Recorded in November 1(Session A) and 13(Session B), 1959 at CBS 30th Street Studio, New York City
Released by Columbia Records Columbia CS-8236, April 11, 1960
All compositions by Charles Mingus except where noted.
(Side 1)
1. Slop - 6:16 (Session B)
2. Diane : https://youtu.be/jNdcYi80ONM - 7:32 (Session A)
3. Song With Orange : https://youtu.be/b7BPbDdsEzg - 6:50 (A)
4. Gunslinging Bird (Originally titled "If Charlie Parker Were a Gunslinger, There'd Be a Whole Lot of Dead Copycats") : https://youtu.be/Nlmno3lTYbQ - 5:14 (A)
(Side 2)
1. Things Ain't What They Used to Be (Mercer Ellington) - 7:36 (B)
2. Far Wells, Mill Valley - 6:14 (A)
3. New Now Know How - 4:13 (A)
4. Mood Indigo (Barney Bigard, Duke Ellington) - 8:13 (B)
5. Put Me in That Dungeon - 2:53 (B)
(Bonus track on CD)
tk1. Strollin' aka "Nostalgia in Times Square" (Mingus, George Gordon) : https://youtu.be/6BXNdoYWM9A - 4:33 (A)
[ Charles Mingus and His Jazz Group ]
(Session A)
Charles Mingus - bass
Richard Williams - trumpet
Jimmy Knepper - trombone
John Handy - alto sax
Booker Ervin - tenor sax
Benny Golson - tenor sax (exept B3)
Jerome Richardson - baritone sax(exept B3), flute (A2)
Dick Williams (Teddy Charles) - vibes (exept B3 and "Strollin'")
Roland Hanna - piano (exept B3 and "Strollin'")
Nico Bunink - piano (B3 and "Strollin'")
Maurice Brown - cello (A2)
Seymour Barab - cello (A2)
Honi Gordon - vocals ("Strollin'")
Dannie Richmond - drums
(Session B)
Charles Mingus - bass
Don Ellis - trumpet (1, 5, 8, 9)
Jimmy Knepper - trombone
John Handy - alto sax
Booker Ervin - tenor sax
Roland Hanna - piano
Maurice Brown - cello (B5)
Seymour Barab - cello (B5)
Dannie Richmond - drums
前作『Mingus Ah Um』はミンガス門下生の白人テナー奏者テオ・マセロがコロンビアのモダン・ジャズ部門プロデューサーに就任したことで実現した企画だったのだろう。マセロはコロンビアに1957年から移籍してきたマイルス・デイヴィス、60年代にはやはり移籍してきたセロニアス・モンクを手がけることになるが、ミンガスの場合はとりあえず2枚契約だった。商業的にも批評的にも『Mingus Ah Um』と『Mingus Dynasty』は大成功したのだから契約延長があっても良さそうなものだが(70年代に数年の活動休止からカムバックしたミンガスは、またもコロンビアから2作契約でアルバム制作することになる)、コロンビアという会社は後にもビル・エヴァンスやオーネット・コールマンと2作は契約するのだが、ミンガス同様エヴァンスやオーネットさえも2作きりで終わっているのはよほどアーティストの商業性にシビアなのだろう。それはスター性による格付けといっていいかもしれない。
すでに『Jazz Portraits : Mingus in Wonderland』(1月録音)、『Blues & Roots』(2月録音)、『Mingus Ah Um』(5月録音)と制作してきた1959年のミンガスの11月録音作品が本作『Mingus Dynasty』で、この辺からミンガスのアルバム・タイトルにはミンガスの名前が入ることが多くなる。それにしてもこの1959年録音の4作はどれも傑作なのだからすごい。『Jazz Portraits』でスタンダード「I Can't Get Started」を、『Mingus Dynasty』ではあえてデューク・エリントン曲を2曲入れた以外はすべてミンガス自身のオリジナル新曲で固めている。後にサン・ラが「ミンガスはなかなか良い。みんな私が考えていた音楽アイディアだが」と発言したが、偶然にもサン・ラのアルバム・デビュー作『Jazz by Sun Ra』1956はミンガスが『Pithecanthropus Erectuts』でスタイルを完成させたのと同年になるが、それから5年の1961年にサン・ラが『The Futuristic Sounds』でニューヨーク進出するまでの13枚のアルバム紹介はすでにこのブログでやった。しかし同時期にミンガスは『Pithecanthropus Erectuts』『The Clown』『Mingus Three』『Tijuana Moods』『East Coasting』『A Modern Jazz Symposium』『Jazz Portraits』『Blues & Roots』『Mingus Ah Um』『Mingus Dynasty』が59年までにあり、61年録音まで追加すれば『Pre-Bird (aka Mingus Revisited)』『Mingus at Antibes』『Charles Mingus Presents Charles Mingus』『Mingus!』『Reincarnation of a Lovebird』『Tonight at Noon』『Mingus Oh Yeah』があるのだ。アルバム制作枚数でも、強固で独創的なスタイルの確立とアルバムの圧倒的な完成度でも、いくら初期サン・ラが過小評価されているといっても1956年~1961年のミンガスとサン・ラでは横綱と三役、それもせいぜい小結といったところか。もしジャズ・メッセンジャーズとの比較ならジャズの可能性はサン・ラにあると言えるのだが、ミンガスはサン・ラの存在などおそらくほとんど知らずにここまでやった。一方サン・ラがミンガスを参考にした痕跡はあちこちにあり、実際にミンガスの音楽を意識していたのはサン・ラの若手メンバーたちだろうが、モダン・ジャズではこれほど集中的に爆発的な創造力を発揮したアーティストは同時代には数年遅れでジョン・コルトレーンしかいなかった。
(Original Columbia "Mingus Dymasty"Promotiomal LP Liner Notes)
トロンボーンのジミー・ネッパーは最初から上手かったがここではさらに表現力の成長が目立つ。主要メンバーではカーティス・ポーター(シャフィ・ハディ、アルト&テナーサックス)在籍末期からジョン・ハンディ(アルト&テナーサックス)、ブッカー・アーヴィン(テナーサックス)が加入していたが、今回ついにポーターの名が消えた。また、短期間ながら最高の適性を見せたホレス・パーラン(ピアノ)に代わってローランド・ハナが参加している。ハンディとアーヴィンはアルトとテナーの違いがなければ一瞬わからなくなるくらい似たサウンドのR&B系サックス奏者で、ハンディの方がタメの効いたアドリブで、アーヴィンの方はぶっきらぼうな推進力に特徴があるか。達者で味もあるが、ジャッキー・マクリーンやカーティス・ポーターのような表現力や革新性はあまり感じらるない。マクリーンやポーターよりもテクニックでは上と思わせるにもかかわらず、で、翌年にテクニック・表現力・革新性ともに超弩級のマルチ・サックス奏者エリック・ドルフィーが加入するとハンディとアーヴィンはあっさり呼ばれなくなる。ピアノのローランド・ハナはちょっとウィントン・ケリーを思わせる小粋なスウィンガーで名手の片鱗がここでもあちこちで聴けるが、ミンガスの音楽に合っているかはマル・ウォルドロン、ビル・トリリア、ホレス・パーランらの優れたプレイを聴いてきた後では違和感を感じる。
(Original Columbia "Mingus Dymasty"Promotiomal LP Side 1 & 2 Label)
だがこのアルバムの濃厚さはサイド1だけで満腹になるほどで、『Blues & Roots』の「Wednesday Night Prayer Meeting」の再演中に発展したと思われる「Slop」(「Wednesday~」のテーマなし、リフ流用、またこのセッションで「Wednesday~」の再演テイクも未発表のまま残されている)、ミンガス自身によるライナーノーツの口述筆記者の女性ジャーナリストに捧げたミンガス得意の無調のバラード「Diane」、ジミー・ネッパーと契約上別名参加のテディ・チャールズをフィーチャーした「Song with Orange」、そしてマイナー・ブルースの力作「Gunslinger Bird」は原題は「もしチャーリー・パーカー(バード)がガンマンだったらイミテーションする連中(コピー・キャット)の屍の山ができただろう」と物騒なものだった。1999年のリマスターCDから復元されたが、LPや旧規格CDではA1,3,4,B1の4曲は各2分、計8分にもおよぶ編集によるカットがあったという。サン・ラのサターン盤ならサイド1とサイド2を別々のアルバムで出していただろう。アルバム未収録になった唯一のヴォーカル曲(映画『アメリカの影』用サントラ曲集『Jazz Portraits』で既出、映画では主題曲として使用の「Nostalgia in Times Square」のヴォーカル・ヴァージョン)「Strollin'」も面白い。ジャズ・ヴォーカルのマニアには評判が悪いホニ(ハニー)・ゴードンが歌っているが、最初ヴァースから始まるのでおや、と思ってしまう。粋な都会的ブルースになっている。ミンガス自身のライナーノーツでは小組曲「Far Wells, Mill Valley」の4部構成の解説を詳述しているが、サイド2はトータルな流れがありエリントン曲「Things Ain't What They Used to Be」からの流れではことさら凝った感じはしない。そんな具合に、欠点がないのが欠点とでも言いたくなるような見事な完成度を誇るからこそ、物足りなさを感じさせもする。難しいものだと思う。