Recorded at RCA-Victor Studio B, New York City, January 30* and February 13**-14***, 1962
Released by RCA-Victor LPM-2527, early april 1962
(Side 1)
1. Without a Song (Edward Eliscu, Billy Rose, Vincent Youmans) - 7:28***
2. Where Are You? (Harold Adamson, Jimmy McHugh) - 5:10**
3. John S. (Sonny Rollins) - 7:43**
(Side 2)
1. The Bridge (Rollins) - 6:00***
2. God Bless the Child (Arthur Herzog Jr., Billie Holiday) - 7:27*
3. You Do Something to Me (Cole Porter) - 6:48**
[ Personnel ]
Sonny Rollins - tenor saxophone
Jim Hall - guitar
Bob Cranshaw - bass
Ben Riley - drums
Harry "H.T." Saunders - drums (replaces Riley on "God Bless the Child")
ソニー・ロリンズ(テナーサックス/1930-)は説明不要の大物だろう。ニューヨークのビ・バップ最高潮の時期に幼なじみで同年輩のジャッキー・マクリーン(アルトサックス)やケニー・ドリュー(ピアノ)、アート・テイラー(ドラムス)らと少年ジャズマンとしてデビューし、バド・パウエル『Amazing Bud Powell』1951やマイルス・デイヴィス『Dig』1951への参加で新鋭テナーNo.1の声望を得る。だが大胆奔放なプレイの裏には相当ナイーヴな性格があり、1952年、1955年頃には短期間ずつ消息不明になっていて、ロリンズを常連メンバーにしていたマイルスは52年はマクリーン、55年にはジョン・コルトレーン(テナーサックス)をロリンズの代役に起用し、その代役抜擢もマクリーンやコルトレーンが一流プレイヤーへの足がかりをつかむきっかけになっている。
1956年からのロリンズはマックス・ローチ・クインテットのレギュラー・メンバーを兼任する一方で驚異的名盤を連発、押しも押されぬモダン・ジャズ世代現役No.1テナーの座につき、今日に至るまでジャズで一番偉い人の筆頭株に上げられる。唯一その座が揺らいだのは爆発的創造力を示したジョン・コルトレーンの晩年期(1959年~1967年)であり、コルトレーン没後はウェイン・ショーター(1933-)、ジョー・ヘンダーソン(1937-2001)がNo.2、No.3といったポジションだったが、キャリアの長さ、多産さ、ポピュラリティでロリンズを上回るモダン・ジャズのテナーマンはデクスター・ゴードン(1923-1990)、スタン・ゲッツ(1927-1991)の歿後いなくなった。だが20代終わりには巨匠とされていたロリンズはさらに1959年春~1961年秋と1969年冬~1971年の2回、完全な音楽活動休止期間がある。1969年冬~1971年の休業は休養が目的だったらしいが、1959年春~1961年秋はトレーニングのための隠棲だった。その時のカムバック・アルバムが本作『橋』で、なんでも隠棲期間はブルックリン橋の上で練習していたのが話題になっていたという。
(Original RCA-Victor "The Bridge" LP Liner Notes)
A1. ゴット・ブレス・ザ・チャイルド
A2. ジョン・S
A3. ユー・ドゥ・サムシング・トゥ・ミー
B1. ホエア・アー・ユー
B2. ウィザウト・ア・ソング
B3. 橋
(Original RCA-Victor "The Bridge" LP Side1 Label)
(Original RCA-Victor "The Bridge" LP Side2 Label)
ロリンズの『橋』への参加はホールの名声を決定的なものにし、以降ホールはアート・ファーマー(トランペット)、ビル・エヴァンス、ポール・デスモント(アルトサックス)らのバンドを経てリーダー・ミュージシャンになるが、エヴァンスを別にすればホールの参加作はピアノレスが前提で、しかもワンホーン・アルバムとしての企画がほとんどだった。ホールのギターは第2ホーンの役割とピアノの役割を同時に求められたことになり、ホーン奏者のバックアップにおいてはおそろしいほど耳が良く、ホーン奏者のアドリブに対して最適なコードを即座かつ最小限に提示する、という小憎らしいほど達者なプレイを易々とやってのけたのが『橋』を聴いてもわかる。ホールとの共演が次作までになったのはまさにホールが有能すぎたためで、本当はロリンズのアドリブはもっと行き当たりばったりに聴こえてくるのが普段の調子なのだが、ホールのサポートがあまりに見事なためまったく破綻がなく、ロリンズとしてはアルバム2枚でホールとはやり尽くしてしまったのだろう。たまにホールが走ったコードからロリンズが外れるとロリンズ側のミストーンに聴こえるのが面白いが、そんなところもロリンズには先が見えてしまったに違いない。