Recorded in October 13, 1958, New York City
Re-Released by United Artists Records United Artists Jazz UAJS 15001, 1962
Originally Released as Cecil Taylor Quintet - Hard Drivin' Jazz, United Artists Records - UAL 4014, mono, 1959
Cecil Taylor Quintet - Stereo Drive, United Artists Records ?- UAS 5014, stereo, 1959
Produced by Tom Wilson
(Side 1)
A1. Shifting Down (Kenny Dorham) : https://youtu.be/G8eTqSpXyVE - 10:43
A2. Just Friends (John Klenner, Sam M. Lewis) : https://youtu.be/fQhE2jAB-JU - 6:17
(Side 2)
B1. Like Someone in Love (Jimmy Van Heusen, Johnny Burke) : https://youtu.be/nucaLqSrlQE - 8:13
B2. Double Clutching (Chuck Israels) : https://youtu.be/j7P_cXAYjw4 - 8:18
[ The Cecil Taylor Quintet ]
Cecil Taylor - piano
Kenny Dorham - trumpet
John Coltrane - tenor saxophone
Chuck Israels - bass
Louis Hayes - drums
(Original United Artists "Coltrane Time" LP Liner Cover)
しかも筆者は音楽の先生にカセットテープにコピーしてもらったのだが、先生もレコードではなく先生の友人からコピーしてもらったカセットテープで持っていた。AB面15分もないやけに短いアルバムだな、と思ったら、元々のカセットテープが採譜用に33 1/3rpmのLPレコードを45rpmで再生・録音したものだった。再生スピードを上げると音程は4度上がるが、倍音成分が消えて採譜のための聴き取りが楽になる。カセットテープにはアルバム・タイトルなしでジョン・コルトレーンとしか書いていなかったし、音楽の先生も何のアルバムか知らなかったから、後で探し当てるまで苦労した。そして探し当ててみたら回転数が違っていた、と冗談みたいだが、実話なのだからこのアルバムとはずいぶん屈折した出会いかたをしたものだ。しかもコルトレーンのアルバムはあらかた聴いて見つからず、忘れた頃にセシル・テイラーのアルバムを集めていて『Hard Drivin' Jazz』はステレオ版『Stereo Drive』改題『Coltrane Time』でしか今では入手できないんだよな、とセシル・テイラーのアルバムのつもりで買ったらいちばん最初に聴いたコルトレーン(正確にはレコードが回転数違い)だった。あの時は唖然とした。しかもLPプレーヤーなら簡単に、CDでもDTMで出来るはずだが、A1で言えばKey=FがKey=B♭になるがB♭ならキーとしては違和感ないし(トランペットもテナーサックスもB♭管)、1.5倍のアップテンポになると意外とかっこ良かったりするのだ。
(Original United Artists "Hard Drivin' Jazz" LP Front and Liner Cover)
50年代~60年代のセシル・テイラーは自分のバンドのレギュラー・メンバーとしか録音しなかった。その唯一の例外が『Hard Drivin' Jazz』で、トランペットが元チャーリー・パーカー・クインテット、元ジャズ・メッセンジャーズのケニー・ドーハム(1924-1972)、ベースがビリー・ホリデイやバド・パウエルと共演し、後にエリック・ドルフィーとの共演やビル・エヴァンス・トリオのレギュラー・メンバーになるチャック・イスラエルズ(1936-)でイスラエルズにはこれが初レコーディング、ドラムスは元ホレス・シルヴァー・クインテットでキャノンボール・アダレイのレギュラー・メンバーになるルイス・ヘイズ(1937-)と、腕前は確かだがまったくの寄せ集めのメンバーなのだった。イスラエルズとヘイズはまだ21、2歳だからまだしも融通がきくとされたのだろう。コルトレーンは新鋭テナーマンとしてテイラーとの組み合わせが期待されたらしく、コルトレーン自身が参加には意欲的だったらしい。だがドーハムはマイルス・デイヴィスの後任でチャーリー・パーカー・クインテットのトランペットを勤め、アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズを立ち上げた大物だった。
(Original United Artists "Stereo Drive" LP Front and Liner Cover)
ドーハムのオリジナルA1がピアノの無伴奏イントロで始まると、いかにもセシル・テイラーらしい異様なムードにどうなるかと思うが、2ホーンとベース、ドラムスが入って曲になるとあっけないほどハードバップのブルースなので拍子抜けする。コルトレーンの先発ソロは後にエリック・ドルフィーが多用するような平行音列を連発して意欲的なのだが、テイラーのソロに移るとどうも先ほどのテナー・ソロがやっていたことはリーダーのピアニストのプレイとは違うように思える。そしてケニー・ドーハムは、ピアノがどうバックアップしてこようが「Bag's Groove」のソロを想定して吹いているように聴こえる。こうなるとベースとドラムスはオーソドックスなプレイでトランペット・ソロを支えるしかなく、ピアノとの一体化は果たすすべもなくなってしまう。
(Original United Artists "Coltrane Time" LP Side 1 & 2 Label)
録音順でもアルバム収録順でも最終曲のB2「Double Clutching」はハードバップどころかビバップの雰囲気すら漂うラフなセッションで、ほとんど手癖のドーハム、張りきれば張りきるほどソロの焦点が定まらない(その代わりにやたら早い)コルトレーンと来て、テイラーのソロが最後に来ると完全にブルース・フォームが霧消してしまう。短いベース・ソロを挟んでフォー・バースになり、無理やりブルースに戻って終わる。そんなわけでこのアルバムはセシル・テイラーのリスナーには「あれは別」扱いされるし、コルトレーンのリスナーには失敗作扱いされるし、一般的にはマイペースを貫いたドーハムのプレイがまだしも、とされる。それもわからないではないが、こういう事故みたいなアルバムがゴロゴロしているのが当時のジャズの面白さでもある。コルトレーンでも聴くか、ただしコルトレーン本人のアルバムじゃないやつ(重いから)、という時にこれを聴くと、案外楽しめたりもする。