前回抹消。
気のいいトゥーティッキさんは氷のようなモラン、気の弱いフィリフヨンカと相席して話に花を咲かせていました。3人は魔女という属性が共通点なだけに、もしパーティを組んだら魔力に特化した無敵のチームなのではないかと思われました。いや、すでに相席した時点でパーティになったようなもので、店の誰もがびくびくものなのではないか。
そう考えたのはミムラ姉さんくらいのもので、たまたま総勢35名の兄弟姉妹たちみんながテーブルを移る口実を探していたのはそのテーブルの隣だったのとは関係ないことでした。しかも35名が一度に移れるテーブルのどれもが等間隔に並んでいるとすれば、ミムラ兄弟姉妹にはことさら席を移る意味などありません。これって食い逃げ防止のためなのかしら、とミイは小首をかしげました。でも最初から私たちお金なんて持ってやいないじゃない。
まあ、この谷では金より現物がルールですからね、と缶詰泥棒のスティンキーが言いました、札束なんぞはコンビーフ1缶ほどの値打ちもありません。コンビーフは下ごしらえなしでサンドイッチにもサラダにもできますが、ただの札束なんて煮ても焼いても食えたもんじゃないですからね。もっともわれわれが売り買いの習慣を覚えればわかりませんが。
私は経済学は専門外だが、とジャコウネズミ博士はメニューをためつすがめつ吟味しながら、それはメニューから何かしらの法則性を見抜けなければ自分に腹が立つからですが、一見するとこれはメニューに見えるが違うのかもしれんぞ。どういうことかね、とヘムレンさん。つまりさ、とジャコウネズミ博士はメニューを閉じると縦に持ち、腕ごと垂直に振り上げると一気にテーブルに振り下ろしました。テーブルの木目にピシッと亀裂が走りました。
こういうことさ、これでどうなると思うかね?きっとテーブル代金サービス料込み100億万ムーミン、ローンも可という伝票が運ばれてくるのだ。つまりテーブルを破壊したメニューに仕組まれたのはそんな仕掛けさ。それは君、考えすぎだと思うよ、とヘムレンさん。そんな陰謀めいたことが行われているレストランなど、レストランというよりは他の名前で呼ぶべき施設になってしまいやしないかね。
そうか、外側から魚用、肉用、護身用ナイフと並んでいるのだな、とムーミンパパはマナーブックと見較べていました。なかなかぶっそうで、面白いではないか。
第2章未完。
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偽ムーミン谷のレストラン(20)
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