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Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
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アメリカ合衆国のソケット

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 昨年のクリスマス前にDVDプレーヤーを買い替えた。それまで足かけ9年使っていたポータブル式(モニター一体型)のものがこの半年で急激にいかれてきた。音声や画像がぶちぶち断線状態になる、読み込みが次第に悪くなってきて、まったく読み込まないディスクが多発し、読み込むディスクですら10回くらいリセットを繰り返した挙げ句、ようやく再生するまで30分以上かかる。ディスクがこんなに短期間で一斉に劣化したとは考えられず、どうもデータが複雑なものほど読まなくなっている。字幕やチャプターリストなしの音楽DVDなどはすんなりかかるし、CDも大丈夫。ただし音声の断線は物理的なものらしい。モニターが開閉式で(ノートパソコンみたいに)、モニター側に小型スピーカーが内蔵されているので機体内でコードが磨耗して切れそうになっているのだろう。家電製品はたいがい可動部分から壊れやすいし、読み取りエラーの様子からはレンズのピックアップがどうもスムーズに動いていない。ガタガタと音がして読み取り停止になり、エラーの表示が出る。このストレスたるや!

 つい半年前には珍しく泊まりで数日遊びに来てくれた人があり、あれこれDVDを観ながら興じていたくらいだから、その時は調子はまだ調子は悪くなかったのだ。悪くなってきたのは秋口からで、一昨年もそうだったが冬場はなぜか電化製品が駄目になりやすい。もちろん寿命自体が尽きかけていたのだろうが、動物ならぬ電化製品でも安定した温度下なら円滑に動作するが、寒い季節は発熱しながら機能を立ち上げていく上に、機体と外気の温暖差が動作するに従って落差が激しくなる。現在はICだが、その前はトランジスタ、さらに前は真空管が電子機器の周波数解析部品には用いられており、ICが現在のLEDランプの発光チップなら蛍光灯はまだまだトランジスタとはいかず、真空管など電球そのものだった。でかい割には燃費がかかって寿命が短く、無駄に発熱するから温度変化で壊れやすく、焼き切れやすい。蛍光灯でもまだまだデリケートで、発光チップでようやくICに迫る耐性に追いついたかもしれない。だがICが電子制御していても可動部分がいかれてはどうしようもない。とにかく秋~冬は電化製品が壊れやすい時期という気がする。これは自然界の生き物にも言えることだろう。

 ほぼ何のディスクを入れても読み取らなくなってしまったのが12月上旬で、これでは貯金を切り崩しても買い直さざるを得なかったが、どういう機種を買うかで迷わざるを得なかった。予算はせいぜい2万円、壊れてしまった機種は8000円ほどの安い中国製プレーヤーだったが、リージョン制限は2のみながら信号方式はNTSC/PAL方式の自動変換が可能で、おかげで安い輸入盤DVDの再生ができた。ヨーロッパ圏はPAL方式だがリージョン2だから、イギリス盤やフランス版、イタリア版で、日本盤なら1巻2話収録・全6巻12話で定価4万円になるようなアニメが4話ずつ3枚組のセットで2000円台で買える。徒歩圏の近隣にレンタル店もないし元々本もCDもDVDも買って何度も楽しむ質なので、価格的に手の出ない日本盤より輸入盤のコレクションの方が多くなった。だが、各種通販ショップに問い合わせても「商品説明に記載されている以上の詳細はメーカーにお問い合わせください」という回答ばかりなのだ。そしてほとんどの商品にNTSC/PAL変換についての記載がなく、パソコンサイトからメーカーに問い合わせようともどこのメーカーも問い合わせフォームにドメインの記載がなく、安全上ドメイン指定受信にしているので問い合わせようがない。

 テープ式のヴィデオ・デッキも数年前に壊れてしまったので、レコーダー機能にも悩んだ。ヴィデオ・デッキの再購入は(ソフトや録画がわんさかあるが)考えなかった。DVDの画質と簡便さに慣れてしまうとVHSテープには戻れない。コレクションも実質的に廃棄同様だが画質・音質クオリティを思うとそう惜しくはない。だが録画機器を持っていないのは寂しい。
 しかしケーブルTVやディスクの普及で滅多に録画したい番組などない。録画したいのは映画、アニメ、特撮ドラマ、音楽番組程度に限られている。ディスクが出ていればそれで間に合うし、サイト上で観られる。気に入ったものを繰り返し楽しむタイプだから映画を除けば録画したいのは戦隊シリーズ、仮面ライダー、プリキュアくらいのものだ。
 それよりブルーレイの普及に懸念がある。外国映画の廉価再発盤などにはブルーレイのみのリリースなどもかなりある。中古相場でも近年の作品などはブルーレイの方が安かったりする。CDがアナログLPを駆逐したようにCDが次世代フォーマットに急速に駆逐され、再生ハードの生産もなくなるのはソフトの流通量から見てそうなさそうだし、DVDもブルーレイとの共存が続きそうだ。現在すでに再生ハードにブルーレイはDVDの上位機種としての互換性があるし、低コストの面で通常盤や雑誌の付録などにはまだまだDVDで充分という現状がある。それでもすでに廉価再発にブルーレイが用いられているくらいだから、ブルーレイでしか観られないソフトも多くあり、今後はさらに増えていくと考えられる。

 さんざん探した挙げ句ようやくフリーリージョンDVDプレーヤー専門の輸入店にたどり着いて、ブルーレイもDVDもリージョンフリーのプレーヤーを探し当てた。全世界でDVDの信号方式はNTSCとPALがあり、リージョンは0~9まである。ブルーレイのリージョンは全世界でA、B、Cに分かれる。その全部が再生可能というプレーヤーになる。2万円前後という予算にもなんとかおさまった。国産でレコーダーも兼ねた機種が最安値ならあるし、これだとモニター一体型のポータブル式ではなくてテレビをモニターにした据え置き型のデッキになるが、これは液晶・地デジ以降主流になったHDMT端子ではなく、うちのブラウン管テレビでもつなげる端子(映像はテレビ、音声は小型オーディオ・スピーカーにステレオ出力)が対応する数少ない機種だった。
 さっそく借り物のブルーレイ・ディスクを再生すると素早い読み込みで一発で画像が映り、ここ数か月ディスクは10回くらいかけ直して30分かけてようやく再生できるもの(または再生不可能で諦めるもの)という毎日だったので、普通に再生できるだけでも感極まった。

 リージョンフリー・プレーヤーの利点は、カタログが豊富で流通量が多く日本でも通販で入手しやすいアメリカ盤DVDが観られることだ。日本のアニメや特撮娯楽ドラマなどほとんどアメリカ盤で安価に手に入る。『ウルトラマン』などは全39話、4枚組が普通のスリムケースに入って980円だった。英語吹き替え音声とオリジナル日本語音声が選べるし、日本語音声の場合英語字幕の有無も選べる。OPタイトルから内容までオリジナル映像の改変はない。主題歌が英語吹き替え版だと音楽はオリジナル主題歌と同じカラオケで、歌は英語オリジナルの歌詞で男女・児童混声合唱で歌っているのだが、歌詞に合わせてメロディが大きく異なる。強調するがバックのブラスバンド演奏は同じカラオケを使っている。そういえば『トムとジェリー』『チキチキマシーン猛レース』『スーパースリー』などハンナ=バーバラ・プロのアニメなどもアメリカ版の原曲に日本語のオリジナル歌詞で吹き替えたものだったのを思い出した。当時のテレビ番組制作者の仕事はそれだけ丹念だったということだ。
 『ウルトラマン』などもアメリカでは『スター・トレック』のように愛されているのだろう、キャプテン・ムラマツ役始めアメリカ版吹き替えキャストへのインタヴューが映像特典、という日本人にはマニアックな仕様になっているが、これは吹き替え版『ウルトラマン』を観て育った英語圏の中高年ユーザーには嬉しい特典にちがいない。980円で『ウルトラマン』全話を手に入れて、子供の頃にはそんなのは夢のようなことだったと思うと、なんだかあっけなさすぎてあ然としてしまった。

 日本国内ではリージョン2という製品仕様がソフトでもハードでも規定されていて、アメリカ製品のプレーヤーを購入しないとリージョン1のアメリカ盤DVDは観られないのだが(NTSC/PAL変換はそれほど規定は厳しくないらしい。パソコンでなら再生できる。またブルーレイのリージョンはアメリカも日本もAなので国産プレーヤーで観られる)、そのアメリカ製品も製造は中国だったりする。それで今回初めて知ったのは、この製品は変圧器内蔵型で本体からそのまま電源コードが出ているが、電源プラグが左右非対称で(片方が幅が広い)、日本のコンセントにそのまま差し込めないことだった。これは輸入店の方から連絡があり、商品とは別に日本のコンセント用変換コンセントを送ってくれるとのことだった。
 先にデッキが届いたので比べてみると、確かに日本国内左右同じコンセントとは違う。日本国内では交流直流(AC/DC)の交流になるから表裏どちらに差し込んでもいいのだが、アメリカでは交流ではないのか?まさかそんなことはないだろう、ではなぜわざわざ片側だけ幅広にしているのだろうか?

 ほんのミリ単位の違いだから大丈夫かな、と思ってコンセントに差し込んでみようとしたが、ミリ単位で大きいだけでもやはりそのままでは日本のコンセントには差し込めなかった。翌日に注文してあった『ウルトラマン』のアメリカ盤DVDと変換コンセントが届いた。それでようやく電源をつなげてブルーレイや国内規格・海外規格(複数種)がひと通り再生できる、どうやら初期不良もなし、と確認できて、あとはまた買い替えに困らない余裕ができた頃まで長持ちしてくれれば良いが、せっかく新調したハードだから観直したいソフトも山ほどあってどこから観ればいいものやら。エイゼンシュテイン、チャップリン、ロイド、キートン、マルクス兄弟は全集を揃えているし、ドライヤー、小津安二郎、吉田喜重もほぼ全作品がある。ジャズとロックの映像作品も多い。アニメもシンエイ動画、京都アニメーション、シャフト作品などかなりある。音楽ソフトはまだながら観がきくが、CD聴きながら読書やブログ書き、料理はできる。仮眠しながらでも聴ける。
 映像作品はそれができないのだ。目も耳も集中するしかないから作文しながら映像鑑賞することなどできない。手持ちのソフトにはサイレント作品も多くて、一応音楽をつけてあるものが大反響だが完全に無音のものもある。そこでマーラーやジャズ・メッセンジャーズを流しながら観てみたが、音楽作品として自立したものはいけない。気をとられてしまって映像に集中できないのだ。
 と、そんな具合に視聴環境は各段に改善されたが、映像ソフトの山に埋もれている状況ではある。まあ贅沢な悩みなのだが。

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