前回は『‘77 Live』をご紹介した。ラリーズの音楽の典型例としてはサイケデリックな轟音ギター・ロックのあれだろう。
公式アルバム三作のいずれも人気は高いが、『Mizutani~』はバンドというより水谷孝のソロ作品集の趣きがあり、パーソナルな内省性で人気が高い。M1~M5はアコースティック・ギターとパーカッションだけをバックに、ヴォーカルを前面に出したものだが、全然フォークにもポップスにもなっていないアシッド音楽。バンド演奏はM6とM7で、M6はM1~M5と同時期・同メンバーによる70年京都でのライヴだが、これを聴いてヴェルヴェット・アンダーグラウンドの『シスター・レイ』を連想しないわけにはいかない。ここまでが『Mizutani '70』で、72年に水谷孝は東京でラリーズを再結成し、73年のライヴからがM7、つまり『Les Rallizes Denudes '73』になる。曲目はリンク先に表示がある。
Les Rallizes Denudes "Mizutani '70 / Les Rallizes Denudes '73"
https://www.youtube.com/watch?v=oSRcQ6eV10Q&feature=youtube_gdata_player
67年に大学生バンドとしてスタートしたラリーズは、初期オリジナルはインストルメンタルだったのが公式CDの『'67-'69 Studio et Live』でわかる。それがヴォーカル曲に変化したのは、67年にはすでに各種コンテストでカリスマ・バンドとなり、翌68年3月にデビュー・シングル『からっぽの世界』、6月にセカンド・シングル『マリアンヌ』を発表した早川義夫率いるジャックスの感化によるものだろう。歌詞に影響が露わであるばかりか、ヴォーカル・スタイルまで似ている。
ジャックスの前記二曲は68年9月のファースト・アルバム『ジャックスの世界』にも収録されている。アルバムの再録音ヴァージョンの方がシングル・ヴァージョンより衝撃度が高いので、そちらからご紹介する。
ジャックス『からっぽの世界』'68
https://www.youtube.com/watch?v=uK94hzAhcUM&feature=youtube_gdata_player
『マリアンヌ』'68
https://www.youtube.com/watch?v=bgQyW5bn4is&feature=youtube_gdata_player
ジャックスは評価のみ高く、セールスはまったく振るわずに翌年解散した。後世への影響力は非常に強かった。ラリーズは徹底して非商業的な活動を貫き、活動20年以上を経て絶大な評価を得た。どちらも日本のロックの暗部を担ったバンドには違いない。