるクラシック音楽演奏という点ではウォルター・カルロスのアルバムが生み出したジャンルの系譜にあり、これはこれまでシュルツェが禁じ手にしてきたアルバム製作でした。シュルツェ自身の自作曲を1曲含むとはいえここでシュルツェが素材にしているのはロマン派以降の近代クラシックであり、バロック時代のバッハの音楽の抽象性よりはもともと各段に具象性に富んだ音楽で、シュルツェのシンセサイザー・アレンジによる「モルダウ」や「ロザムンド」「魔弾の射手」「ハンガリー舞踏曲」など実に微妙に近代クラシックなのか現代テクノなのか居心地の悪い音響が響いています。メロディーや和声、リズムがこれほど明瞭なシュルツェのアルバムは前代未聞なので、シュルツェのテクノポップ・アルバムとしてはこれほど明快な作品はなく、近代クラシックを素材にしたのはそれこそが狙いだったと思われるほどです。これもお蔵出し10枚組ボックス『Silver Edition』、視覚的なイメージ喚起力に富んだサウンドトラック・アルバム『ドーデの水車小屋』に続いてストレートな近代クラシック曲のシンセサイザー・アルバムは新たな挑戦だったと思われ、ここまで来たら何でもやってやるというシュルツェの思い切りの良さが表れた異色作とも言えますし、このアルバムの製作は結果的には続く『Totentag』『Das Wagner Desaster Live』の布石になることになります。ただし最初に聴くシュルツェのアルバムには極力選ばないでほしい作品でもあって、先に「クラシックちゃんちゃかちゃん」アルバムと揶揄的に評したのは前後作との関連抜きには実際にそう聴こえる作品だからでもあります。ただしシュルツェに思いがけずこうしたアルバムがあるのはそれはそれで面白いので、寄り道企画アルバムとは一概には言えないのです。

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