Recorded at California, around August, 1971
Originally Released by El Saturn Records - ESR 200, 1972
All Written & Arranged by Sun Ra.
(Side A)
A1. Universe In Blue Part I - 4:10
A2. Universe In Blue Part II - 10:00
(Side B)
B1. Blackman - 2:21
B2. In A Blue Mood - 7:11
B3. Another Shade Of Blue - 11:18
[ Sun Ra And His Blue Universe Arkestra ]
Sun Ra - intergalactic space organ (Farfisa organ)
Akh Tal Ebah, Kwame Hadi - trumpet
Danny Davis - alto sax, clarinet
Marshall Allen - alto sax, piccolo flute, flute
John Gilmore - tenor sax
Pat Patrick - baritone sax
Danny Thompson- baritone sax, flute
Eloe Omoe - bass clarinet, piccolo
Alzo Wright - cello
Lex Humphries - percussion
June Tyson - vocals
前回ご紹介した『Nuits de la Fondation Maeght』は1970年8月のフランスでのライヴ・アルバムでしたが、ちょうど1年後の1971年8月のカリフォルニア(日付、会場不明)のライヴ・アルバムになる本作『Universe In Blue』の間に1970年10月の西ドイツでのライヴ・アルバム『It's After the End of the World』(Polygram/MSP, 1971)があります。二つの会場のコンサートからベスト・テイクを厳選され、またメジャーのポリドール/ポリグラム傘下のMSPレーベルから発売されたため、発表時から名作と名高いアルバムです。邦題は『世紀の終焉』で、日本盤もLP~CD時代を通して発売されておりぜひご紹介したいのですが、残念ながら音源リンクが引けません。なお同作は1998年に未収録曲を合わせた2回のコンサートのコンプリート版『Black Myth/Out in Space』としても発売されました。『世紀の終焉』が入手しやすくアーケストラの演奏もまとまりとバランスが良いアルバムなのに較べて『Nuits de la Fondation Maeght』は勢い任せな演奏に面白みがありますが現在は版権不明で廃盤状態が続いており、また今回ご紹介する『Universe In Blue』もライヴ・アルバムながら初演曲にコンセプトを持たせた特殊な作品で、やはり『Nuits de la Fondation Maeght』同様海賊盤CDが出回る状態が長く続き、ようやく本家サターン・レーベルから未収録曲・未編集テイクを含んだ完全版が正規リリース、と思いきやダウンロード販売のみ、ということになりました。
アーケストラの場合どんな編成とアレンジ、パフォーマンスが標準的とは決め難いのですが、国際的ジャズ・フェスティヴァルでの公演『世紀の終焉』は檜舞台だけあってアーケストラの真骨頂を見せようという意気込みがあり、事実この1970年のヨーロッパ・ツアーの成功からサン・ラ・アーケストラは毎年ヨーロッパ・ツアーに招聘されるバンドになります。ヨーロッパのジャズ・リスナーがアーケストラのリピーターになった記念すべきライヴがとらえられているのがアルバム『世紀の終焉』であり、サン・ラのアルバム史上でも根幹をなす作品です。『Nuits de la Fondation Maeght』や本作『Universe In Blue』は『世紀の終焉』に較べると広げた枝葉に相当するアルバムであり、『Nuits~』は作品性よりも未整理なままでざっくばらんに記録されたライヴ音源であれば、『Universe~』はこれまでのサン・ラならスタジオ録音で制作したようなコンセプト・アルバムになりました。この時期のサン・ラの王道スタイルを示す『世紀の終焉』の音楽性をご存知という前提で進めるのは恐縮ですが、前回の『Nuits de la Fondation Maeght』をグッとタイトにしたような作風をご想像ください。『Nuits~』が8月のフランスのヒッピー・リスナー相手のコンサートで開放的な雰囲気なら、『世紀の終焉』は10月の気難しいドイツ人相手の真剣勝負という違いが音楽に表れているようです。
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(Original El Saturn "Universe In Blue" LP Liner Cover & Side A Label)
本作ではサン・ラはインターギャラクティック・スペース・オルガンのみを使用しており、1969年以来主楽器にしていたミニ・ムーグ・シンセサイザー(2台併用)は使用していません。カリフォルニア巡業には携行しなかったのか、ムーグ・シンセサイザーはでかい割に単音しか出ない・音程や音量が不安定などライヴ楽器としてはもちろんスタジオ録音ですら問題があり、サン・ラがインターギャラクティック・スペース・オルガンと呼んでいるのは60年代のポピュラー音楽で愛用されたファルファッサ・オルガンですが、これは電気オルガンでもパイプ・オルガンに匹敵する重厚で豊かな音色の代わりにピアノ並みにでかく重いハモンド・オルガンとは対照的で、楽器自体もポータブル・キーボードの上にハーモニウム(足踏みオルガン)程度の軽い音圧と電気楽器ならではの歪みのある音色が好まれました。音色的にはムーグ・シンセサイザーでやりたいことはファルファッサ・オルガンで代用できたということです。ファルファッサ・オルガンの典型的なサウンドはロックではザ・ドアーズや「In A Gada-Da-Vida」のアイアン・バタフライが上げられます。本作A面を占める2部構成のアルバム・タイトル曲は70年代に入ってますます過激化したサン・ラには唐突なほどに明快なブルース曲であり、アルバム・ジャケットもサターン盤にしては意外なほどシリアスでオーソドックスなものです。ジューン・タイソンのヴォーカル曲も本作全体の生真面目なブルース/ゴスペル的ムードを高めており、本作の前後には激しく破天荒なライヴ・アルバムが並ぶことからも、このアルバムだけは特にアメリカ国内の白人リスナーに向けた(バークリー大学の生徒らに代表される層を想定した)わかりやすい黒人ジャズ入門との意図があったでしょう。なお2014年にダウンロード販売された増補改訂版(未収録曲追加、短縮曲の復原)も併せてご紹介します。以後こちらが決定版となるのかもしれませんが、ブルースをテーマとしたコンセプト・アルバムとしてはオリジナル盤の編集が勝っているように思います。
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Sun Ra And His Blue Universe Arkestra - Universe in Blue ; Expanded Edition (Saturn, 2014) Full Album : http://www.youtube.com/playlist?list=PL1lrF-cHOmwmVx6bXYbCfC9jlvllp3gCz
Released by El Saturn Records 200, Digital Downloads May 6, 2014
(Tracklist)
1. Universe in Blue - 13:19
2. Calling Planet Earth - We'll Wait for You - 23:31
3. When the Black Man Ruled This Land - 7:43
4. In a Blue Mood - 7:14
5. Another Shade of Blue - 11:35