一昨年12月30日の大瀧詠一氏の急逝は記憶に新しいが(リンゴを喉に詰まらせて動脈瘤を起こしたとされる)、デビュー作『ゆでめん』の冒頭の曲は年末年始にも里帰りしない青年が「春よ来い!」といじけている曲だった。はっぴいえんどの最高傑作は完成度の高い『風街ろまん』と定評があるが、都会的で爽やかな『風街~』よりどこか憂鬱で、それが初々しさになっている『ゆでめん』の方が12月に聴くにはしっくりくる。先に引いた「12月の雨の日」は再録音のシングル・ヴァージョンだが、もともとは『ゆでめん』収録曲だった。松本隆のドラムスがださい。だが松本隆の作詞と、歌詞のムードに沿ったサウンドは、それまでロカビリー~GSが主流で、フォーク・クルセダーズとジャックス、フォーク界では南正人と遠藤賢司くらいしか先例のなかったアーティスティックなアンダーグラウンド・ロックを足場にして、現役バンドでいうならスピッツやBUMP OF CHICKENらに隔世遺伝されるような世界を作っていた。なにより『ゆでめん』という日本的ポップアート感覚が一日一麺の人間にはたまらない。アルバムA麺の冒頭3曲を引きます。サイケなギターにヘヴィなベース、大瀧詠一のへなへなヴォーカル(細野晴臣が歌う3曲目は男っぽい、しかもインテリっぽいが)に変な歌詞(細野ヴォーカル曲は細野詞で、やはりインテリっぽいが)、一度聴くと忘れられない魅力がある。冬に食べる生ぬるい冷やし中華のような……と無理やりこじつけたりして(苦笑)。