Joy Unlimited "Oh Darlin'!"West Germany,1970(WDR)
https://www.youtube.com/watch?v=yhwQ51PAjZY&feature=youtube_gdata_player
西ドイツ国営放送出演の貴重映像で、楽器のセッティングはされているが音源はシングルからのリップシンクのようだ(デビュー・アルバムCDにボーナス収録)。曲は発表間もないビートルズ『アビー・ロード』中の名曲を素早くカヴァーしたものだが、女性ヴォーカルのジョイ・フレミングの切れの良い歌唱力が光る。CDブックレットのバイオグラフィーによると元々ジョイさんは『チープ・スリル』期のジャニス・ジョプリン(ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー時代)のコピー・バンドでセミ・プロ活動中にプロダクションに見出され、バンド・メンバーはクラウス・ナーゲル(ギター、フルート)、ディーター・キンドル(ベース、サックス)、ロランド・ヘック(各種キーボード)、アルビン・メルツ(ベース、トランペット、トロンボーン)、ハンス・W・ヘルケン(ドラムス、パーカッション)でアルバム『オーヴァーグラウンド』を制作、デビューした。ヨーロッパ諸国だけでなく英米日でも少し遅れて発売された。1970年当時はショッキング・ブルーやアース&ファイヤー(オランダ)、サヴェージ・ローズ(デンマーク)ら女性ヴォーカルのヨーロッパ産バンドが英語詞曲の国際ヒットを飛ばしており、ジョイ・アンリミテッドも商業的期待がかけられたバンドだった。ちなみにこれらのバンドはみんなポリドール所属だったと今気づいた。
デビュー・アルバムは英語詞全12曲の、まとまりのいいタイトなポップ系ロックで、本国ではメジャーのポリドール、アメリカではポリドール傘下のマーキュリー、日本ではテイチクから発売された。このアルバムも出来はいいが、ヴォーカル以外の五人のメンバーが全員マルチ奏者なので曲が小粒だと余剰人員気味にもなる。テレビ映像を観ても男性メンバーがタンバリン片手にコーラスをつけているが、この曲では出番がなかったのだろう。しかもバンドはサックス、フルート専門奏者のジェルド・ケーテを迎えて演奏メンバーだけで六人の大世帯となり、バレエ音楽用に委託された三部構成の組曲『Schmetterlinge』を制作。前作には外部ライターの書き下ろし曲もあったが今回は全曲がバンドの自作で、メンバーの暴走するマルチ・プレイヤーぶりと、あくまでソウルフルなヴォーカルが同居する大作になった。一曲目からしてフィフス・ディメンション(!)とキング・クリムゾンが合体したような名曲だが、アルバムが進むにつれてインストの比重が高まり、A面最後の『フリー』はエリック・ドルフィーの"G.W."のパクり、B面冒頭の『センシュアル・インプレッションズ』はソロ・フルートのインプロヴィゼーションだが絶対元ネタある感じで、同時期のアース&ファイヤーやサヴェージ・ローズもプログレッシヴ・ロックに進んで組曲形式のアルバムを出したが、ジョイ・アンリミテッドほど枠を広げすぎてはいない。
このセカンド・アルバムは本国ではなぜかインディーズのピルツからリリースされた。日本盤はテイチク、ヨーロッパ諸国ではポリドール、アメリカではマーキュリーで、国際発売タイトルは" Butterflies"と改題されている。筆者が中古LPで購入したのもアメリカ盤だった。制作(原盤権)は前作や後期二作同様バンドの所属プロダクションにあり、このセカンドだけピルツから出た経緯はわからない。突然実験的アルバムを制作したので、ポリドールから配給拒否されたのかもしれない。逆にピルツでは、実験OKだがレーベル・カラー的にはアシッド要素皆無のバンドはゲスト扱いだっただろう。このバンドは音楽的発想自体は割と英米ロックの手法に忠実だった。
Joy Unlimited "Schmetterlinge"("Butterflies") West Germany,1971(Full Album)
https://www.youtube.com/watch?v=W3ojEbi-SqA&feature=youtube_gdata_player
(A)1.Contacts(Rudiment/Connection/That's the Key/For You And Me)/2.Manifestations(Suppression/Rankness/Face of War/Free)
(B)2.Manifestations-contained(Sensual Impressions/Quintessence)/3.Emotions(Eden Park/Metamorphosis/In Search For the Last Word/Rising Mind/Eden Park Again)
Bonus-Tracks : Neckarbrucken-Blues/All Heaven And All Earth Are Silent/Silver Gun/Peace Train
Joy Fleming-Gesang
Klaus Nagel-Gitarren,flote,Percussion
Dieter Kindl-Gitarren,Akustisch Gitarre,Basgitarre
Albin Metz-Basgitarre,Trompete
Gerd Kothe-Saxes,Flote
Roland Heck-Klavier,Orgel,Elektrische Tasteninstrumente
Hans W. Herkenne-Schlagzeug,Percussion
Original Released as Piltz 20 21090-1
だがこのアルバム発表後、ジョイさんが脱退してしまう。普通はバンド名を変えるか、バンド名を引き継ぐなら女性ヴォーカリストを連れて来るところだが、男性メンバーをリードヴォーカル&ギターに迎えて"Reflections"73、"Minne"74の二作を発表する。"Schmetterlinge"のやり過ぎをすっきり整理したような音で好作だが、ジョイさん不在で華を欠く感は否めない。実力はあったが、実力の出し方にバランスが欠けていたバンドだったという気がする。
https://www.youtube.com/watch?v=yhwQ51PAjZY&feature=youtube_gdata_player
西ドイツ国営放送出演の貴重映像で、楽器のセッティングはされているが音源はシングルからのリップシンクのようだ(デビュー・アルバムCDにボーナス収録)。曲は発表間もないビートルズ『アビー・ロード』中の名曲を素早くカヴァーしたものだが、女性ヴォーカルのジョイ・フレミングの切れの良い歌唱力が光る。CDブックレットのバイオグラフィーによると元々ジョイさんは『チープ・スリル』期のジャニス・ジョプリン(ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー時代)のコピー・バンドでセミ・プロ活動中にプロダクションに見出され、バンド・メンバーはクラウス・ナーゲル(ギター、フルート)、ディーター・キンドル(ベース、サックス)、ロランド・ヘック(各種キーボード)、アルビン・メルツ(ベース、トランペット、トロンボーン)、ハンス・W・ヘルケン(ドラムス、パーカッション)でアルバム『オーヴァーグラウンド』を制作、デビューした。ヨーロッパ諸国だけでなく英米日でも少し遅れて発売された。1970年当時はショッキング・ブルーやアース&ファイヤー(オランダ)、サヴェージ・ローズ(デンマーク)ら女性ヴォーカルのヨーロッパ産バンドが英語詞曲の国際ヒットを飛ばしており、ジョイ・アンリミテッドも商業的期待がかけられたバンドだった。ちなみにこれらのバンドはみんなポリドール所属だったと今気づいた。
デビュー・アルバムは英語詞全12曲の、まとまりのいいタイトなポップ系ロックで、本国ではメジャーのポリドール、アメリカではポリドール傘下のマーキュリー、日本ではテイチクから発売された。このアルバムも出来はいいが、ヴォーカル以外の五人のメンバーが全員マルチ奏者なので曲が小粒だと余剰人員気味にもなる。テレビ映像を観ても男性メンバーがタンバリン片手にコーラスをつけているが、この曲では出番がなかったのだろう。しかもバンドはサックス、フルート専門奏者のジェルド・ケーテを迎えて演奏メンバーだけで六人の大世帯となり、バレエ音楽用に委託された三部構成の組曲『Schmetterlinge』を制作。前作には外部ライターの書き下ろし曲もあったが今回は全曲がバンドの自作で、メンバーの暴走するマルチ・プレイヤーぶりと、あくまでソウルフルなヴォーカルが同居する大作になった。一曲目からしてフィフス・ディメンション(!)とキング・クリムゾンが合体したような名曲だが、アルバムが進むにつれてインストの比重が高まり、A面最後の『フリー』はエリック・ドルフィーの"G.W."のパクり、B面冒頭の『センシュアル・インプレッションズ』はソロ・フルートのインプロヴィゼーションだが絶対元ネタある感じで、同時期のアース&ファイヤーやサヴェージ・ローズもプログレッシヴ・ロックに進んで組曲形式のアルバムを出したが、ジョイ・アンリミテッドほど枠を広げすぎてはいない。
このセカンド・アルバムは本国ではなぜかインディーズのピルツからリリースされた。日本盤はテイチク、ヨーロッパ諸国ではポリドール、アメリカではマーキュリーで、国際発売タイトルは" Butterflies"と改題されている。筆者が中古LPで購入したのもアメリカ盤だった。制作(原盤権)は前作や後期二作同様バンドの所属プロダクションにあり、このセカンドだけピルツから出た経緯はわからない。突然実験的アルバムを制作したので、ポリドールから配給拒否されたのかもしれない。逆にピルツでは、実験OKだがレーベル・カラー的にはアシッド要素皆無のバンドはゲスト扱いだっただろう。このバンドは音楽的発想自体は割と英米ロックの手法に忠実だった。
Joy Unlimited "Schmetterlinge"("Butterflies") West Germany,1971(Full Album)
https://www.youtube.com/watch?v=W3ojEbi-SqA&feature=youtube_gdata_player
(A)1.Contacts(Rudiment/Connection/That's the Key/For You And Me)/2.Manifestations(Suppression/Rankness/Face of War/Free)
(B)2.Manifestations-contained(Sensual Impressions/Quintessence)/3.Emotions(Eden Park/Metamorphosis/In Search For the Last Word/Rising Mind/Eden Park Again)
Bonus-Tracks : Neckarbrucken-Blues/All Heaven And All Earth Are Silent/Silver Gun/Peace Train
Joy Fleming-Gesang
Klaus Nagel-Gitarren,flote,Percussion
Dieter Kindl-Gitarren,Akustisch Gitarre,Basgitarre
Albin Metz-Basgitarre,Trompete
Gerd Kothe-Saxes,Flote
Roland Heck-Klavier,Orgel,Elektrische Tasteninstrumente
Hans W. Herkenne-Schlagzeug,Percussion
Original Released as Piltz 20 21090-1
だがこのアルバム発表後、ジョイさんが脱退してしまう。普通はバンド名を変えるか、バンド名を引き継ぐなら女性ヴォーカリストを連れて来るところだが、男性メンバーをリードヴォーカル&ギターに迎えて"Reflections"73、"Minne"74の二作を発表する。"Schmetterlinge"のやり過ぎをすっきり整理したような音で好作だが、ジョイさん不在で華を欠く感は否めない。実力はあったが、実力の出し方にバランスが欠けていたバンドだったという気がする。