Recorded & mixed at Kraftwerk-Studio, Dusseldorf; Cornet Studio and Rhenus Studio, Cologne and Studio 70, Munich, May - July 1973
Released by Philips Records 6305 197, November 1973
Engineered by Conrad Plank
Music, Produced, Cover Design by F. Schneider & R. Hutter
(Side One)
A1. Elektrisches Roulette - 4:19
A2. Tongebirge - 2:50
A3. Kristallo - 6:18
A4. Heimatklange - 3:45
(Side Two)
B1. Tanzmusik - 6:34
B2. Ananas Symphonie - 13:55
[ Kraftwerk ]
Florian Schneider & Ralf Hutter - vocals, keyboards, strings, wind (wind instruments), drums, electronics, performer (realisation)
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(Original Philips "Ralf und Florian" Liner Cover & Side One Label)
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(Original Philips "Ralf und Florian" Insert 8 Pages Comic Booklet)
そうした具合にリズムを楽曲の前提にした点で本作ははっきりとテクノポップのクラフトワークを予告するクラフトヴェルクのアルバムになっていて、A1では「Elektrisches Roulette」のタイトル通りにオルガンがルーレットの音を模倣した後1分目からは生ドラムスがフィーチャーされますが、これが元ピンチヒッター・メンバーのミヒャエル・ローターとクラウス・ディンガーが独立して結成したノイ!のスタイルに接近しており、ノイ!の場合ディンガーが専任ドラマーですから当たり前に最初からそのスタイルだったのに対して、クラフトヴェルクの二人は改めてロックのリズムの借用という手法に気づいてコラージュしてみせたという転倒があるのがクラフトヴェルクの特異性でしょう。ロック・ミュージシャンという自覚などはなからなかったシュナイダーとヒュッターが単純な8ビートの可能性に気づいたのは常識的には本末転倒ですが、クラフトヴェルクが8ビートを演るのはシュナイダーとヒュッターにとっては倒錯だったのがテクノポップのいかもの性になっていて、天然8ビートのノイ!とは見かけは似ていても発想はまるで逆だったわけです。この曲ではイントロのルーレット・フレーズがテープ・ループの早回しによってリズム・トラックになっており、オルガンがホリゾンタルなオスティナートを弾いてひっきりなしに金属パーカッション音が駆けめぐりますが、肝心の生ドラムスについてはどちらが叩いているのか演奏が進むにつれ焼け気味なドラミングになっているのはご愛嬌でしょう。A2はシュナイダーお得意のデビュー作のA1「Ruckzuck」路線のフルートのディレイによる反復リズムの曲で、A3はヒュッターの演奏と思われるエレクトリック・ピアノ(クラヴィネット?)のチェンバロ的使用によるループ・フレーズの曲で、このA2、A3とも少し年長で先輩のタンジェリン・ドリームやクラウス・シュルツェのシークエンサー使用よりも生楽器で先に試していた分、何しろ生楽器の生演奏で自分たちを機械化してみる試みを経てきた上でのシンセサイザーへの応用ですから、クラフトヴェルクのシークエンサー使用は容赦なく無機的で機械的になったのでしょう。ノイ!のマシーン・ビートはディンガーのベタな8ビート感覚から自然に生じてきたもので(プロデューサーのプランクに引き出されたものかもしれませんが)肉体的な裏づけが感じられるものでしたし、タンジェリンやシュルツェもシークエンサーのパターンの上に音楽的なドラマ性のある起承転結を盛りこんでいたのです。しかしクラフトヴェルク、ワールドワイドな存在になりシュナイダーとヒッターが真のファースト・アルバムとする次作『Autobahn』からはクラフトワークと呼ぶべきですが、クラフトワークの音楽には起承転結はなく起承起承起承起承起承起承起承起承で任意の流さだけヤマもなくキメもない(これもノイ!とは逆コースの発見ですが)リズム音響だけが反復されていくだけです。そしてクラフトワークの音楽はディスコ・ミュージックを生み、ファンクと合体してヒップホップになり、ハウスになり、テクノになりました。初期3作は実験的ミニマム・フリー・ロックが音色別に解体されて既成リズムのパターンに自在にペーストしていく方法にたどり着くまでの過程をくっきり段階ごとに作品化した現代ポップスの里程標です。次作『Autobahn』からのクラフトワークは1作ごとに金字塔を打ち立てていくことになるのです。