3匹は、略式起訴に決着がつくまで3か月を拘置所に監禁されて過ごしました。被疑者の段階では使役はなくひたすら禁固されるのですが、3匹はそれぞれ別の雑居房に振り分けられ、カッパは麻薬不法所持・使用被疑者、イヌは職業的集団窃盗団、サルは組織的密輸団に放り込まれ、カッパの雑居房は単独犯ばかりですから次々と裁判を済ませては入れ替わるのですが、イヌとサルのぶちこまれた組織犯の集団では案件が複雑かつ職業的犯罪者ばかりですから、審議が長引いて半年以上も未決犯のままグループごと拘置されている輩が大半で、彼らの陰湿で排他的な部外者苛めは刑務官の目の届かない、痕跡の残らないかたちで執拗な攻撃をイヌとサルに加えられました。
カッパのぶちこまれた麻薬犯の雑居房は個人的な所持・使用容疑者ばかりの、いわば一匹狼の群れでしたから、職業的組織犯のような上下関係や排他性はなく、全員が何の会話もなく仏頂面で読みたくもない読書をしながら一日中座っているだけです。イヌやサルはことあるごとに罵倒され、すれ違いざまに蹴りをいれられていました。単独犯の雑居房にせよ組織犯の雑居房にせよ、12畳に10人の成人男性が詰め込まれているのは同じです。
入浴は週に12分間と8分間の2回、タオルの所持は1本のみで使用していない時は刑務官が一目でわかるようタオルかけにかける規則です。ひげ剃りは週に1度電気シェーバーが20分間配られます。許可された時間(昼寝、晩の睡眠)以外は寝転ぶのはおろか壁に手をつく、背中をもたれるのも禁止です。20年前の日付の入ったカーペットみたいにごわごわした毛布で、顔を隠して寝るのは絶対厳禁です。
12畳に10人というのがどれほど狭いかというと、左右に4枚ずつ布団を敷いて中央に縦に2枚布団を敷くと畳が見えず、さらに毎朝の掃除をすると10人の足が摩耗させた畳のカスが握りこぶし大に集まるほどです。
3人は合同の運動時間(週2回)に四方が5階建てに囲まれた息苦しい中庭で、顔を合わせる時がありました。話を小耳に挟んだ初老の任侠っぽいおじさんが「あんたは大丈夫そうだが」とカッパに、次にイヌとサルに「あんたたちは独居に移った方がいい。独居もつらいが、あいつらはクズだ」3匹を見て「あんたたちはこんなところにいる人間じゃない」
3匹はもともと人間ではありませんでしたが、刑務官も含めて確かにここは人間のクズばかりでした。
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真・NAGISAの国のアリス(27)
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