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Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
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アイアン・バタフライ Iron Butterfly - Live (Atco, 1970)

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アイアン・バタフライ Iron Butterfly - Live (Atco, 1970) Full Album : https://youtu.be/Nyq2BjbhHFs
Recorded Live in May 25-30, 1969
Released by ATCO Records SD33-318, April 22, 1970 / US#20(Billboard)
Produced by Richard Podolor
(Side One)
A1. In the Time of Our Lives (Doug Ingle, Ron Bushy) - 4:23
A2. Filled with Fear (Ingle) - 3:27
A3. Soul Experience (Ingle, Bushy, Erik Brann, Lee Dorman) - 3:55
A4. You Can't Win (Danny Weis, Darryl DeLoach) - 2:48
A5. Are You Happy (Ingle) - 3:20
(Side Two)
B1. In-A-Gadda-Da-Vida (Ingle) - 19:00
[ Iron Butterfly ]
Doug Ingle - organ, lead vocals
Erik Brann - guitar
Lee Dorman - bass, backing vocals
Ron Bushy - drums

(Original ATCO "Live" LP Liner Cover & Side One Label)

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 本作は絶頂期のアイアン・バタフライをとらえた名作ライヴ・アルバムで、イングル、ブラン、ドーマン、ビュッシーの黄金ラインナップは'68年春~'69年初夏までの1年強しか続かず結局スタジオ盤『In-A-Gadda-Da-Vida』'68.6と『Ball』'69.1、そして'69年5月収録で'70年4月発売の本作しか残さなかったのです。のち2012年に'68年4月収録の2枚組CD『Fillmore East 68』が発掘発売されてアルバム『In-A-Gadda-Da-Vida』制作中の充実したライヴが抜群な音質の良好なライン録音で聴くことができるようになり、2014年にはさらにデビュー作『Heavy』'68.1のメンバー(専任ヴォーカルにダリル・デローチ、ギターがダニー・ワイス、ベースがジェリー・ペンロッド)にギターのブランが参加した2ギター編成による'67年7月収録の『Live at the Galaxy, LA』が発掘されましたが、これは過渡期のバタフライでアンサンブルはまだ固まっておらず、『Heavy』の制作終了後に前記の3人が脱退してブランが正式ギタリストに昇格、ベースにドーマンが入ってようやくバタフライは理想的な編成になったのが『Fillmore East 68』を含む4作を聴くとわかります。当時のアメリカでは複数名のヴォーカリストを擁したロック・バンドも多かったのですが、デビュー作のデローチは専任ヴォーカルといってもヴォーカル曲9曲中3曲しかリード・ヴォーカルを取っておらず作詞家としての参加以上の存在感がなかったのでイングルが作詞も手がけるようになると余剰人員でしかなく、ベースは明らかにドーマンに交替してサウンドが強化されましたし、ワイスは優れたギタリストでしたが17歳のブランにはワイス以上の新しい感覚がありました。ドーマンのモータウン的なベース、コードとリズムはイングルのオルガンとドーマンのベース、ビュッシーのドラムスに任せてリズム・ギターはまったく弾かず単音のリード・ラインで縦横に唸りを上げるノイジーなブランのファズ・ギターが躍動感と適度な間、引きずるようなヘヴィ感が特徴のバタフライのアンサンブルを完成させたので、このベースとギターの役割は同じAtcoレーベルで先にデビューしていたヴァニラ・ファッジと共通した発想ですが、ファッジほどテクニックの傑出したバンドではないので個々のプレイヤーをフィーチャーするよりもトータルなサウンドに集中したバタフライにはファッジにはないまとまりがあります。そのことも、スタジオ盤よりもさらにバンドの結束力の高さを感じさせるこの『Live』から伺うことができて、ヴァニラ・ファッジの『Near the Beginning』'69.2(全米16位)のB面のライヴがボガート&アピスら凄腕メンバーのソロ合戦になっているのとは対照的です。
 ファッジの場合はそれでいいのですが、バタフライのようにテクニックに限界のあるバンドが総合力で勝負しようとするのは割り切った選択で、いわゆるテクニカルなプレイヤーではないブランがどの曲でもほとんどコードを弾かず、ユニゾン・リフ以外は効果音的にリード・ギターを弾き続けるのもイングルがオルガンで鳴らし続けるコードと衝突しないアンサンブルとしては合理的であり、イングルのオルガンが鳴らすコードがトライアドの連続を出ない単調さをギターの奇抜なプレイが救っています。アイディアの豊富さ、サウンドの切れに乏しいので全然似ているようには聴こえませんが、イギリスのイエスやストラングラーズに発展していくようなアンサンブルの原型があります。このライヴ・アルバムの収録後ブランは脱退してしまい、優れたギタリストのマイク・ピネラとライノ・ラインハルトを迎えて2ギターの5人編成になったバタフライはAtcoからの最終アルバム『Metamorphosis』'70.8をリリースし、'71年までヨーロッパ・ツアーを続けて解散しますが、スタジオ盤は力作になっていて新生バタフライとして聴きごたえのあるアルバムになっているものの、2014年に発掘された'70年のデンマークのライヴ、'71年のスウェーデンとデンマークのライヴを聴くとピネラとライノのギターが強力すぎてイングルがほとんどオルガンを弾く余地がなくなってしまい、ピネラのヴォーカルもイングルのヴォーカルを圧倒しており、楽曲も『Metamorphosis』からの曲に唯一「In-A-Gadda-Da-Vida」をギター中心のハード・ロック・アレンジで再演する程度でかつてのバタフライの面影はほとんどなくなってしまいます。『Heavy』からA4、『In-A-Gadda-Da-Vida』からA5とB1、『Ball』からA1、A2、A3をスタジオ盤よりさらに躍動感のあるライヴ・ヴァージョンで聴ける本作は全曲がイングルのリード・ヴォーカルによるバタフライ唯一のアルバムでもあり、当時のライヴ形態(2~3バンドによるパッケージ・ツアー)では1コンサート分でもLP1枚分だったかもしれませんが、演奏曲目を網羅して2枚組LPでリリースしてほしかったと悔やまれます。多少アルバム化に際して編集で手が加えられている(B面曲のエンディング・テーマへの回帰部分など)箇所もありますが、発掘ライヴ『Fillmore East 68』を聴くと4人編成時代のバタフライのライヴ演奏は実に充実したもので、次作『Metamorphosis』での変貌を思うと、本作はオリジナル・コンセプトのバタフライ最後のアルバムでもあるのです。

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