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モップス Mops - 御意見無用 Iijanaika (Liberty, 1971)

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モップス Mops - 御意見無用 Iijanaika (Liberty, 1971) Full Album : https://youtu.be/1mcdnU6wGas
Released by 東芝音楽工業株式会社/Liberty LTP9025, May 5, 1971
All Lyrics by 鈴木ヒロミツ (except B1/川内康範) All Composed by 星勝 (except B4/三幸太郎)
(Side A)
1. 御意見無用(いいじゃないか) - 3:48
2. タウン・ホェア・アイ・ワズ・ボーン - 1:49
3. グッド・モーニング、グッド・アフタヌーン、グッド・ナイト - 8:58
4. ノーボディ・ケアーズ - 4:59
(Side B)
1. 月光仮面 - 3:20
2. トレイセス・オブ・ラヴ - 5:51
3. トゥ・マイ・サンズ - 3:29
4. ノー・ワン・ノウズ・ワット・ゼイ・ワー - 3:20
5. アローン - 3:25
[ Personnel ]
鈴木ヒロミツ - vocals
星勝 - guitar, vocals
三幸太郎 - bass guitar
スズキ幹治 - drums

 この『御意見無用』はモップス(ザ・モップス)のサード・アルバムになる(スプリット・アルバム除く)。先行シングル「御意見無用」(日本語版)は1971年1月、「月光仮面」は同年3月15日に発売されている。ザ・モップスはもともと日本ビクターから1967年11月に、シングル「朝まで待てない c/w ブラインド・バード」で日本初のサイケデリック・ロック・バンドとして売り出され、シングルは中ヒット、1968年4月発売のデビュー・アルバム『サイケデリック・サウンド・イン・ジャパン』は全12曲中当時の英米サイケデリック・ロック(アニマルズ、ジェファソン・エアプレイン、ザ・ドアーズなど)のカヴァーが6曲、オリジナル曲6曲と60年代の日本のロック・アルバムではよくある構成ながら、オリジナル曲の出来の良さで1980年代後半から英米の60年代ロック・マニアに注目され、むしろ海外で再評価されたことから日本でも見直される存在になった。
 グループ・サウンズ・ブームの最中にデビューしたザ・モップスだが音楽性・ルックスともにアイドル性はなく、1969年には多くのバンドが解散していく中オリジナル・メンバーのベーシスト、村上薫が脱退。サイド・ギタリストの三幸太郎がベーシストとなるが日本ビクターとの契約は打ち切りとなり、4人編成のバンドは定冠詞を外してモップスと改名。東芝音楽工業傘下のエキスプレス・レーベルからシングル1枚と4バンドによるスプリット・ライヴ盤『ロックンロール・ジャム'70』(2LP/1970年4月発売、A面モップス、B面ハプニングス・フォー、C面ゴールデン・カップス、D面フラワーズ)を経て、リバティ・レーベルからセカンド・アルバム『ロックン・ロール'70』(70年6月発売)で再デビューを果たす。

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 ザ・モップスのデビュー時はグループ・サウンズ最盛期ながら、1970年にはほとんどのグループ・サウンズ系バンドが解散・消滅していたのを思えば、70年の再デビュー以後に本格的な活動をなし得たモップスは60年代デビューのバンドでも例外的なキャリアをたどった(『ロックン・ロール・ジャム'70』で競演したハプニングス・フォー、ゴールデン・カップス、フラワーズらも70年~71年にかけて次々解散している)。モップスは鈴木ヒロミツのタレント活動、星勝のアレンジャーとしての大成とともに解散へ向かうことになるが、70年代の日本のロック・バンドでモップスほどの実績を残せたのはごく少数のアーティストしかいない。先述したアルバムを含めて、オリジナル・アルバム(ライヴ盤、編集盤含む)は次の通り。
1. サイケデリック・サウンド・イン・ジャパン(1968年4月発売)日本ビクター/Victor
2. ロックンロール・ジャム'70(ライヴ/1970年4月5日発売・A面のみ)東芝音楽工業/Express
3. ロックン・ロール'70(1970年6月5日発売)東芝音楽工業/Liberty
4. 御意見無用(いいじゃないか)(1971年5月5日発売)東芝音楽工業/Liberty
5. 雷舞(ライヴ/1971年10月5日発売)東芝音楽工業/Liberty
6. 雨/モップス'72(1972年5月5日発売)東芝音楽工業/Liberty
7. モップスと16人の仲間(1972年7月5日発売)東芝音楽工業/Liberty
8. モップス1969~1973(シングル集/1973年6月5日発売)東芝音楽工業/Liberty
9. ラブ・ジェネレーション/モップス・ゴールデン・ディスク(ベスト・アルバム/1973年10月25日発売)東芝音楽工業/Liberty
10. EXIT(解散コンサート・ライヴ/1974年7月5日発売)東芝音楽工業/Liberty

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 日本ビクター傘下のVictor、東芝音楽工業傘下のExpress、Libertyのいずれもが洋楽レーベルで、当時ロック系アーティストが自作曲をレコード発売するのは邦楽アーティストとしてレコード会社と作曲家としての専属契約を結ばなければ邦楽レーベルからは発売できない組合協定があった。ジャズやシャンソン、フォークのアーティストでもそうで、ロックを含んでこれらは邦楽の作曲とは見做されない。そこで洋楽アーティストを配給するための海外契約レーベルを使って日本のアーティストのレコードを制作・発売する、というややこしい事情があった。そこでヴェンチャーズやカンやホークウィンドの配給レーベルでもあるリバティからモップスのアルバムは発売されていた。純国産の日本人バンドだが作品は洋楽のアルバムとされていたということになる。
 モップスのデビュー・アルバムからセカンド・アルバムまでを見ると、カヴァー曲はこのようなものだった。
『サイケデリック・サウンド・イン・ジャパン』
・San Franciscan Nights (Eric Burdon & the Animals)
・Inside Looking Out (Eric Burdon & the Animals)
・The Letter (The Box Tops)
・Somebody To Love (Jefferson Airplane)
・White Rabbit (Jefferson Airplane)
・Light My Fire (The Doors)
『ロックン・ロール・ジャム'70』
・I'm Cryin' (Eric Burdon & the Animals)
・(Hidden Track) Coloured Rain (Traffic~Eric Burdon & the Animals)
・Jenny Jenny (Little Richerd)
・Don't Bring Me Down (Eric Burdon & the Animals)
・Who Knows What Tomorrow May Bring (Traffic)
・Tobacco Road (The Nashville Teens~Jefferson Airplane~Eric Burdon & War)
『ロックン・ロール'70』
・Good Golly Miss Molly (Little Richerd~The Swinging Blue Jeans~Mitch Ryder and the Detroit Wheels~Creedence Clearwater Revival)
・Long Tall Sally (Little Richerd~The Beatles)
・My Babe (Little Walter~Ray Charles~Ricky Nelson~Cliff Richerd~Elvis Presley~The Animals)
・House of the Rising Sun (Trad.~Bob Dylan~The Animals~Frigid Pink)
・I'm A Man (The Spencer Davis Group~Chicago)
・Jenny Jenny '70 (Little Richerd)
・Eleanor Rigby (The Beatles~Vanilla Fadge)
・Ain't That Just Like Like Me (The Coasters~The Searchers~The Hollies~The Astronauts~The King's Ransom)
・Club-A-Go-Go (The Animals)
 また、『御意見無用』の次作は1971年7月11日の大阪でのコンサートのライヴ盤だが、
『雷舞』
・I Want To Hold Your Hand (The Beatles~The Moving Sideways)
・Gimme Some Lovin' (The Spencer Davis Group)
・To Love Somebody (The Bee-Gees~Eric Burdon & the Animals)
・New York 1963 - America 1968 (Eric Burdon & the Animals)
 と、エリック・バードン&ジ・アニマルズとスティーヴ・ウィンウッド(スペンサー・デイヴィス・グループ~トラフィック)への傾倒が目立つ。ビートルズの「抱きしめたい」をZ.Z.トップの前身ムーヴィング・サイドウェイズ、また言わずと知れた「朝日のあたる家」をフリジッド・ピンクのヘヴィ・サイケ・ヴァージョンを参考にしているあたり、洋楽マニアのバンドだったのがわかる。ただしモップスが英語詞ロックのバンドだったのは71年が岐路になり、シングル「月光仮面」のノヴェルティ・ヒットと、「月光仮面」以外は意欲的な英語詞オリジナル曲で固めたアルバム『御意見無用』自体はほとんど反響を呼ばなかったことから、72年以降、74年の解散までのモップスは日本語詞ロックのバンドに転換していた。

 タイトル曲「御意見無用」は英語詞とハード・ロック(冒頭のリフなど国際水準に耐えうる)にサビでは唐突に阿波踊りのリズムとお囃子になるという、あまりに斬新なエスニック・ロックの試みでバンドにとっては自信作だったが、やはり日本音階のリード・ギターに英語詞を乗せたヘヴィ・ロックのフラワー・トラベリン・バンドさえ当時は過小評価されたほど(現在でこそ欧米ではフラワー・トラベリン・バンドは日本産ロックの最高峰とされているが)なのでモップスの阿波踊りは一種の色物と見られた。軽佻浮薄なヒッピー風俗を象徴するバンドとして映画にも起用されている。
モップス -「野良猫ロック 暴走集団'71」より 御意見無用(いいじゃないか) : https://youtu.be/UCU0EKHL0-A

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 アルバム発売前には、日本語詞への転換としてアルバム『御意見無用』では英語詞の「御意見無用」「アローン」も日本語詞でシングル発売されていた。日本語ヴァージョンも悪くない(日本語詞ハード・ロックとして面白い)のだが、当時の日本語ロックでは硬派の頭脳警察、軟派のはっぴいえんどが評価されていたのに対してまるで話題にならなかった。実力はあったがルックスが悪かったとも言われる。無礼者!
モップス - 御意見無用 Iijanaika (日本語版シングル・ヴァージョン) : https://youtu.be/CAsgCy8aPzc

 モップスは井上陽水と同じマネジメントにおり、初期の井上陽水のアルバムは星勝がアレンジャー(現在ではプロデューサーの立場)で制作されていた。ステージでの共演も多く、モップスはソロのシンガー・ソングライターとの交流も深いロック・バンドだった。モップスによる井上陽水楽曲のヘヴィ・ロック・ヴァージョンもある。ここぞとばかりのギターソロは、星勝の手がけた当時の井上陽水ヴァージョンでは不可能だった(モップスのヴァージョンはアルバム『モップス1969~1973』収録)。
モップス - 傘がない : https://youtu.be/9oGpcSlJTIs

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 まだいくつか、モップスのアルバムをご紹介する機会はあると思うが、1967年11月のデビュー・シングルはメンバーの自作曲ではなく新進作曲家の村井邦彦作曲、作詞は広告代理店出身でこれがほぼ処女作となる阿久悠だった。外部ライター提供の楽曲とはいえ当時のグループ・サウンズ系バンドにあてがわれていたメルヘン調、メロドラマ調または青春歌謡調の曲とは違う、当時のメジャーなレコード会社から発売されたものでは際立ってロックなものになっている。カヴァー曲と半々のバンドから全曲英語詞の自作曲に進み、さらに日本語詞のロックに回帰したモップスだが、デビューから解散まで通すべき筋は通したバンドだった。このデビュー曲は60年代の日本産ロックでは外せない。ビート・グループから70年代ロックのスタイルに向かう過渡期を、サイケデリック・ロックを媒介にして体現したバンドだったのがわかる。
モップス - 朝まで待てない : https://youtu.be/KASjQSKbiE8

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