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クラフトヴェルク Kraftwerk - ラルフ&フローリアン Ralf und Florian (Philips, 1973)

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クラフトヴェルク Kraftwerk - ラルフ&フローリアン Ralf und Florian (Philips, 1973) Full Album : https://youtu.be/YMdd1B9Q1wg
Recorded & mixed at Kraftwerk-Studio, Dusseldorf; Cornet Studio and Rhenus Studio, Cologne and Studio 70, Munich, May - July 1973
Released by Philips Records 6305 197, November 1973
Engineered by Conrad Plank
Music, Produced, Cover Design by F. Schneider & R. Hutter
(Side One)
A1. Elektrisches Roulette - 4:19
A2. Tongebirge - 2:50
A3. Kristallo - 6:18
A4. Heimatklange - 3:45
(Side Two)
B1. Tanzmusik - 6:34
B2. Ananas Symphonie - 13:55
[ Kraftwerk ]
Florian Schneider & Ralf Hutter - vocals, keyboards, strings, wind (wind instruments), drums, electronics, performer (realisation)

(Original Philips "Ralf und Florian" Liner Cover & Side One Label)

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 まずは本作付属の8ページのカラー・コミック・ブックレットをどうぞ。

(Original Philips "Ralf und Florian" Insert 8 Pages Comic Booklet)

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 何ともふざけたオマケで、これはシュナイダーとヒュッターがおたがい彼女連れで遊んで過ごした絵日記を友達に描いてもらったものだそうで、その時の楽しい思い出が本作の制作背景になっているのだそうです。デビュー作、第2作とクラフトヴェルクのアルバムは無駄にダブルジャケットだったのですが、より実験的になってデビュー作後のヘヴィ・ロックの大受けライヴとは大違いの内容になったセカンド・アルバムも好セールスを記録し、本作ではついに前作のA1にちなんでクリングクラング・プロダクションという自分たちの事務所を構えて専用スタジオまで作り、前2作のエンジニア兼プロデューサーのコニー・プランクは雇われエンジニアに格下げされてしまいました。本作でも基本的にシュナイダーがフルート時々ヴァイオリン、ヒュッターがオルガン時々ギターのはずですが、演奏楽器クレジットも二人まとめて載せてありどちらが何を演奏してようとかまわないじゃないかという姿勢が見えます。ドラムマシーンの比重が高まり本作では生演奏のドラムスをアクセントにダビングして躍動感を出しており、テープループの逆回転によるリズム・トラックやエレクトリック・ピアノ(クラヴィネット?)のチェンバロ的使用によってよりリズミカルになり、収録曲で唯一バラード演奏と言えるのが深いエコーをかけたピアノ、フルートが反復フレーズを奏でて淡いヴォーカルが乗るA4だけですが、他5曲はイントロ部分はルバート・テンポでも1分とせずイン・テンポの快適なリズムになり、A1~A3もそれぞれ異なる楽器にリズムをリードさせていますが、B面の2曲は生演奏楽器(ドラムス、パーカッション含む)とドラムマシーンによる生演奏テクノポップに到達しています。ここでフルートやオルガン、ギター、グロッケン、チャイムなどによる周期的リフレインをシンセサイザーとシークエンサーによる同期で再現すればそのままテクノポップになるので、B1はとてもそうは聞こえないですがリズムはサンバ、次にヴォコーダーでタイトルがつぶやかれるB2(「ワナナッショイ」と聞こえますが「アナナ・シンフォニア」、つまり「バナナ交響曲」です)はハワイアン音階まで現れ、前半部の終わりにはまだ効果音の次元のシンセサイザー使用ですが、波の音まで入っています。波の音が引くと異なるリズム・パターンが現れ、ディレイ・エフェクトによってスチール・ギター風に加工されたギター音にヴァイオリンのピチカートによると思われるリズム・カッティングが絡み、後半の展開ではドラムマシーンやドラムス抜きに全体的なディレイ音が反復リズムを生んでいます。
 そうした具合にリズムを楽曲の前提にした点で本作ははっきりとテクノポップのクラフトワークを予告するクラフトヴェルクのアルバムになっていて、A1では「Elektrisches Roulette」のタイトル通りにオルガンがルーレットの音を模倣した後1分目からは生ドラムスがフィーチャーされますが、これが元ピンチヒッター・メンバーのミヒャエル・ローターとクラウス・ディンガーが独立して結成したノイ!のスタイルに接近しており、ノイ!の場合ディンガーが専任ドラマーですから当たり前に最初からそのスタイルだったのに対して、クラフトヴェルクの二人は改めてロックのリズムの借用という手法に気づいてコラージュしてみせたという転倒があるのがクラフトヴェルクの特異性でしょう。ロック・ミュージシャンという自覚などはなからなかったシュナイダーとヒュッターが単純な8ビートの可能性に気づいたのは常識的には本末転倒ですが、クラフトヴェルクが8ビートを演るのはシュナイダーとヒュッターにとっては倒錯だったのがテクノポップのいかもの性になっていて、天然8ビートのノイ!とは見かけは似ていても発想はまるで逆だったわけです。この曲ではイントロのルーレット・フレーズがテープ・ループの早回しによってリズム・トラックになっており、オルガンがホリゾンタルなオスティナートを弾いてひっきりなしに金属パーカッション音が駆けめぐりますが、肝心の生ドラムスについてはどちらが叩いているのか演奏が進むにつれ焼け気味なドラミングになっているのはご愛嬌でしょう。A2はシュナイダーお得意のデビュー作のA1「Ruckzuck」路線のフルートのディレイによる反復リズムの曲で、A3はヒュッターの演奏と思われるエレクトリック・ピアノ(クラヴィネット?)のチェンバロ的使用によるループ・フレーズの曲で、このA2、A3とも少し年長で先輩のタンジェリン・ドリームやクラウス・シュルツェのシークエンサー使用よりも生楽器で先に試していた分、何しろ生楽器の生演奏で自分たちを機械化してみる試みを経てきた上でのシンセサイザーへの応用ですから、クラフトヴェルクのシークエンサー使用は容赦なく無機的で機械的になったのでしょう。ノイ!のマシーン・ビートはディンガーのベタな8ビート感覚から自然に生じてきたもので(プロデューサーのプランクに引き出されたものかもしれませんが)肉体的な裏づけが感じられるものでしたし、タンジェリンやシュルツェもシークエンサーのパターンの上に音楽的なドラマ性のある起承転結を盛りこんでいたのです。しかしクラフトヴェルク、ワールドワイドな存在になりシュナイダーとヒッターが真のファースト・アルバムとする次作『Autobahn』からはクラフトワークと呼ぶべきですが、クラフトワークの音楽には起承転結はなく起承起承起承起承起承起承起承起承で任意の流さだけヤマもなくキメもない(これもノイ!とは逆コースの発見ですが)リズム音響だけが反復されていくだけです。そしてクラフトワークの音楽はディスコ・ミュージックを生み、ファンクと合体してヒップホップになり、ハウスになり、テクノになりました。初期3作は実験的ミニマム・フリー・ロックが音色別に解体されて既成リズムのパターンに自在にペーストしていく方法にたどり着くまでの過程をくっきり段階ごとに作品化した現代ポップスの里程標です。次作『Autobahn』からのクラフトワークは1作ごとに金字塔を打ち立てていくことになるのです。

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