家族を人質に取られてはねえ、とドジソン先生、そう軽々しく動くわけにはいかないでしょう。この国は本当は他人のことなどどうでもいいくせに、国際的な拉致問題というとやたらと頭に血がのぼる人が多い。それで一気に強気な外交政策を掲げて支持層を集めようとする政党が出てくる、ところが選挙に大勝した後は何もしない。まるで南方戦没者遺骨収集団体のようだ。ところで、私は政治と宗教のことは話題にしないことにしているのです。となると話題はひとつしかない。
つまりセックスですが、とドジソン先生は言いました、しかし13歳と10歳と8歳の姉妹にセックスの話などして私はどうしようというのでしょうか?実りのある話になるわけなどありません。とにかく川の向こうに渡ったアリスの行方を追ってみましょう。それがあなたがた家族の義務であり、責任ということです。
ロリーナは自分の両親ならともかく、未成年者である自分とエディスに義務や責任が問われるとは思えず、他人とはいえ状況的に監督責任者である成人男性こそドジソン先生ではないか、と思いましたが、今ドジソン先生に逆らったらアリスにはどんなバッドエンドが待ち受けていないとも限りません。そんなロリーナの心配をよそに、アリスは柳の枝をびゅんびゅん振り回していました。柳の枝は風を切り、アリスのためにうねり声を上げました。もう鈍くさいウサギに仲間(?)集めを命令してからどのくらい経ったのかしら?それも腕時計をしているウサギに聞かなければわかりません。
川の向こう岸とこちら岸で子供がキャッチボールをしていました。川幅は一定していないのかもしれません。アリスは退屈して、つまんない!と叫びましたが無駄なので、スカートの腰に挟んできた愛読書を読み始めました。
・愛読書「今日から楽しむ100円おかず」
内容は、
・主菜 = かぼちゃのそぼろ和え、子持ちカレイの煮つけ、鶏唐揚げの酢豚、薄切り豚ゆでしゃぶサラダ、じゃがいもの牛すき煮、ほうれん草とベーコンの薄口バター炒め、etc.
・副菜 = 温奴豆腐オクラの小口切り乗せ、 豆腐の玉子とじステーキ、簡単レンジ蒸しひねりナス、キュウリとワカメの甘酢あえ、etc.
・汁物 = 細切り玉ねぎとかき玉の味噌汁、薄切り豚肉と細切り野菜の豚汁、簡単ミネストローネ、簡単ボルシチ、簡単ポトフ、etc.
アリスはこういう民間人の食生活に、何となく興味がありました。
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新・NAGISAの国のアリス(12)
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