ジャッキー・マクリーン Jackie McLean - センチメンタル・ジャーニー Sentimental Journey (Ben Homer, Bud Green, Les Brown) (from the album "4, 5 and 6", Prestige PRLP 7048, 1956) : https://youtu.be/8n2C9ybcjEQ - 9:56
Recorded at The Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey, July 13, 1956
Released by Prestige Records PRLP 7048, November 1956
[ Personnel ]
Jackie McLean - alto sax
Mal Waldron - piano
Doug Watkins - bass
Art Taylor - drums
ジャッキー・マクリーン(1931-2006)はアメリカ本国では白人ジャーナリズムからはインディー・レーベルの二流アルト奏者と見られていた時期が長く、黒人ファンの間では人気があり、ようやく認知度が高まったのはブルー・ノート・レーベル移籍後にフリー・ジャズに触発された意欲作『Let Freedom Ring』'62発表後でしたが、日本ではこの「センチメンタル・ジャーニー」を巻頭曲とするアルバム『4, 5 and 6』が本国発売直後からジャズ喫茶で大評判になり'61年には世界のどの国にも先駆けて日本盤が発売されベストセラーになっています。『4, 5 and 6』はマクリーンのアルバム第2作で、元マイルス・デイヴィス・クインテット('52~)、元ジョージ・ウォーリトン・クインテット('55)のマクリーンは'56年にはチャールズ・ミンガス・ジャズ・ワークショップに加入しアルバム『直立猿人』'56に参加、翌年にはアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズに加入します。マイルス、メッセンジャーズ、ミンガスの3つを渡り歩いたジャズマンはマクリーンしかいないのも興味深いところです。
この曲はヒッチコックの『知りすぎていた男』'56の主演でもお馴染みドリス・デイが'45年の終戦直後にレス・ブラウン楽団で歌ったレコードがオリジナルで、ミリオンセラーを記録する大ヒット曲になりましたが、ジャズでは特にスタンダード曲になったわけではなく、マクリーンのこのヴァージョン以外は歌手によるポピュラー・カヴァーはありますがインストルメンタルによるジャズ・カヴァーはこれといったものはなく、マクリーンも特に愛奏曲としていたわけではありませんでした。ちなみにこの曲のタイトルの由来である『Sentimental Journey』1768とは遊び人で知られたイギリス18世紀の牧師・小説家のロレンス・スターン(1713-1768)の遊興小説で、スターンは夏目漱石にもっとも影響を与えたイギリスの古典作家でもあり、「Sentimental」とは感傷ではなくイギリス流の風流を指しており、内容も漱石の『草枕』のような風流心境小説です。
では他にこの曲のジャズ・カヴァーはないかと言うと、セシル・テイラー(1929-)が演奏しています。ただしタイトルは変えてあり(「Sentimental Journey」をもじったタイトルです)、テイラーのオリジナルとなっています。ビ・バップ流のポップス曲の改作ですが、オリジナル曲のメロディーをバラバラに解体・再構成し、小節数だけを合わせてコード進行には合わせたり外したりと原曲の「ミードミード、ミードミードミード」という動機(モチーフ)に含まれる3度音程とリズム・パターンだけによってまったく異なる、しかし小節数は同一で使われている音程は同じ、という手法で、現代音楽の12音階作曲法/セリー作曲法の機械的な法則性でもない、自由な言葉遊びのようなアドリブによるジャズになっています。セシル・テイラー以前にはレニー・トリスターノくらいしか試みるジャズマンなかった発想です。本作参加だけで夭逝したメンバー、アール・グリフィスの電動式ヴィブラートを切った鉄琴のようなヴィブラフォンも効いています。この曲が「Sentimental Journey」の改作なのはあまり話題にされませんが、こういう隠れた改作を見つけるのもジャズの面白みというところです。
Cecil Taylor - Excursion on a Wobbly Rail (Cecil Taylor) (from the album "Looking Ahead !", Contemporary Records S-7562, 1959) : https://youtu.be/Hn5FCq4ghvE - 9:04
Recorded at Nola's Penthouse Studios, NYC, June 9, 1958
[ Personnel ]
Cecil Taylor - piano
Buell Neidlinger - bass
Denis Charles - drums
Earl Griffith - vibes
Recorded at The Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey, July 13, 1956
Released by Prestige Records PRLP 7048, November 1956
[ Personnel ]
Jackie McLean - alto sax
Mal Waldron - piano
Doug Watkins - bass
Art Taylor - drums
ジャッキー・マクリーン(1931-2006)はアメリカ本国では白人ジャーナリズムからはインディー・レーベルの二流アルト奏者と見られていた時期が長く、黒人ファンの間では人気があり、ようやく認知度が高まったのはブルー・ノート・レーベル移籍後にフリー・ジャズに触発された意欲作『Let Freedom Ring』'62発表後でしたが、日本ではこの「センチメンタル・ジャーニー」を巻頭曲とするアルバム『4, 5 and 6』が本国発売直後からジャズ喫茶で大評判になり'61年には世界のどの国にも先駆けて日本盤が発売されベストセラーになっています。『4, 5 and 6』はマクリーンのアルバム第2作で、元マイルス・デイヴィス・クインテット('52~)、元ジョージ・ウォーリトン・クインテット('55)のマクリーンは'56年にはチャールズ・ミンガス・ジャズ・ワークショップに加入しアルバム『直立猿人』'56に参加、翌年にはアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズに加入します。マイルス、メッセンジャーズ、ミンガスの3つを渡り歩いたジャズマンはマクリーンしかいないのも興味深いところです。
この曲はヒッチコックの『知りすぎていた男』'56の主演でもお馴染みドリス・デイが'45年の終戦直後にレス・ブラウン楽団で歌ったレコードがオリジナルで、ミリオンセラーを記録する大ヒット曲になりましたが、ジャズでは特にスタンダード曲になったわけではなく、マクリーンのこのヴァージョン以外は歌手によるポピュラー・カヴァーはありますがインストルメンタルによるジャズ・カヴァーはこれといったものはなく、マクリーンも特に愛奏曲としていたわけではありませんでした。ちなみにこの曲のタイトルの由来である『Sentimental Journey』1768とは遊び人で知られたイギリス18世紀の牧師・小説家のロレンス・スターン(1713-1768)の遊興小説で、スターンは夏目漱石にもっとも影響を与えたイギリスの古典作家でもあり、「Sentimental」とは感傷ではなくイギリス流の風流を指しており、内容も漱石の『草枕』のような風流心境小説です。
では他にこの曲のジャズ・カヴァーはないかと言うと、セシル・テイラー(1929-)が演奏しています。ただしタイトルは変えてあり(「Sentimental Journey」をもじったタイトルです)、テイラーのオリジナルとなっています。ビ・バップ流のポップス曲の改作ですが、オリジナル曲のメロディーをバラバラに解体・再構成し、小節数だけを合わせてコード進行には合わせたり外したりと原曲の「ミードミード、ミードミードミード」という動機(モチーフ)に含まれる3度音程とリズム・パターンだけによってまったく異なる、しかし小節数は同一で使われている音程は同じ、という手法で、現代音楽の12音階作曲法/セリー作曲法の機械的な法則性でもない、自由な言葉遊びのようなアドリブによるジャズになっています。セシル・テイラー以前にはレニー・トリスターノくらいしか試みるジャズマンなかった発想です。本作参加だけで夭逝したメンバー、アール・グリフィスの電動式ヴィブラートを切った鉄琴のようなヴィブラフォンも効いています。この曲が「Sentimental Journey」の改作なのはあまり話題にされませんが、こういう隠れた改作を見つけるのもジャズの面白みというところです。
Cecil Taylor - Excursion on a Wobbly Rail (Cecil Taylor) (from the album "Looking Ahead !", Contemporary Records S-7562, 1959) : https://youtu.be/Hn5FCq4ghvE - 9:04
Recorded at Nola's Penthouse Studios, NYC, June 9, 1958
[ Personnel ]
Cecil Taylor - piano
Buell Neidlinger - bass
Denis Charles - drums
Earl Griffith - vibes