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Ornette Coleman Quartet - Live in Paris 1971 (Jazz Row, 2007)

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Ornette Coleman Quartet - Live in Paris 1971 (Jazz Row, 2007) Full Album : http://youtu.be/N6n4a5v2ako
Recorded live in Paris, November, 1971, date unknown
All Compositions by Ornette Coleman.
1. "Street Woman" - 15:01
2. "Summer-Thang" - 11:10
3. "Silhouette" - 13:04
4. "Rock The Clock" - 14:36
[Personnel]
Ornette Coleman - Alto Saxophone, Violin, Trumpet
Dewey Redman - Tenor Saxophone, Musette
Charlie Haden - Bass
Ed Blackwell - Drums

 このパリ公演は71年11月というだけで日付が確定していないが、録音の残っているベオグラード公演が11月2日(前回紹介)、ベルリン公演が5日だからそれより後になると思われる。ベオグラード公演のセットリストは、
1. Street Woman - 8:20
2. Who Do You Work For? - 5:16
3. Written Word - 10:24
4. Song For Che (C.Haden) - 15:03
5. Rock The Clock - 7:46
 でトータル47分だった。パリ公演では4曲54分で『ストリート・ウーマン』と『ロック・ザ・クロック』の2曲が重なるが、ベオグラード公演の倍の演奏時間になっている。
 ベオグラード録音との比較では、どちらも公式放送録音で音質はいいが、ベオグラードの方が2サックスのバランスの大きいミックスでドラムスもラウドなかわりベースがオフ気味なのが惜しまれる。パリ公演は逆で、ベースがオンだが管楽器とドラムスはややオフ気味で、オーネットもレッドマンもあまり太い音色のプレイヤーではないからサックスはオン気味の方が良かった。ヘイデンのベースはバンドの推進力だからパリ録音でベースがオン気味なのは良いが、ドラムスの録音はベオグラードではクリアなのにパリではマルチ・マイクでなかったか、ややダンゴになって聞こえる。

 同じ曲を演奏しても倍になるくらいパリ公演は奔放で、ベオグラードがまとまり良くて聴きやすい良さがある一方、パリでは思い切って演奏を拡張させている。『ストリート・ウーマン』ではドラムスを休ませたアルトサックスとベースのみの長いデュオ・パートが延々続き、オーネットにしてはテクニカルなアルペジオを駆使したソロが聴ける。手法的にはコード分解によるビ・バップ的フレージングのはずなのに、オーネットの場合はリズム・リフの変型として演奏しているためにビ・バップのクリシェ的なフレージングには陥らず、まったくビ・バップとは異なる効果を生んでいる。この曲はオーネットのソロのみ。
 2曲目『サマー・サング』は2管同時即興が一応のテーマになっている『チェイシン・ザ・バード』風の発想だが、先発ソロのレッドマンがオーネットそっくりなのに驚く。レッドマンのソロの後半からはオーネットが同時進行インプロヴィゼーションで絡んできて、そのままオーネットのソロになり、フレージングのラインが非対象的なリズムから次第に倍テンポの4ビートに進んでいくと、ヘイデンのベースとブラックウェルのドラムスがぴったりついていく。テーマ・ユニゾンになると1/2テンポに戻った感じがするのがだまし絵的効果を生んでいる。この曲はパリ公演4曲中で唯一ソロのリレーが、変則的ながらある曲でもある。

 3曲目『シルエット』のソロはレッドマンだが、テナーサックスの音色でなければオーネットが吹いていると思ってしまうくらいオーネットそっくりに始まって、ハーモニクス奏法を連発するあたりでははっきりオーネットとは違う個性が現れているが、オーネットとレッドマンの共演音源中ここまでオーネットと同化した演奏は他にないだろう。アルトサックスとテナーサックスの聴きわけができない人ならオーネットの演奏かレッドマンの演奏かわからないのではないか。オーネットから求められた演奏というよりも、ツアーで毎日共演しているうちにこうなった、という自然さがある。3曲目はレッドマンのソロのみで終わる。
 最後の『ロック・ザ・クロック』はオーネットのトランペットとレッドマンのミュゼットという他では聴けないアンサンブルから始まるが、テーマを終えて5分目あたりからテナーサックスの無伴奏ソロはブルース色の強いわかりやすいものながら、ギターかシンセサイザーにリング・モジュレイターをかけたようなサウンドが鳴っている。オーネットのヴァイオリンか、と思うと10分過ぎからオーネットのトランペットが入ってきて、レッドマンがミュゼットに戻る間も鳴り続けているから、どうもベースか打弦系パーカッションをアンプに通してエフェクトをかけているようだ。

 69年のベルギー公演、70年の『フレンズ・アンド・ネイバーズ』、パリ公演直前のベオグラード公演と較べても、年が下るにつれてレッドマンとの2管カルテットはアンサンブル・パート以外はソロの担当曲の分担がはっきり分かれるようになっている。意図的にではないとこうはならないし、ソロの担当(ヴォーカル・グループでいえばリード・ヴォーカルの分担といったところ)を曲ごとに分けたぶんテーマ・アンサンブルにはじっくり時間をとり(テーマ・アンサンブル自体にインプロヴィゼーション性を持たせ)、同時即興と単管ソロの対照で構成に起伏を持たせる。
 最初からこうした手法があったというより、オーネットとレッドマンの2サックス・カルテットが4年間かけてたどりついたのがこうしたバンド・アンサンブルで、これは明らかに59年~61年のドン・チェリーとのカルテットから一歩進んだ(優劣ではないが、ヴァリエーションの豊富さの面で)ものだった。ただし、レッドマン以外のプレイヤーとやっても反復にしかならず、レッドマンとも限界までやり尽くした感があったのだろう。このパリ公演は発掘ライヴでも屈指の名演に入るが、このメンバーでこれ以上のものを求めるのは難しいとも思う。

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