とにかくこれではいつまで経ってもらちがあきません、とスティンキー。生きているのか死んでいるのか、事件かそうではないかもしれないようなことを問題にしていても仕方ないんじゃありませんか?
確かにそれが正論かもしれん、とヘムル署長、現状、これは事件性があるかどうかもわからないのは認めざるを得ない。だがお前のような犯罪者に言われるのは実に心外きわまるというものだ。
結局私はどうなるというんです、とスナフキン。皆さんが私を疑っているのはわかる、でも同時に皆さんはその疑いの裏づけは決して取れないとも知っている。
やれやれ、疑わしきは罰せずに持ち込もうというのだね、とジャコウネズミ博士。ムーミン谷が文明国ならそれもありだろう。しかし文明国とは時に前近代的な強権を発動して自衛し、侵略することに民意が同意するものだということは否めない。
そこまでわれわれの文化が成熟していれば、だがね、とヘムレンさんが割って入りました。ジャコウネズミ博士とヘムル署長はムッとしてヘムレンさんに向き直りましたが、すぐにヘムレンさんが形式上にすぎない弁護人を買って出たのを理解して、まあヘムレンさんの異議申し立てももっともだ、われわれは出来るだけ文化的にこの事態に対処しなければならん、と賛同しました。
ではもう私は出て行っていいですか?とスナフキン。
いやまだ片づいていないことがある、とヘムル署長。君が連れてきたこのムーミン族の子どもをどうする?
私は関係ないですよ、とスナフキン、たまたまこの家の前に立っていただけと説明したじゃないですか。
われわれだって君とムーミン族の子どもに接点があるとは思わん。
だったらなおさら……
しかしわからないのと実情は事情が違う。君は当事者である限りすでにこのムーミン族の子どもと関わりを持っているのだ。なぜ君が、君にとっては最悪なタイミングで、しかも出会ったばかりのムーミン族の子どもを連れてここに現れたのか、納得できる理由があるなら釈明してみせてくれたまえ。
この子に訊いてくださいよ、とスナフキン。まだちゃんと話せる歳ではないだろうけれど、わかりやすく質問すればイエスかノーの仕草くらいはできるでしょう。
きみはこのお兄さんとなかよしなのかな?とヘムレンさん。
ちびムーミンはうなづきました。
この家のおじさんを知っているかい?
ちびムーミンはうなづきました。
ではきみは誰なの?
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偽ムーミン谷のレストラン・誡(47)
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