クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - ドーデの水車小屋 Le Moulin de Daudet (Soundtrack) (Virgin, 1994) Full Album : https://youtu.be/caolnaH5cQk
Recorded at Moldau Musikstudio, March to September 1992
Released by Virgin Records France 7243 8 39594 2 6, May 3, 1994
Produced and Composed by Klaus Schulze
(Tracklist)
1. The Beginning/The Delegates - 4:03
2. Mother Sadness - 3:01
3. The Loss of the Factory - 1:56
4. The Youth - 1:46
5. Friday's Departure - 0:48
6. The Mill of Maitre Cornille - 1:46
7. Maitre Cornille in the Fields - 1:08
8. Folk Dance - 1:27
9. The Discovery of Maitre Cornille's Secret - 1:48
10. Joy of Maitre Cornille/Garden & Youth (Reprise) - 3:14
11. Landscape/Way to the Old People - 2:36
12. Old People's Piano - 3:25
13. Old People's Farewell - 2:00
14. Exodus - 4:50
15. Le Petit Dauphin I - 5:29
16. Le Petit Dauphin II - 1:34
17. First Church Sequence - 1:59
18. Second Church Sequence & Organ - 6:55
19. St. Pierre - 2:15
20. Paradise & Inferno - 5:53
21. Finale - 4:57
(Reissued SPV CD Bonus Track)
22. The Ion Perspective - 15:58
[ Personnel ]
Klaus Schulze - electronics
*
(2005 Revisited Records SPV Reissued CD Front Cover)
この日本未公開のフランス映画のサウンドトラック・アルバムは第26作の『The Dome Event』'92に次ぐ10枚組の未発表音源の集大成アルバム第1弾『Silver Edition』'93の次に単独アルバムとして初めて発表されたもので、未発表録音の集大成アルバムのシリーズは『Silver Edition』は以降10枚組『Historic Edition』'95、25枚組『Jubilee Edition』'97、『Silver~』『Historic~』『Jubilee~』にさらに追加して並べ直した50枚組『The Ultimate Edition』2000、さらに10枚組『Contemporary Works I』2000、5枚組『Contemporary Works II』2002と続き、シュルツェはボックス・セットも収録CDを1枚ごとに単独アルバムと見なしていますから本作はシュルツェ37作目( ! )になり、本作の再発CDのボーナス・トラック曲「The Ion Perspective」は「Ion/Andromeda」と改題されて16分7秒の完全版がシュルツェ2017年のアルバム『Eternal』に収められますが、『Eternal』はシュルツェ105作目( ! ! )のアルバムに数えられることになります。筆者は2000年以前のシュルツェのアルバムはバンド作、プロジェクト作、共同名義作、「The Dark Side of the Moog」シリーズまでほぼ全作品を押さえましたがボックス・セットは限定版だったこともあり『Historic Edition』しか手に入らず、『The Ultimate Edition』を年代順に並べ直して3枚組単位で分割再発売した『La Vie Electronique』全16巻(2009~2015)は『Historic Edition』との重複やまだ入手していない'80年代~'90年代のアルバムを優先する事情もあって二の足を踏み、このシュルツェのアルバム紹介シリーズも'90年代いっぱいのアルバムをもって一旦締めくくるつもりです。ソロ・アルバムを終えてもまだバンド作、プロジェクト作、共同名義作、「The Dark Side of the Moog」シリーズがソロ・アルバムと同数あまりあるのです。
本作と同時期の映画のサウンドトラック音源は直前にリリースされた『Silver Edition』にも収録されているのですが、フランスの映画監督サミー・パヴェル(1944-)によるフランス作家アルフォンス・ドーデ(1840-1897)の伝記映画のサウンドトラック・アルバムの本作は、映画会社の意向や後押しもあったかもしれませんが、単独発売されただけあってひさしぶりに全編スタジオ録音のシュルツェのトータル・アルバムを聴いたと言う感じのするもので、シュルツェのサウンドトラック・アルバムというと'77年に『絶頂人妻ボディ・ラブ』、'85年に『アングスト』がありましたが、映画音楽家としてのシュルツェはきっちり旋律・調性・和声・定型リズムを備えた明快な音楽を作るので、シュルツェの音楽のキャッチーな面、メロディー・メイカーとしての側面をストレートに味わえる作品になっています。『絶頂人妻ボディ・ラブ』がドイツとイタリア合作のポルノ映画、『アングスト』がドイツの猟奇犯罪スリラー映画の映画音楽だったのに今回は19世紀のフランス作家の伝記映画とは意表を突かれますが、フランスはシュルツェの音楽をいち早く高く評価した国で、日本未紹介の監督ですがサミー・パヴェルは'72年監督デビューでシュルツェのソロ・デビューと同年、世代的にもシュルツェより3歳年長なだけですからシュルツェには早くから注目していたのでしょう。『ドーデの水車小屋』はパヴェルの監督第8作ですが、前'93年にヴァン・ゴッホの伝記映画でポルトガルの映画祭の大賞を受賞したのに続く企画だったようです。映画については未紹介なので何とも言えませんが、このシュルツェのサウンドトラック・アルバムを聴くとあまりにダイナミックで、映画が音楽負けはしてはいないか心配になります。案外映画では大半が未使用になったので、映画公開のプロモーションにもなることだし単独アルバムとしてリリースされたのではないかという臆測もしたくなります。サウンドトラック・アルバムを聴いてから映画を観たらほとんど音楽は使われていなかった、というのもよくある例で、音楽は音楽で埋もれさせるには惜しいのでリリースした、という場合も多いのです。映画を観ていないので本作だけ聴いた感想から言えば、これはシュルツェのアルバムとしては具体的なイマジネーション喚起力抜群のなかなかの会心作で、同じ理由で映画音楽としてはやり過ぎなのではないでしょうか。本作はあまりに音楽作品として強力に完結していて、映画音楽としては過剰すぎるように思えるのです。
Recorded at Moldau Musikstudio, March to September 1992
Released by Virgin Records France 7243 8 39594 2 6, May 3, 1994
Produced and Composed by Klaus Schulze
(Tracklist)
1. The Beginning/The Delegates - 4:03
2. Mother Sadness - 3:01
3. The Loss of the Factory - 1:56
4. The Youth - 1:46
5. Friday's Departure - 0:48
6. The Mill of Maitre Cornille - 1:46
7. Maitre Cornille in the Fields - 1:08
8. Folk Dance - 1:27
9. The Discovery of Maitre Cornille's Secret - 1:48
10. Joy of Maitre Cornille/Garden & Youth (Reprise) - 3:14
11. Landscape/Way to the Old People - 2:36
12. Old People's Piano - 3:25
13. Old People's Farewell - 2:00
14. Exodus - 4:50
15. Le Petit Dauphin I - 5:29
16. Le Petit Dauphin II - 1:34
17. First Church Sequence - 1:59
18. Second Church Sequence & Organ - 6:55
19. St. Pierre - 2:15
20. Paradise & Inferno - 5:53
21. Finale - 4:57
(Reissued SPV CD Bonus Track)
22. The Ion Perspective - 15:58
[ Personnel ]
Klaus Schulze - electronics
*
(2005 Revisited Records SPV Reissued CD Front Cover)
この日本未公開のフランス映画のサウンドトラック・アルバムは第26作の『The Dome Event』'92に次ぐ10枚組の未発表音源の集大成アルバム第1弾『Silver Edition』'93の次に単独アルバムとして初めて発表されたもので、未発表録音の集大成アルバムのシリーズは『Silver Edition』は以降10枚組『Historic Edition』'95、25枚組『Jubilee Edition』'97、『Silver~』『Historic~』『Jubilee~』にさらに追加して並べ直した50枚組『The Ultimate Edition』2000、さらに10枚組『Contemporary Works I』2000、5枚組『Contemporary Works II』2002と続き、シュルツェはボックス・セットも収録CDを1枚ごとに単独アルバムと見なしていますから本作はシュルツェ37作目( ! )になり、本作の再発CDのボーナス・トラック曲「The Ion Perspective」は「Ion/Andromeda」と改題されて16分7秒の完全版がシュルツェ2017年のアルバム『Eternal』に収められますが、『Eternal』はシュルツェ105作目( ! ! )のアルバムに数えられることになります。筆者は2000年以前のシュルツェのアルバムはバンド作、プロジェクト作、共同名義作、「The Dark Side of the Moog」シリーズまでほぼ全作品を押さえましたがボックス・セットは限定版だったこともあり『Historic Edition』しか手に入らず、『The Ultimate Edition』を年代順に並べ直して3枚組単位で分割再発売した『La Vie Electronique』全16巻(2009~2015)は『Historic Edition』との重複やまだ入手していない'80年代~'90年代のアルバムを優先する事情もあって二の足を踏み、このシュルツェのアルバム紹介シリーズも'90年代いっぱいのアルバムをもって一旦締めくくるつもりです。ソロ・アルバムを終えてもまだバンド作、プロジェクト作、共同名義作、「The Dark Side of the Moog」シリーズがソロ・アルバムと同数あまりあるのです。
本作と同時期の映画のサウンドトラック音源は直前にリリースされた『Silver Edition』にも収録されているのですが、フランスの映画監督サミー・パヴェル(1944-)によるフランス作家アルフォンス・ドーデ(1840-1897)の伝記映画のサウンドトラック・アルバムの本作は、映画会社の意向や後押しもあったかもしれませんが、単独発売されただけあってひさしぶりに全編スタジオ録音のシュルツェのトータル・アルバムを聴いたと言う感じのするもので、シュルツェのサウンドトラック・アルバムというと'77年に『絶頂人妻ボディ・ラブ』、'85年に『アングスト』がありましたが、映画音楽家としてのシュルツェはきっちり旋律・調性・和声・定型リズムを備えた明快な音楽を作るので、シュルツェの音楽のキャッチーな面、メロディー・メイカーとしての側面をストレートに味わえる作品になっています。『絶頂人妻ボディ・ラブ』がドイツとイタリア合作のポルノ映画、『アングスト』がドイツの猟奇犯罪スリラー映画の映画音楽だったのに今回は19世紀のフランス作家の伝記映画とは意表を突かれますが、フランスはシュルツェの音楽をいち早く高く評価した国で、日本未紹介の監督ですがサミー・パヴェルは'72年監督デビューでシュルツェのソロ・デビューと同年、世代的にもシュルツェより3歳年長なだけですからシュルツェには早くから注目していたのでしょう。『ドーデの水車小屋』はパヴェルの監督第8作ですが、前'93年にヴァン・ゴッホの伝記映画でポルトガルの映画祭の大賞を受賞したのに続く企画だったようです。映画については未紹介なので何とも言えませんが、このシュルツェのサウンドトラック・アルバムを聴くとあまりにダイナミックで、映画が音楽負けはしてはいないか心配になります。案外映画では大半が未使用になったので、映画公開のプロモーションにもなることだし単独アルバムとしてリリースされたのではないかという臆測もしたくなります。サウンドトラック・アルバムを聴いてから映画を観たらほとんど音楽は使われていなかった、というのもよくある例で、音楽は音楽で埋もれさせるには惜しいのでリリースした、という場合も多いのです。映画を観ていないので本作だけ聴いた感想から言えば、これはシュルツェのアルバムとしては具体的なイマジネーション喚起力抜群のなかなかの会心作で、同じ理由で映画音楽としてはやり過ぎなのではないでしょうか。本作はあまりに音楽作品として強力に完結していて、映画音楽としては過剰すぎるように思えるのです。