Walt Dickerson & Sun Ra - Visions (Steeplechase, 1979) Full Album : https://youtu.be/cqrVpT_Kl9E
Recorded on July 11th. 1978
Released by Steeplechase Records SCS 1126, 1979
(Side A)
A1. Astro (Dickerson) - 7:52
A2. Utopia (Dickerson) - 8:10
A3. Visions (Dickerson) - 2:50
(Side B)
B1. Constructive Neutrons (Dickerson) - 10:13
B2. Space Dance (Dickerson) - 8:10
(Only on CD version)
add1. Light Years (Dickerson) : https://youtu.be/3cHjgYDdVLo - 15:21
add2. Prophecy (Dickerson) - 9:06 (no links)
[ Personnel ]
Walt Dickerson - vibraphone
Sun Ra - piano
*
(Original Steeplechase "Visions" LP Liner Cover & Side A Label)
サン・ラがルロイ・ジョーンズ劇団との『Black Myth』1968以来久しぶりにアーケストラ以外のパーソネルで録音したアルバムがヴィブラフォン奏者ウォルト・ディッカーソン(1928-2008)と連名のデュエット作品『Visions』でした。ディッカーソンは60年代初頭からアーケストラのメンバーと共演しており、サン・ラのデビュー・アルバム『Jazz By Sun Ra』1956やニューヨーク進出作『The Futuristic Sounds of Sun Ra』1961など重要な転機にプロデュースを買って出てくれた黒人フリー・プロデューサーのトム・ウィルソンのプロデュースによるディッカーソンのアルバム『Impressions of a Patch of Blue』1966(1965年録音)でもサン・ラがカルテットのメンバーとして参加しています。トム・ウィルソンは同期にサイモン&ガーファンクルの「Sound of Silence」やボブ・ディラン「Like a Rolling Stone」、フランク・ザッパの『Freak Out!』やアニマルズの『Animalisms』、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビュー・アルバム(名義のみアンディ・ウォホール)を手がけており、そういうとんでもないヒット・メイカーでありながらアンダーグラウンドな音楽にも尽力していた人で、不人気ジャズマンのディッカーソンはサン・ラ参加の同作から1975年のカムバックまで10年あまりシーンから引退していました。
復帰後のディッカーソンはヨーロッパと日本での伝説的な人気から多作なジャズマンになり、サン・ラとの再会セッションが企画されたわけです。この全曲ディッカーソン作曲の『Visions』はソロ・ヴィブラフォン演奏によるアルバム構想で作曲されていたのではないかと思われ、ひとしきりディッカーソンのヴィブラフォンが完全ソロ演奏でテーマとインプロヴィゼーションを披露してからサン・ラのソロ・ピアノ演奏がディッカーソンに返礼し、徐々にデュエット演奏になってエンディングを迎える、という演奏フォーマットになっています。アレンジ込みの作曲だからかディッカーソンのテクニシャンぶりは壮絶で、ジャズのヴィブラフォンというとウディ・ハーマンやミルト・ジャクソンを思い浮かべていると本当にこれを人間がヴィブラフォンで生演奏しているのか、と生唾を飲み込むような超高速フレーズが駆けめぐり、しかも正確でクールこの上ないサウンドで表面上はむしろ静謐な印象すら受けます。それに応えるサン・ラもディッカーソンのコンセプトに呼応した見事な精密点描的演奏で、ベーシストもドラマーもいないヴィブラフォンとピアノのデュオだからこそできる深海のように澄明かつ水圧の高いサウンドが実現しています。連名とはいえサン・ラではなくあくまでディッカーソンのアルバムですが、これでピアノがやはりディッカーソンと縁の深いアンドリュー・ヒルだったらもっと澱んだ、切れのよくないサウンドのアルバムになっていたでしょう。ヒルのファンでもある筆者でもそう思います。
Recorded on July 11th. 1978
Released by Steeplechase Records SCS 1126, 1979
(Side A)
A1. Astro (Dickerson) - 7:52
A2. Utopia (Dickerson) - 8:10
A3. Visions (Dickerson) - 2:50
(Side B)
B1. Constructive Neutrons (Dickerson) - 10:13
B2. Space Dance (Dickerson) - 8:10
(Only on CD version)
add1. Light Years (Dickerson) : https://youtu.be/3cHjgYDdVLo - 15:21
add2. Prophecy (Dickerson) - 9:06 (no links)
[ Personnel ]
Walt Dickerson - vibraphone
Sun Ra - piano
*
(Original Steeplechase "Visions" LP Liner Cover & Side A Label)
サン・ラがルロイ・ジョーンズ劇団との『Black Myth』1968以来久しぶりにアーケストラ以外のパーソネルで録音したアルバムがヴィブラフォン奏者ウォルト・ディッカーソン(1928-2008)と連名のデュエット作品『Visions』でした。ディッカーソンは60年代初頭からアーケストラのメンバーと共演しており、サン・ラのデビュー・アルバム『Jazz By Sun Ra』1956やニューヨーク進出作『The Futuristic Sounds of Sun Ra』1961など重要な転機にプロデュースを買って出てくれた黒人フリー・プロデューサーのトム・ウィルソンのプロデュースによるディッカーソンのアルバム『Impressions of a Patch of Blue』1966(1965年録音)でもサン・ラがカルテットのメンバーとして参加しています。トム・ウィルソンは同期にサイモン&ガーファンクルの「Sound of Silence」やボブ・ディラン「Like a Rolling Stone」、フランク・ザッパの『Freak Out!』やアニマルズの『Animalisms』、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビュー・アルバム(名義のみアンディ・ウォホール)を手がけており、そういうとんでもないヒット・メイカーでありながらアンダーグラウンドな音楽にも尽力していた人で、不人気ジャズマンのディッカーソンはサン・ラ参加の同作から1975年のカムバックまで10年あまりシーンから引退していました。
復帰後のディッカーソンはヨーロッパと日本での伝説的な人気から多作なジャズマンになり、サン・ラとの再会セッションが企画されたわけです。この全曲ディッカーソン作曲の『Visions』はソロ・ヴィブラフォン演奏によるアルバム構想で作曲されていたのではないかと思われ、ひとしきりディッカーソンのヴィブラフォンが完全ソロ演奏でテーマとインプロヴィゼーションを披露してからサン・ラのソロ・ピアノ演奏がディッカーソンに返礼し、徐々にデュエット演奏になってエンディングを迎える、という演奏フォーマットになっています。アレンジ込みの作曲だからかディッカーソンのテクニシャンぶりは壮絶で、ジャズのヴィブラフォンというとウディ・ハーマンやミルト・ジャクソンを思い浮かべていると本当にこれを人間がヴィブラフォンで生演奏しているのか、と生唾を飲み込むような超高速フレーズが駆けめぐり、しかも正確でクールこの上ないサウンドで表面上はむしろ静謐な印象すら受けます。それに応えるサン・ラもディッカーソンのコンセプトに呼応した見事な精密点描的演奏で、ベーシストもドラマーもいないヴィブラフォンとピアノのデュオだからこそできる深海のように澄明かつ水圧の高いサウンドが実現しています。連名とはいえサン・ラではなくあくまでディッカーソンのアルバムですが、これでピアノがやはりディッカーソンと縁の深いアンドリュー・ヒルだったらもっと澱んだ、切れのよくないサウンドのアルバムになっていたでしょう。ヒルのファンでもある筆者でもそう思います。