クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - ピクチャー・ミュージック Picture Music (Brain, 1975) Full Album : https://youtu.be/tXMP-vjkvgQ
Recorded at Klaus Schulze Studio, Berlin, Autumn 1974
Released by Brain Records, Germany, Brain 1067, January 1975
Produced and All tracks composed by Klaus Schulze.
(French Clementine Disques Edition "Picture Music" LP Front Cover)
(Side 1)
A1. Totem - 23:45
(Side 2)
B1. Mental Door - 23:00
[ Personnel ]
Klaus Schulze - EMS VCS3 synthesizer, ARP Odyssey synthesizer, ARP 2600 synthesizer, Farfisa Professional Duo organ, drums, percussion
*
(Original Brain "Picture Music" LP Liner Cover & Side 1 Label)
本作は近年まで『サイボーグ (Cyborg)』に続くクラウス・シュルツェのサード・アルバムと第6作『ムーンドーン (Moondawn)』'76発売時のシュルツェ自身のプレス・シート発言から思われていたもので、『サイボーグ』の次のアルバムはブレイン・レコーズからの移籍第1弾になる『ブラックダンス (Blackdance)』'74が先にリリースされていましたが、『ムーンドーン』のプレス・シートでは翌'75年に発売された本作の方をシュルツェ自身がサード・アルバムとしていたためにレーベル移籍に伴うリリース順の混乱が起きたと思われていました。シュルツェ公認で行われた2005年からのRevisited Records社からの決定版リマスターCDのSPVシリーズでも本作が『イルリヒト (Irrlicht)』『サイボーグ』に続く3作目のアルバムとしてCD番号が振られています。ところがその後の調査で本作に使われているEMS-VCS3シンセサイザーをシュルツェが購入したのは'74年の夏であり、リリース時期から『ブラックダンス』は'74年5月録音と推定され、一方本作は'74年秋と推定されて録音順と発売順は一致していたことが判明しました。録音の着手は本作の全2曲の方が早かった(それがシュルツェ自身も本作を『サイボーグ』に続く第3作としていた理由だった)かもしれませんが、完成はEMS-VCS3シンセサイザー購入後の'74年秋だったとされるわけです。現在はシュルツェのオフィシャル・サイトでも上記の通りの録音時期データに改訂されていますが、長年本作を第3作、『ブラックダンス』を第4作として聴いてきたリスナーは多く、SPV盤CDでも改訂されていないため従来説通り本作の紹介の方を『ブラックダンス』より先にしました。内容的にも『ブラックダンス』はゲスト・ヴォーカリストを迎え、A面2曲・B面1曲で本作より多彩な曲調と作風を見せたアルバムと見なせるため、タンジェリン・ドリーム~アシュ・ラ・テンペルとかつて在籍したバンドで披露してきたドラムス・プレイがひさびさに、そして最後に聴けるアルバムとして本作のサード・アルバム説は長く信じられていたのです(『ムーンドーン』以降のアルバムでもドラムスは導入されますが、選任プレイヤーを招いた制作になります)。
本作もブレイン盤オリジナル・ジャケット以外にフランス盤ジャケットに用いられたウルス・アルマンによるジャケット・アートがあり、アルマンはさかのぼって『イルリヒト』『サイボーグ』の再発売盤のジャケット・アートもシュルツェからの依頼で手がけ、『ブラックダンス』と第5作『タイムウィンド (Timewind)』'75のジャケットも統一モチーフで描いており、シュルツェの意向でCD発売からはフランス盤に使われたアルマンのジャケットが採用されています(イギリス盤はドイツのブレイン盤とも違う独自ジャケットでした)。本作の特徴はずばり、『イルリヒト』『サイボーグ』の鉛のようなドローン・サウンドからは一転した、ゆったりとした空間性のある、軽やかで抜けの良いアンサンブルが聴かれることでしょう。すべての楽器が混沌とした音の塊になっていたオール/コスミッシュ・レーベルからの2作がアンダーグラウンドな実験音楽臭が漂い重苦しさにあふれていたのとは異なったすっきりしたサウンドで楽器の分離も良く、シュルツェらしい音色選択や構成感の巧妙さに見える冴えは引き継いで、ぐっとメジャー市場に打って出ることが可能な音楽になっており、シュルツェ本来の硬派な面はきっちり崩さずにリズミックなA面曲「Totem」、アンビエントなB面曲「Mental Door」が良い対象をなしていて、どちらの曲も『イルリヒト』『サイボーグ』のドローン・サウンド曲からは予想がつかなかったほどカラフルです。そうした意味では普通に言われる意味で素直に「曲が良い」アルバムになっており、前2作がミュージック・コンクレート作品に属する現代音楽寄りのアルバムだったとしたら、本作はシュルツェがレギュラー参加していたコスミッシュ・レーベルの「Cosmic Jokers」シリーズのセッションのようにロック・レーベルのブレイン・レコーズ移籍を意識したロック・アルバムになっています。前後はともかく本作、『ブラックダンス』の2作でロック・アルバムを作った後の『タイムウィンド』は再びミュージック・コンクレート作品になり、次の『ムーンドーン』ではよりロック色を強めるように'70年代のシュルツェのアルバムは1作ごとに起伏に富んでおり、どのアルバムにも新たな試みと発見があります。それだけにどれか1作だけ聴いただけでは語れないアーティストですが、初めて聴くシュルツェのアルバムにも向いているのは本作や『ムーンドーン』など、ダイナミックなリズムとアンビエントなムードの両方を備えた作品ではないでしょうか。
Recorded at Klaus Schulze Studio, Berlin, Autumn 1974
Released by Brain Records, Germany, Brain 1067, January 1975
Produced and All tracks composed by Klaus Schulze.
(French Clementine Disques Edition "Picture Music" LP Front Cover)
(Side 1)
A1. Totem - 23:45
(Side 2)
B1. Mental Door - 23:00
[ Personnel ]
Klaus Schulze - EMS VCS3 synthesizer, ARP Odyssey synthesizer, ARP 2600 synthesizer, Farfisa Professional Duo organ, drums, percussion
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(Original Brain "Picture Music" LP Liner Cover & Side 1 Label)
本作は近年まで『サイボーグ (Cyborg)』に続くクラウス・シュルツェのサード・アルバムと第6作『ムーンドーン (Moondawn)』'76発売時のシュルツェ自身のプレス・シート発言から思われていたもので、『サイボーグ』の次のアルバムはブレイン・レコーズからの移籍第1弾になる『ブラックダンス (Blackdance)』'74が先にリリースされていましたが、『ムーンドーン』のプレス・シートでは翌'75年に発売された本作の方をシュルツェ自身がサード・アルバムとしていたためにレーベル移籍に伴うリリース順の混乱が起きたと思われていました。シュルツェ公認で行われた2005年からのRevisited Records社からの決定版リマスターCDのSPVシリーズでも本作が『イルリヒト (Irrlicht)』『サイボーグ』に続く3作目のアルバムとしてCD番号が振られています。ところがその後の調査で本作に使われているEMS-VCS3シンセサイザーをシュルツェが購入したのは'74年の夏であり、リリース時期から『ブラックダンス』は'74年5月録音と推定され、一方本作は'74年秋と推定されて録音順と発売順は一致していたことが判明しました。録音の着手は本作の全2曲の方が早かった(それがシュルツェ自身も本作を『サイボーグ』に続く第3作としていた理由だった)かもしれませんが、完成はEMS-VCS3シンセサイザー購入後の'74年秋だったとされるわけです。現在はシュルツェのオフィシャル・サイトでも上記の通りの録音時期データに改訂されていますが、長年本作を第3作、『ブラックダンス』を第4作として聴いてきたリスナーは多く、SPV盤CDでも改訂されていないため従来説通り本作の紹介の方を『ブラックダンス』より先にしました。内容的にも『ブラックダンス』はゲスト・ヴォーカリストを迎え、A面2曲・B面1曲で本作より多彩な曲調と作風を見せたアルバムと見なせるため、タンジェリン・ドリーム~アシュ・ラ・テンペルとかつて在籍したバンドで披露してきたドラムス・プレイがひさびさに、そして最後に聴けるアルバムとして本作のサード・アルバム説は長く信じられていたのです(『ムーンドーン』以降のアルバムでもドラムスは導入されますが、選任プレイヤーを招いた制作になります)。
本作もブレイン盤オリジナル・ジャケット以外にフランス盤ジャケットに用いられたウルス・アルマンによるジャケット・アートがあり、アルマンはさかのぼって『イルリヒト』『サイボーグ』の再発売盤のジャケット・アートもシュルツェからの依頼で手がけ、『ブラックダンス』と第5作『タイムウィンド (Timewind)』'75のジャケットも統一モチーフで描いており、シュルツェの意向でCD発売からはフランス盤に使われたアルマンのジャケットが採用されています(イギリス盤はドイツのブレイン盤とも違う独自ジャケットでした)。本作の特徴はずばり、『イルリヒト』『サイボーグ』の鉛のようなドローン・サウンドからは一転した、ゆったりとした空間性のある、軽やかで抜けの良いアンサンブルが聴かれることでしょう。すべての楽器が混沌とした音の塊になっていたオール/コスミッシュ・レーベルからの2作がアンダーグラウンドな実験音楽臭が漂い重苦しさにあふれていたのとは異なったすっきりしたサウンドで楽器の分離も良く、シュルツェらしい音色選択や構成感の巧妙さに見える冴えは引き継いで、ぐっとメジャー市場に打って出ることが可能な音楽になっており、シュルツェ本来の硬派な面はきっちり崩さずにリズミックなA面曲「Totem」、アンビエントなB面曲「Mental Door」が良い対象をなしていて、どちらの曲も『イルリヒト』『サイボーグ』のドローン・サウンド曲からは予想がつかなかったほどカラフルです。そうした意味では普通に言われる意味で素直に「曲が良い」アルバムになっており、前2作がミュージック・コンクレート作品に属する現代音楽寄りのアルバムだったとしたら、本作はシュルツェがレギュラー参加していたコスミッシュ・レーベルの「Cosmic Jokers」シリーズのセッションのようにロック・レーベルのブレイン・レコーズ移籍を意識したロック・アルバムになっています。前後はともかく本作、『ブラックダンス』の2作でロック・アルバムを作った後の『タイムウィンド』は再びミュージック・コンクレート作品になり、次の『ムーンドーン』ではよりロック色を強めるように'70年代のシュルツェのアルバムは1作ごとに起伏に富んでおり、どのアルバムにも新たな試みと発見があります。それだけにどれか1作だけ聴いただけでは語れないアーティストですが、初めて聴くシュルツェのアルバムにも向いているのは本作や『ムーンドーン』など、ダイナミックなリズムとアンビエントなムードの両方を備えた作品ではないでしょうか。