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クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - ディグ・イット Dig It (Brain, 1980)

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クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - ディグ・イット Dig It (Brain, 1980) Full Album : https://youtu.be/A4RMSv_6z48
Recorded at Klaus Schulze Studio, Hambuhren, May to September 1980
Released by Brain Records / Metronome Musik GmbH Brain 0060.353, October 31, 1980
All music played on the G.D.S. computer
All percussion by F.S. Drum Inc. and G.D.S.
All recordings by G.D.S. digital recording system at Klaus Schulze Studios between May and September '80
Produced, Lyrics and Composed by Klaus Schulze
(Side 1)
A1. Death Of An Analogue - 12:15
A2. Weird Caravan - 5:03
A3. The Looper Isn't A Hooker - 8:17
(Side 2)
B1. Synthasy - 22:56
(SPV CD Bonus Track)
5. Esoteric Goody - 28:21
[ Personnel ]
Klaus Schulze - synthesizer, guitar, drums, keyboards, vocals, engineer, computers
Fred Severloh - drums

(Original Brain "Dig It" LP Liner Cover & Side 1 Label)

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 クラウス・シュルツェのキャリアの分岐点とも言えるため、このアルバムの成立には諸説あり、A1のタイトル「アナログの死(Death Of An Analogue)」、またオリジナルLPのクレジット・ノート通り完全なデジタル録音のコンピューター制作であるというのをそのまま受けとるか、そうした曲名や記載はシュルツェの意思表示で予告状ではあるものの実際には本作の時点では完全なデジタル録音とコンピューターによる音楽制作は実現しておらず、アナログ機材とデジタル機材の両方を使って音楽的にはシュルツェの目指した完全コンピューター制作・デジタル録音に近いアルバムを作り上げたのではないか、とも言われています。本作のゲート・エコーを通したドラムスのサウンドは'80年には最先端のサウンドで、'80年代後半まで主流ポップスをも席巻した流行の音色になりますが、シュルツェの本作の場合ゲート・エコー・ドラムスがまだ実験的な時期の制作・リリースですから流行に追従したものではないにしても'70年代のシュルツェのアルバムよりサウンド面では平凡で古びて聞こえる難があり、それはヴォコーダー処理によるヴォーカルをフィーチャーした葬送曲風のA1が本作の代表曲でもあるだけになおのこと顕著です。『X』『デューン』『ライヴ』と傑作が続き、またエレクトロニクス音楽のミュージシャンであるシュルツェには機材・録音のコンピューター化という時代的課題が課せられていたため、本作の場合は制作過程においては折衷的な手法を採らざるを得なかったと思われます。ただし完成された音楽はシュルツェが意図していた完全コンピューター制作・録音の構想を提示していると受けとるべきなので、ここで矛盾が生じてきます。シュルツェは本作ではポリリズム、ポリトーナルといったこれまでシュルツェ作品で精緻を究めてきた音楽性を意図的に抑制して、突然リズムもトーナリティーもモノフォニックなものに単純化しています。曲想としては『X』『デューン』からの流れですが、『X』や『デューン』にはあふれるようなポリリズム、ポリトーナルの豊かな音楽性がありました。
 つまりシュルツェが意図的にコンピューター制作・録音の実現として完成させた本作『ディグ・イット』は『X』『デューン』と聴き較べるとデモ・ヴァージョンのような簡素な音数にしぼり込まれており、しかもスカスカの音数のその音色もまた一過性の流行的な音色で古くさいことおびただしい、というアルバムになってしまっている。シュルツェは1980年時点でのエレクトロニクス音楽のコンピューター化への移行の限界を知ってしまったので、機材的な限界を意識して非常に未発達な段階の音楽性に内容を簡素化した、と考えられるのです。本作のドラムスのゲート・エコー処理されたサウンドはポリリズムでは混濁してしまいますし、その結果2拍・4拍にアクセントを置いた大味きわまりないドラムスの8ビート・リズムが本作の音楽性を低い次元にとどめてしまっている、という現象が起こっています。これはクラフトワークの方法にも似てシュルツェの資質には明らかに齟齬をきたしており、クラフトワークが機械の音楽という限界をかえってポップアート的な音楽の達成に生かしたようにはシュルツェは音楽を無機質化できず、コンピューター制作・録音に徹底した音楽をイメージすると機材的制約から単純化された音楽という発想の方に行ってしまったのが本作『ディグ・イット』の正体です。発表当時にはこれは新たな時代に対応したスタイルだったでしょうが、本作は才能あふれるシュルツェがあえてその才能を抑制して制作したようなアルバムで、コンピューター制作か否か以前にその才能のスポイルの方に問題があります。これは常に全力を尽くしてきたシュルツェのキャリアでも初めてのことです。

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