Released by Demon Records, VEXCD 12, UK, 1992
(Tracklist) - total time; 25:15
(BUY6, October 22, 1976)
1. New Rose (James) - 2:43
2. Help (Lennon, McCartney) - 1:42
(BUY10, February 18, 1977)
3. Neat Neat Neat (James) - 2:40
4. Stab Your Back (Scabies) - 0:58
5. Singalonga Scabies (Scabies) - 1:00
Tracks 1-5 produced by Nick Lowe.
(DAMNED1, July 3, 1977 / Not For Sale)
6. Stretcher Case Baby (Scabies, James) - 2:12
7. Sick Of Being Sick (James) - 2:28
Tracks 6 & 7 produced by Shel Talmy.
(BUY18, October 28, 1977)
8. Problem Child (Scabies, James) - 2:11
9. You Take My Money (James) : https://youtu.be/Xrf0Nj4UqqE - 2:01
(BUY24, December 11, 1977)
10. Don't Cry Wolf (James) - 3:13
11. One Way Love (James) - 3:44
Tracks 8-11 produced by Nick Mason.
[ The Damned ]
Dave Vanian (David Letts) - vocals
Brian James - guitar
Captain Sensible (Raymond Burns) - bass
Rat Scabies (Chris Miller) - drums
"Lu" Robert Edmunds - 2nd guitar(tk.8-11only)
これは素晴らしい。ロンドン・パンクはこれ1枚で決まりと言っても過褒にはならないのではないか。これを聴くとダムドはセックス・ピストルズよりもワイヤーに近く、デビュー作だけならばクラッシュもダムドの後を追っていたが熱量はダムドの方がはるかに大きい。ワイヤーは熱量を抑制する方向でパンクを抽象化していったし、クラッシュはレゲエを手がかりにもっと豊穣な音楽を求める方へ向かった。ピストルズは時代の遠近法がついてしまうと、ニューヨーク・ドールズやラモーンズら先駆的ニューヨーク・パンクをイギリスのちんぴらバンドがいただいた、という時代的背景抜きには真価を定め難くなっている。
ダムドはロンドンのパブ・ロックの系譜の中から出てきたバンドで、Dr.フィールグッドとギャング・オブ・フォーの間のミッシング・リンクに近い。そして音楽的基礎能力はストラングラーズやバズコックス、スージー&ザ・バンシーズに較べれば脆弱で、セカンド・アルバムで早くも破綻し、サード・アルバム以降は正統派のパブ・ロックに回帰した。以来結成40年間を偉大なマンネリ・バンドの道を貫いてきた。だからパンク・ロックの観点からの評価はセカンド・アルバムまで、すなわちこのシングル集の時代までで断定することができる。
(Original Stiff "Damned Damned Damned" LP Front and Liner Cover)
これはロックのスタイルでは音楽的には最悪のもので、60年代にはサイケデリック・ロックとも結びついて無数のガレージ・パンク(アマチュア・バンドの練習場所の多くは車庫だったことから)を生み、70年代のニューヨーク・パンクもミュージシャンのほとんどが60年代の早熟なガレージ・パンクのロッカーと生まれ年は変わりなかった。要するにニューヨーク・パンクは晩熟でデビューが遅れた田舎出の素人が担っていたのだが、ニューヨーク・パンクの功罪でも度し難いのはリズムの軽視で、ビート感覚に無神経なロックに成功例はない。パティ・スミスなどは文化人として過大視されているだけで、アメリカの白人文化優位主義が今ではガレージ・パンク的なものを庇護している象徴的現象でもある。人種混交国家アメリカではこのすり替えは欺瞞ですらある。
(Original Stiff "New Rose c/w Help!" Single Front and Liner Cover)
セカンド・アルバムではピンク・フロイドのニック・メイスンがプロデュースという事態になり、またジェームスも在籍はしていたが、ルー・エドマンズをセカンド・ギタリストに迎えて録音された2作目のアルバムに収録される「Problem Child c/w You Take My Money」「Don't Cry Wolf c/w One Way Love」はジェームス脱退後のダムドの作風を予告する、ポップなものになっている。キンクスのリフで始まる「One Way Love」はバンド全体としてはダムドはビート・グループを源流としたパブ・ロックのバンドだった地金がとうとう露呈してしまったと言えて、それを言えば掛け値なしの大傑作シングル「New Rose c/w Help」「Neat Neat Neat c/w Stub Your Back, Singalongascabies」の2枚で最高のダムドは終わっており、ロンドン・パンクの最盛期もこの2枚のシングルにすべてが集約されている。後は余波でしかない。
(Original Stiff "Neat Neat Neat c/w Stub Your Back, Singalonga Scabies" Single Front and Liner Cover)
そしてアルバムと同時発売の「Neat Neat Neat」だが、テレビCMでもドラマ主題歌でもいいからもっと世間に流れてほしい名曲。ロックンロール永遠のテーマをきっぱり「Neat Neat Neat!」と言い当ててみせたバンドが他にいるだろうか。B面に1分の曲が2曲、ヴォーカル・ヴァージョンの「Stub Your Back」とインスト・ヴァージョンの「Singalonga Scabies」だが、リフとリズム・パターンで、1分しかないのに永久に続いていく演奏に聞こえる。ロックでは音楽的に最悪なはずのガレージ・パンク・スタイルが、ここではのっぴきならない究極の密度に高められている。3枚目のシングル以降はオマケみたいなものだが、それだけ最初の2枚のシングルが傑出していることを教えてくれる参考音源ではある。仮に後のグランジを生み出した系譜を過去に探っていくとしても、ロンドン・パンクはダムドのこの初期シングル集だけでいい。ピストルズでもクラッシュでもない。音を聴けばわかる。