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Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
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#10.続『エピストロフィー』

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'Epistrophy'というのは通常の英和辞典には載っていない単語で、ビ・バップの曲にはこの手の衒学的な命名が多いが(チャーリー・パーカーの代表曲には、自分のあだ名-ヤードバードまたはバード-にちなんで'Ornithorogy'「鳥類学」というのがある)、『エピストロフィー』はその嚆矢というべきだろう。

'Epistrophy'は「例証」という意味の学術用語だそうだが、'Epistrophe'というと「結語反復」という意味になる。この曲を作った動機は、ミントンズ・プレイハウスというジャズクラブでジャム・セッションを仕切っていたセロニアス・モンク(ピアノ)とケニー・クラーク(ドラムス)が「うんと難しい曲を作って下手なやつらを脱落させよう」という意地の悪いものだった-実際これほど奇怪な曲はジャズ史上でも滅多になく拍子こそ4/4、AA'BA32小節だが、Bでは4小節同一コードが続き後半4小節は1小節ごとのコード・チェンジでゆとりを持たせるものの、AA'では2拍ごとに半音進行のコード・チェンジがありしかもしつこく反復するので自分がいったい曲の何小節目をアドリブしているのかわからなくなる。

マイルスの『ソー・ホワット』がモード+『エピストロフィー』という発想ではないか、という根拠もそこで、AA'BAのうちAはワン・コード、Bは半音上がったワン・コードで、これをドリアン・モードでアドリブするならドミナント・モーションが発生しないから、代理コードを次々とくり出してコード・チェンジしていくビ・バップのアドリブ手法は使えない。主音から下属音、属音から終止型にもっていくアドリブではなく頭も尻尾もないようなフレーズの連続になり、『エピストロフィー』同様自分が演奏しているのは曲のどこの箇所かわからなくなってしまう。

文献にあたってみると、作者のモンクは『エピストロフィー』を公式録音だけでも23ヴァージョン演奏しており、一番の最多愛奏曲とも言えるが、これだけ回数が多いのはモンク自身が自分テーマ曲としてライヴの締めに必ず演奏しているからでもある。
この23ヴァージョンでもっとも異彩を放つのは、57年の「モンクス・ミュージック」(画像)のセプテット・ヴァージョンという定評がある。ではどこが異色なのか?それを今回は検討したかったが、また次回へ持ち越しになってしまった。

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