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短歌と俳句(8)石原吉郎7

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やれやれ、やっと見つかった。「みずかき」を一字で当てた漢字を筆者は国語・漢和辞典でも探し当てられなかったのだが、部首で見つからないなら音読みで見つからないかと漢和辞典を引いたらやはりなかったが(俗字・廃字の部類なのだろう)、携帯では「ボク」の音読みで出てきた。
それが、石原吉郎(1915-1979)自薦でも前回の北村太郎による句集評でも、後述する佐佐木幸綱(1938-)の論考でも、石原を代表する一句とされる、

・懐手蹼(ミズカキ)ありといつてみよ

―の「蹼」という稀字なのだった。この句の初案は、「懐手蹼(ミズカキ)そこにあるごとく」だったが、それでは「いかにも俳句めいて助からないような気がしたので(中略)書き直してすこしばかり納得した」と著者の「自句自解」にある。この句の眼目は、まさに「蹼(ミズカキ)」の一字にあるのだから「みずかき」や「水掻き」ではいけない。遡って修正した。

掲載画像にある「現代詩読本2-石原吉郎」は77年11月の石原の急逝を受けて78年7月に「現代詩手帖」誌の別冊として発行されたが、元々現代詩読本は中原中也を第1号に石川啄木、萩原朔太郎、室生犀星、高村光太郎、金子光晴、西脇順三郎、三好達治、立原道造、伊東静雄、滝口修造ら現代詩の古典的地位を占める人気詩人たちのシリーズで、そこに急遽石原吉郎が割り込んだのは同時の石原への注目度を物語る。また、石原が投稿詩で即座に一家をなした詩人として登用されたのが「現代詩手帖」の前身「文章倶楽部」であり、第一詩集の刊行も同誌発行元の思潮社で、急逝の直前まで「現代詩手帖」誌は石原を重用し続けた。
この別冊が既発表・書き下ろしを取り混ぜた石原文献の集大成になっており、以降は花神社からの三巻本全集(79-80)以外これに匹敵する文献はない。また、皮肉なことに「現代詩読本」の中で唯一石原吉郎の巻だけが書籍として再版されていない。

北村太郎の「『ゆ』のおかしみ」は既発表エッセイの再録だったが、この別冊のために書き下ろされた論考で石原の短歌と俳句を論じたものは、ともに国文学者でもある詩人・藤井貞和(1942-)「〈形〉について~日本的美意識の問題」と、歌人・佐佐木幸綱「物語の可能性と沈黙の詩」の二編がある。今回はもう紙幅がないのでそれらは次回でご紹介する。

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