Quantcast
Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3141

Far Out - 日本人 Nihonjin (Nippon Columbia / Denon,1973)

$
0
0

イメージ 1


Far Out - 日本人 Nihonjin (Nippon Columbia / Denon,1973) Full Album with Bonus : http://youtu.be/4OhhN82dGqQ
A Too Many People 17:55
B 日本人 19:52
Bonus Tracks : Far East Family Band
3. 時代から Birds Flying To The Cave Down To the Earth 4:32
4. 心山河 Saying To The Land 8:21
5. 煙神国 Moving,Looking,Trying,Jumping 1:39
6. 和・倭 Wa Wa 0:48
7. 地球空洞説 The Cave,Down To Earth 8:17
8. 喜怒哀楽 Four Minds 5:53
9. 蘇生 Transmigration 11:01
[Personnel]
Arranged By - Eiichi Sayu, Fumio Miyashita, Kei Ishikawa
Fumio Miyashita - Vocals, Flute [Nihon-bue], Acoustic Guitar, Harmonica, Synthesizer (Moog)
Eiichi Sayu - Lead Guitar, Organ (Hammond), Chorus
Kei Ishikawa - Vocals, Bass Guitar, Sitar (Electric)
Manami Arai - Drums, Taiko (Nihon-daiko), Chorus
Engineer ? Yoshio Mitsuo, Yuki Ogawa
Words & Music, Produced By Fumio Miyashita
[Notes]
Tracks 1 & 2 are the original Far Out LP released in 1973 on Denon in Japan. Tracks 3-9 are bonus tracks taken from the Far East Family Band album ""The Cave" Down To Earth", released in 1976 on Mu Land in Japan. These are works by two different bands with one member, Fumio Miyashita, in common. Far East Family Band members are not properly credited in the CD booklet.

 宮下フミオを中心に頭脳警察の左右栄一らと1971年結成。当初はハード・ロックを得意としていたが、同年、宮下が喜多嶋修とのアルバム(サイケデリック・フォークのスタイルでスケールの大きな精神世界を描いた)『新中国』をコラボレーションしたことがきっかけとなり、ゲストに喜多嶋修、ジョー山中を迎え、そこで試みたコンセプトを拡大していったのが本作だ。 AB面各1曲全2曲の構成は、60年代サイケデリック・ムーヴメントにあった解放感に、タンジェリン・ドリームやクラウス・シュルツらのエレクトロニクス手法を加え、さらにより深い精神世界を表現したトータル・コンセプト・アルバムとなっている。瞑想的世界を音像化した本作は、世界的にもタンジェリン・ドリーム『エレクトロニック・メディテーション』と並び賞された名盤である。翌74年解散。宮下はこのコンセプトを受け継ぐファー・イースト・ファミリー・バンドを結成し世界に進出する。
(通販サイト商品解説より)

allmusic.rating ★★★★
user rating ★★★★★
Review by Rolf Semprebon

 Far Out, an early incarnation of the Far East Family Band, only released this one self-titled record in 1973. The group sounds very similar to Far East, with the strong Pink Floyd influences, though Far Out has less of the German cosmic sound and more Japanese folk influences. The album contains just two side-long tracks that contain many smaller sections, from long slow Asian exotic instrumentals with guitar and percussion to relaxed Floyd-like vocal sections similar to Far East. There is some intense guitar soloing, and gongs and howling wind drones are even thrown in at a point or two. It all flows together quite nicely, and the blend of the progressive, psychedelic, and Japanese elements creates an interesting mesh that pushes this far beyond being some imitation Floyd.
(allmusic.com)

イメージ 2


 このアルバムを聴いてピンク・フロイドの『おせっかい』("Meddle"1971.11)のB面を占める大作『エコーズ』の影響を感じない人はいないと思うし、ファーラウトはこの唯一のアルバムで解散してファー・イースト・ファミリー・バンドに発展、『地球空洞説(The Cave Down To The Earth)』1975.8、『多元宇宙への旅(Parallel World)』1976.3、『Nipponjin』1976.8、『天空人(Tenkujin)』1977.11をリリースして宮下富実夫はソロ活動に移り、ヒーリング・ミュージックの分野での大家となる。メンバーだった高橋政明は喜多郎と改名し世界的シンセサイザー奏者となった。宮下富実夫は2003年2月肺ガンのため逝去、享年54歳だった。
 本作が世界中のコレクターから注目されるようになったのは1989年のCD化以降のことで、それまでは探す人もいないド廃盤の無名アルバムにすぎず、日本のプログレッシヴ・ロック初期アイテムとして上げられる時でもとりたてて評価される作品ではなかった。日本のプログレッシヴ・ロックの起点としてはコスモス・ファクトリー『トランシルヴァニアの古城』73.10とマジカル・パワー・マコ『マジカル・パワー・マコ』74.4、四人囃子『一触即発』74.6、ファー・イースト・ファミリー・バンド『地球空洞説』が重要視され、コスモス・ファクトリーやマコ、四人囃子に先んじるファーラウトは過渡期の実験的作風を示す作品として歴史的な価値を出ないアルバムと目されていた。
 だが89年には、プログレッシヴ・ロックとしての完成度ではなくサイケデリック・ロックとしての実験性において、ファーラウトはスペース・ロック、トリップ・ミュージックとしての重要性と独自の音楽性を評価されることになる。以降、この25年間でアルバム『日本人』は日本盤でさらに2回、海外盤で9回の新装発売がなされている。輸入盤で買う方が安価で入手しやすいほどなのは、アメリカのallmusic.comの★★★★★のユーザー評価でも納得できる。70年代にはピンク・フロイドの亜流に見えたのが、90年代以降のリスナーにはフロイドとは異なる独自性の方が際立って聴けるのだ。このジャケットのセンスもヴェルヴェット・アンダーグラウンドのバナナやジョイ・ディヴィジョンの地磁波に匹敵する。またアルバム全体に漂うアンダーグラウンドでダウナーな雰囲気も本物の凄みがあり、このダウナーな響きはグランジ/ローファイ/インダストリアル以降にはむしろコンテンポラリーな感触すら感じさせる。スペーシーなヘヴィ・ロックの名盤として世界的な評価が確立したのもうなづける。

 本作発表の1973年は日本のロックにとって転機となった年で、友部正人『にんじん』とファニー・カンパニー『ファニー・カンパニー』*が1月、フラワー・トラヴェリン・バンド『メイク・アップ』とはっぴいえんど『HAPPY END』が2月、本作*が3月、BUZZ『BUZZ』*が4月、サディスティック・ミカ・バンド『サディスティック・ミカ・バンド』*が5月、チューリップ『心の旅』と村八分『ライヴ村八分』*が6月、シバ『コスモスによせる』が7月、キャロル『ファンキー・モンキー・ベイビー』が8月、南佳孝『摩天楼のヒロイン』*と吉田美奈子『扉の冬』*が9月、斎藤哲夫『バイバイグッドバイサラバイ』とコスモス・ファクトリー『トランシルヴァニアの古城』*と四人囃子『サウンドトラック~二十歳の原点』*が10月、ウォッカ・コリンズ『東京~ニューヨーク』*とはちみつぱい『センチメンタル通り』*と荒井由実『ひこうき雲』*が11月、そして12月には日本レコード史上初の100万枚突破、物価指数では宇多田ヒカルのデビュー・アルバムの800万枚も越える空前絶後の大ヒット・アルバム、井上陽水『氷の世界』がリリースされる。
 こうして見ると、アンダーグラウンドなアーティストと、ポップスとして受け入れられるアーティストが同じフォーク~ロック系でもはっきり分かれていた時代なのがわかる。ファーラウトなどスキャンダラスなステージで活動中から伝説的バンドだった村八分よりもさらにアンダーグラウンドな存在だったろう。フラワー・トラヴェリン・バンド『メイク・アップ』とはっぴいえんど『HAPPY END』は解散アルバムで、前記アルバム中タイトルの後に*を付けたのは各アーティストのデビュー・アルバムだから、新旧交代の年だったのもわかる。
 日本コロムビア傘下のデンオンは当時現代音楽のシリーズを採算無視で芸術的評価の獲得を狙って発売しており、ファーラウトのアルバムも商業性を無視して制作できる環境にあったのだろう。吊された軍手のジャケットにはアーティスト名もアルバム・タイトルもない。裏ジャケットは表ジャケットのモノクロームのネガが印刷されており、やはりアーティスト名、アルバム名も曲目もない。ここまで徹底してコマーシャリズムを排除し、リスナーを寄せつけないアルバムは当時ですら珍しかっただろう。いったいライヴではどんな音を出していたのかが気になるところだ。ファー・イーストのライヴ映像は僅かながら残っているが、ファーラウトのライヴ映像も出てこないものだろうか。

イメージ 3


 アルバムはAB面とも1曲ずつしか収録されていない。大曲だからといって組曲形式などではなく、ギター弾き語りにすれば3分にも満たないような、4つくらいのコードで循環しているだけのシンプルな曲を、様々なサウンド・エフェクトや凝ったアレンジで拡張している。これも70年代半ば~80年代半ばには冗長な、60年代的な古くさい手法と見られただろうが、音楽に関してはアナクロニスム=時代錯誤が必ずしもマイナスには働かない。A面などヴォーカルが出てくるまでフォーク調のアコースティック・ギターのイントロにサウンド・エフェクトだけで4分間も費やす。ファーラウトは宮下富実夫あってのバンドだが、後のファー・イーストと決定的に異なるのはギター・バンドだということで、録音は本作と『サウンドトラック~書を捨てよ、町に出よう』しかない故・左右栄一の素晴らしいギターが聴けることが本作の価値をいっそう高めている。
 初期のファーラウトは日本のMC5(!)と呼ばれるハードロック・バンドだったというが、MC5のフリーキーなプロト・メタルがどうファーラウトに結びつくかというと、左右栄一のギターにはその痕跡が残っているように聴こえる。フラワーの石間秀樹のギターはサバスのトニー・アイオミに匹敵するものだが、左右栄一のギターの切れ味も素晴らしい。多彩な音色と重厚なコードワーク、異常なフレージングで斬り込んでくるギターはアイオミや石間とも違うサイケデリックな感覚を残したもので、日本のロックでこれほどアシッド感の濃厚なサウンドは村八分か裸のラリーズくらいしかない。
 
 リンク音源はファー・イースト・ファミリー・バンド『地球空洞説』との実質的2in1CDからで、『地球空洞説』からインスト3曲・ヴォーカル曲1曲をオミットしたものだが、一応アルバムの全体像はつかめる。ファー・イーストもアルバムごとに作風が異なり、全作聴きごたえがあるが、同時代ではどこか時代とずれたサウンドだったという感じがぬぐえない。時代と歩調を合わせたサウンドを出していたのは四人囃子だけで、ファー・イーストもコスモス・ファクトリーも何となく英米ロックの動きの後追いのような印象があった。
 ファー・イースト、また四人囃子やコスモス・ファクトリーについても書けばまとまりがつかないが、ファー・イーストについて言えば今聴けば先入観なしに音楽的狙いがわかり、その狙いは達成できているのがわかる。四人囃子はさすがというしかない。コスモスはデビュー・アルバム以外は残念ながらすべて失敗作になってしまったようだ。だがファーラウト、ファー・イースト、コスモスも、四人囃子のように未発表ライヴが発掘されればまだ評価の変わる可能性がある。ファー・イーストとコスモスはおそらくライヴの方がサウンドの狙いをつかみやすいバンドだったと思われる。アルバムは凝りすぎているのだ。適度にラフなライヴ感を生かした囃子との差はそこにある。
 だがファーラウトは、初期の荒々しいライヴが発掘されればヘヴィ・ロックのリスナーにももっとアピールするだろうが、アルバム『日本人』だけでも日本ロックの最高峰と見たい。これは屈指の逸品で、初CD化以来聴き続けているが飽きることがない。フラワー『SATORI』とも囃子『一触即発』とも十分に渡り合える。ヴォーカルやギターの重視でもタンジェリン・ドリームとの比較は妥当ではないし、allmusic.comのレビューの指摘のドメスティックなフォークの影響が、例えばドイツのピルツ系バンドのように民族的特色ということなら首肯できる。明らかにアメリカ由来のフォークではない。これもプログレッシヴ・ロックと言えるなら、国際的に見てもピンク・フロイドの影響以上にブラック・サバスのプログレッシヴ・ロック的応用として優れた成果を果たしたアルバムだろう。ちなみにジュリアン・コープ著『ジャップロック・サンプラー』では全12章中1章がまるまるファーラウト~ファー・イーストについて割かれ、巻末のベスト50選でも『多元宇宙への旅』が4位、『日本人』が11位、『地球空洞説』が41位に位置づけられている。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 3141

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>